409 / 549
第9章 創天国の魂編
01.平穏な日々
しおりを挟む
志太家の家臣であった者たちは幕府が開かれた事で「幕臣」と呼ばれるようになり、各地に「藩」を配置して政務に当たらせた。
そうして人々は平和を噛み締め、平穏な生活を送っていた。
長き戦乱の時代は終わりを告げ、ここに確かに創天国に泰平の世が訪れていた。
それから三年の月日が経った。
祐宗
「やはり、泰平の世は良いものであるのぅ。」
将軍となった祐宗は、しみじみした様子でそう呟いていた。
その様子に貞広が答える。
貞広
「はっ、まさにその通りにございまする。」
すると今度は祐永が呆れた表情を見せて言う。
祐永
「また上様のお言葉が始まられましたか…」
祐宗は幕府が成立してから何度もそのような言葉を口にしていた事に対してどうやら祐永は聞き飽きているようである。
祐永の顔を見て笑いながら祐宗が答える。
祐宗
「ははは、分かってはおっても何度でも申したくなるものじゃ。祐永よ、お前もそう思っておろう?」
祐宗らは群雄割拠の乱世の真っ只中に生まれた。
食うか食われるか非常に過酷な下剋上の時代を生き抜き、最終的には自身たちが天下を手にしたのである。
そして天下統一に至るまでには、数え切れぬほどの苦労や犠牲にして来たものがあった。
そのような事があったからこそついつい何度でも口にしたくなるのだ、と祐宗は言っていた。
祐永
「確かに…これもあの乱世の時代を生きてきた我らである故のことにございましょうかな。」
祐宗
「うむ、思えばあの頃は真に大変な時代であったのぅ…」
すると貞広が背筋をぴんと伸ばして口を開く。
貞広
「我ら志太幕府は、幾多もの犠牲のうえに成り立っておられることを皆は忘れること無く日々を生きておりまする。」
今の幕府は、創天国全土が痛みを伴った犠牲のうえで成立した。
そうした事を決して忘れる事無く幕府の者たちによって日々の政が執り行われている故、心配は無用であると貞広は言っていた。
すると祐宗が真剣な表情を見せて言う。
祐宗
「次の世代の者たちにも、このことを伝え続けることが我らの使命でもござろうな。」
貞広
「真にそうでございますな。玄葉殿や家貞殿、輝嶺殿にも、しっかりと引き継いでもらいましょうぞ。」
・蛭間 玄葉(ひるま げんよう)
柳藩 藩主 蛭間玄名の弟子。
元は柳家の柳幸盛に従軍する兵士であったという。
志太家によって柳城が攻め落とされた際に投降し、玄名の家臣となる。
玄名による説法に共感を得た玄葉は、彼の弟子となった。
やがて志太幕府成立後に玄名は柳藩の藩主となったが、その翌年に死去する。
それに伴い、玄葉が新たに藩主の座に就いていた。
争いを好まぬ玄名の思想をしっかりと受け継いでいたという。
・秋庭 家貞(あきば いえさだ)
海原藩 藩主 秋庭家春の嫡男。
幼名を貞千代(さだちよ)といった。
志太幕府成立後に父である家春は海原藩の藩主に任命され、政に勤しんでいた。
だがつい先日に家春は急死(病死とされているが、一説によると何者かに毒殺されたとも)する。
父の死を受けて家貞は家督を相続し、海原藩主となる。
幼少期は乱世の最中であったが初陣を飾る機会を逃してしまった為か、戦の経験は無きに等しかったという。
だが、内政においては父である家春をも凌ぐ才能を持ち合わせており、善政によって民から慕われていたと言われている。
・大野 輝嶺(おおの てるみね)
柳藩 家老 大野道嶺の嫡男。
高齢によって自身の肉体の衰えを感じた道嶺は隠居する事を決意し、以後は墨山で余生を過ごす。
それに伴い輝嶺が家督を相続し、大野家の当主となった。
幼少期より様々な教育の手ほどきを受けていた事もあり、父である道嶺と遜色ないほどの器量を持ち合わせていたという。
祐宗
「うむ、かような若き者たちによって我が幕府を盛り立ててくれることを余も望んでおる。」
祐宗は熱弁を振るっていた。
そうして人々は平和を噛み締め、平穏な生活を送っていた。
長き戦乱の時代は終わりを告げ、ここに確かに創天国に泰平の世が訪れていた。
それから三年の月日が経った。
祐宗
「やはり、泰平の世は良いものであるのぅ。」
将軍となった祐宗は、しみじみした様子でそう呟いていた。
その様子に貞広が答える。
貞広
「はっ、まさにその通りにございまする。」
すると今度は祐永が呆れた表情を見せて言う。
祐永
「また上様のお言葉が始まられましたか…」
祐宗は幕府が成立してから何度もそのような言葉を口にしていた事に対してどうやら祐永は聞き飽きているようである。
祐永の顔を見て笑いながら祐宗が答える。
祐宗
「ははは、分かってはおっても何度でも申したくなるものじゃ。祐永よ、お前もそう思っておろう?」
祐宗らは群雄割拠の乱世の真っ只中に生まれた。
食うか食われるか非常に過酷な下剋上の時代を生き抜き、最終的には自身たちが天下を手にしたのである。
そして天下統一に至るまでには、数え切れぬほどの苦労や犠牲にして来たものがあった。
そのような事があったからこそついつい何度でも口にしたくなるのだ、と祐宗は言っていた。
祐永
「確かに…これもあの乱世の時代を生きてきた我らである故のことにございましょうかな。」
祐宗
「うむ、思えばあの頃は真に大変な時代であったのぅ…」
すると貞広が背筋をぴんと伸ばして口を開く。
貞広
「我ら志太幕府は、幾多もの犠牲のうえに成り立っておられることを皆は忘れること無く日々を生きておりまする。」
今の幕府は、創天国全土が痛みを伴った犠牲のうえで成立した。
そうした事を決して忘れる事無く幕府の者たちによって日々の政が執り行われている故、心配は無用であると貞広は言っていた。
すると祐宗が真剣な表情を見せて言う。
祐宗
「次の世代の者たちにも、このことを伝え続けることが我らの使命でもござろうな。」
貞広
「真にそうでございますな。玄葉殿や家貞殿、輝嶺殿にも、しっかりと引き継いでもらいましょうぞ。」
・蛭間 玄葉(ひるま げんよう)
柳藩 藩主 蛭間玄名の弟子。
元は柳家の柳幸盛に従軍する兵士であったという。
志太家によって柳城が攻め落とされた際に投降し、玄名の家臣となる。
玄名による説法に共感を得た玄葉は、彼の弟子となった。
やがて志太幕府成立後に玄名は柳藩の藩主となったが、その翌年に死去する。
それに伴い、玄葉が新たに藩主の座に就いていた。
争いを好まぬ玄名の思想をしっかりと受け継いでいたという。
・秋庭 家貞(あきば いえさだ)
海原藩 藩主 秋庭家春の嫡男。
幼名を貞千代(さだちよ)といった。
志太幕府成立後に父である家春は海原藩の藩主に任命され、政に勤しんでいた。
だがつい先日に家春は急死(病死とされているが、一説によると何者かに毒殺されたとも)する。
父の死を受けて家貞は家督を相続し、海原藩主となる。
幼少期は乱世の最中であったが初陣を飾る機会を逃してしまった為か、戦の経験は無きに等しかったという。
だが、内政においては父である家春をも凌ぐ才能を持ち合わせており、善政によって民から慕われていたと言われている。
・大野 輝嶺(おおの てるみね)
柳藩 家老 大野道嶺の嫡男。
高齢によって自身の肉体の衰えを感じた道嶺は隠居する事を決意し、以後は墨山で余生を過ごす。
それに伴い輝嶺が家督を相続し、大野家の当主となった。
幼少期より様々な教育の手ほどきを受けていた事もあり、父である道嶺と遜色ないほどの器量を持ち合わせていたという。
祐宗
「うむ、かような若き者たちによって我が幕府を盛り立ててくれることを余も望んでおる。」
祐宗は熱弁を振るっていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる