架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第9章 創天国の魂編

01.平穏な日々

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志太家の家臣であった者たちは幕府が開かれた事で「幕臣」と呼ばれるようになり、各地に「藩」を配置して政務に当たらせた。
そうして人々は平和を噛み締め、平穏な生活を送っていた。
長き戦乱の時代は終わりを告げ、ここに確かに創天国に泰平の世が訪れていた。

それから三年の月日が経った。

祐宗
「やはり、泰平の世は良いものであるのぅ。」

将軍となった祐宗は、しみじみした様子でそう呟いていた。
その様子に貞広が答える。

貞広
「はっ、まさにその通りにございまする。」

すると今度は祐永が呆れた表情を見せて言う。

祐永
「また上様のお言葉が始まられましたか…」

祐宗は幕府が成立してから何度もそのような言葉を口にしていた事に対してどうやら祐永は聞き飽きているようである。
祐永の顔を見て笑いながら祐宗が答える。

祐宗
「ははは、分かってはおっても何度でも申したくなるものじゃ。祐永よ、お前もそう思っておろう?」

祐宗らは群雄割拠の乱世の真っ只中に生まれた。
食うか食われるか非常に過酷な下剋上の時代を生き抜き、最終的には自身たちが天下を手にしたのである。
そして天下統一に至るまでには、数え切れぬほどの苦労や犠牲にして来たものがあった。
そのような事があったからこそついつい何度でも口にしたくなるのだ、と祐宗は言っていた。

祐永
「確かに…これもあの乱世の時代を生きてきた我らである故のことにございましょうかな。」

祐宗
「うむ、思えばあの頃は真に大変な時代であったのぅ…」

すると貞広が背筋をぴんと伸ばして口を開く。

貞広
「我ら志太幕府は、幾多もの犠牲のうえに成り立っておられることを皆は忘れること無く日々を生きておりまする。」

今の幕府は、創天国全土が痛みを伴った犠牲のうえで成立した。
そうした事を決して忘れる事無く幕府の者たちによって日々の政が執り行われている故、心配は無用であると貞広は言っていた。

すると祐宗が真剣な表情を見せて言う。

祐宗
「次の世代の者たちにも、このことを伝え続けることが我らの使命でもござろうな。」

貞広
「真にそうでございますな。玄葉殿や家貞殿、輝嶺殿にも、しっかりと引き継いでもらいましょうぞ。」

・蛭間 玄葉(ひるま げんよう)
柳藩 藩主 蛭間玄名の弟子。
元は柳家の柳幸盛に従軍する兵士であったという。
志太家によって柳城が攻め落とされた際に投降し、玄名の家臣となる。
玄名による説法に共感を得た玄葉は、彼の弟子となった。
やがて志太幕府成立後に玄名は柳藩の藩主となったが、その翌年に死去する。
それに伴い、玄葉が新たに藩主の座に就いていた。
争いを好まぬ玄名の思想をしっかりと受け継いでいたという。

・秋庭 家貞(あきば いえさだ)
海原藩 藩主 秋庭家春の嫡男。
幼名を貞千代(さだちよ)といった。
志太幕府成立後に父である家春は海原藩の藩主に任命され、政に勤しんでいた。
だがつい先日に家春は急死(病死とされているが、一説によると何者かに毒殺されたとも)する。
父の死を受けて家貞は家督を相続し、海原藩主となる。
幼少期は乱世の最中であったが初陣を飾る機会を逃してしまった為か、戦の経験は無きに等しかったという。
だが、内政においては父である家春をも凌ぐ才能を持ち合わせており、善政によって民から慕われていたと言われている。

・大野 輝嶺(おおの てるみね)
柳藩 家老 大野道嶺の嫡男。
高齢によって自身の肉体の衰えを感じた道嶺は隠居する事を決意し、以後は墨山で余生を過ごす。
それに伴い輝嶺が家督を相続し、大野家の当主となった。
幼少期より様々な教育の手ほどきを受けていた事もあり、父である道嶺と遜色ないほどの器量を持ち合わせていたという。

祐宗
「うむ、かような若き者たちによって我が幕府を盛り立ててくれることを余も望んでおる。」

祐宗は熱弁を振るっていた。
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