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第9章 創天国の魂編
03.故国再び
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志栄島の徳葉の海岸に異国の地、セビカからの船が到着していた。
やがて船からは一人の男が姿を見せた。
男の名は「ドヴェルク」と名乗っていた。
何故にこの地を訪れたのであるかという宗重の問いかけに対し、ドヴェルクは答える。
セビカ国の危機を救って欲しい、と。
その抽象的な内容に要件を得ぬ宗重は困惑した様子であった。
そうするとやがてもう一人の男が姿を現して宗重に対して声をかける。
?
「お久しゅうござるな、宮本宗重殿よ。」
男の顔を見た宗重は、腰を抜かさんばかりの驚きの表情を見せて声を上げる。
宗重
「な、長継様…村上長継様にございますか?」
長継
「うむ、いかにも。拙者、村上家 元大名の村上長継にござる。」
・村上 長継(むらかみ ながつぐ)
かつて村上島(現在の志栄島)を治めていた大名 村上長馬の嫡男として生まれる。
父である長馬が病死した後に家督を相続するも器量の無さが目立ち、次第に村上家衰退の道を辿ることとなる。
それ故に離反心を抱く家臣が相次ぎ、さらには先代である長馬が立てていた本土進出の計画も頓挫してしまう。
やがて、これを好機と考えた志太家による侵攻によって領土を奪われ始める。
そして最終的に志太軍との戦いにおいて自軍の負けを悟った長継は、燃えさかる村上城天守の中に身を投げて果てたとされている。
宗重は、現在のこの状況が飲み込めていない様子である。
混乱した状態の中、宗重は長継に対して問いかけの言葉を発する。
宗重
「しかし…長継様は、あの戦で亡くなられたはずでは…」
すると長継が静かな口調で淡々と語り始める。
長継
「確かにあの時、拙者は死ぬはずでござった。じゃが…」
志太軍による村上城攻めも大詰めとなった頃。
城内には志太軍の兵たちで溢れかえり、さらには天守も音を立てながら激しく燃え始めていた。
この光景を目の当たりにした長継は、最早村上家に勝ち目は無いと判断して自らの命を絶とうと動き始める。
その時である…
一人の男によって長継の身が引き止められていた。
その男は長継と容姿が非常に酷似していた所謂「影武者」であった。
影武者は、自身が犠牲になる代わりに長継に生き延びて欲しいと懇願。
影武者による自身に対する強い想いに打たれた長継は、身を引き裂かれる思いでその場を離れる事を決意。
そうして長継は一人、城外へと通じる抜け穴へと向かっていた。
幸いにもその抜け穴は火の手が回っていなかった事もあってか、長継は脱出に成功。
脱出した先の海岸沿いに浮かんだ一隻の小さな船を見つける。
志太軍から逃れる事でどこか遠くの地でひとまず身を潜めようと考えた長継は、その船に乗って海を渡り始めた。
漂流を続けてどれくらいの日数が経ったであろうか…
長継は、肉体的にも精神的にも限界が訪れようとしていた。
今まさにその命が尽きようとしていた矢先の出来事である。
船はとある場所に漂着していた。
そこは創天国から遙か離れた異国の地、「セビカ国」の「セラージュ」という街であった。
ほどなくしてセラージュの住民は瀕死の状態にあった長継の姿を発見し、保護された。
こうして住民たちによる必死の介抱により、長継は一命をとりとめたのである。
長継
「拙者の命を救っていただいた御恩に報いるべく、今はセビカ国の為に尽くす身にござる!」
長継は胸を張ってそう答えていた。
やがて船からは一人の男が姿を見せた。
男の名は「ドヴェルク」と名乗っていた。
何故にこの地を訪れたのであるかという宗重の問いかけに対し、ドヴェルクは答える。
セビカ国の危機を救って欲しい、と。
その抽象的な内容に要件を得ぬ宗重は困惑した様子であった。
そうするとやがてもう一人の男が姿を現して宗重に対して声をかける。
?
「お久しゅうござるな、宮本宗重殿よ。」
男の顔を見た宗重は、腰を抜かさんばかりの驚きの表情を見せて声を上げる。
宗重
「な、長継様…村上長継様にございますか?」
長継
「うむ、いかにも。拙者、村上家 元大名の村上長継にござる。」
・村上 長継(むらかみ ながつぐ)
かつて村上島(現在の志栄島)を治めていた大名 村上長馬の嫡男として生まれる。
父である長馬が病死した後に家督を相続するも器量の無さが目立ち、次第に村上家衰退の道を辿ることとなる。
それ故に離反心を抱く家臣が相次ぎ、さらには先代である長馬が立てていた本土進出の計画も頓挫してしまう。
やがて、これを好機と考えた志太家による侵攻によって領土を奪われ始める。
そして最終的に志太軍との戦いにおいて自軍の負けを悟った長継は、燃えさかる村上城天守の中に身を投げて果てたとされている。
宗重は、現在のこの状況が飲み込めていない様子である。
混乱した状態の中、宗重は長継に対して問いかけの言葉を発する。
宗重
「しかし…長継様は、あの戦で亡くなられたはずでは…」
すると長継が静かな口調で淡々と語り始める。
長継
「確かにあの時、拙者は死ぬはずでござった。じゃが…」
志太軍による村上城攻めも大詰めとなった頃。
城内には志太軍の兵たちで溢れかえり、さらには天守も音を立てながら激しく燃え始めていた。
この光景を目の当たりにした長継は、最早村上家に勝ち目は無いと判断して自らの命を絶とうと動き始める。
その時である…
一人の男によって長継の身が引き止められていた。
その男は長継と容姿が非常に酷似していた所謂「影武者」であった。
影武者は、自身が犠牲になる代わりに長継に生き延びて欲しいと懇願。
影武者による自身に対する強い想いに打たれた長継は、身を引き裂かれる思いでその場を離れる事を決意。
そうして長継は一人、城外へと通じる抜け穴へと向かっていた。
幸いにもその抜け穴は火の手が回っていなかった事もあってか、長継は脱出に成功。
脱出した先の海岸沿いに浮かんだ一隻の小さな船を見つける。
志太軍から逃れる事でどこか遠くの地でひとまず身を潜めようと考えた長継は、その船に乗って海を渡り始めた。
漂流を続けてどれくらいの日数が経ったであろうか…
長継は、肉体的にも精神的にも限界が訪れようとしていた。
今まさにその命が尽きようとしていた矢先の出来事である。
船はとある場所に漂着していた。
そこは創天国から遙か離れた異国の地、「セビカ国」の「セラージュ」という街であった。
ほどなくしてセラージュの住民は瀕死の状態にあった長継の姿を発見し、保護された。
こうして住民たちによる必死の介抱により、長継は一命をとりとめたのである。
長継
「拙者の命を救っていただいた御恩に報いるべく、今はセビカ国の為に尽くす身にござる!」
長継は胸を張ってそう答えていた。
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