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第8章 将軍への道程編

100.第二次墨山の戦い(40)

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墨山城の本丸に志太・十部軍の兵たちが侵入を遂げる。
やがて国輝らが兵たちに包囲された事で外河軍の敗北は、決定的なものとなっていた。
祐宗は国輝に対して投降の説得を試みるが、なおも悪態をつき続けて首を縦に振る事は無かった。

その様子に頼信が意を決して言う。
「国輝たちを自身もろとも爆弾で討て」と。

頼信の強い想いを汲み取った祐宗は、爆弾を用いて国輝らを討つ事を決行したのである。
実の父親である頼隆の手によって…

頼隆
「終わった…これで…何もかもが…終わったのじゃな…」

先程の爆発によって発生した火は、瞬く間に天守を飲み込んでいった。
頼隆は、燃え盛る天守を見て呆然としている様子であった。

やがて、周囲の様子に気付いた祐永が声を上げる。

祐永
「見よ!兵たちが…刀を収めていくぞ…」

国輝らが討たれた事を知った外河軍の兵たちは皆、手にしていた刀や槍を収め始めていた。
そして祐宗が口を開く。

祐宗
「うむ。どうやらこの戦、我らの勝利であるな。」

崇冬
「我らは、これで勝った…のか…」

余りの予想外の展開に、崇冬は呆然とした様子でそう言っていた。

康龍
「しかし、これほどまでに…悲しき戦の勝利があって良いものか…」

今回の戦は、親が子を手にかけるという事で幕を閉じた。
そうした結果に対して康龍は、何ともやりきれない思いであった。

貞道
「それにしても、真に後味の悪き戦でござったな…」

貞道は苦い表情を浮かべながらそう言っていた。

玄名
「頼信殿はご立派に戦われ、自らを犠牲にされてまで天魔を退治されたのでございます。見事にございました…」

国輝は天魔であると先程口にしていた玄名。
頼信という勇敢な一人の男によってその天魔を成敗したのである、と彼を褒め称えていた。

信常
「ふぅ…戦は…終わったか…拙者も…これで…役目は…果た…し…た…ぞ…」

そう言うと信常は、ぷつりと糸が切れたかのようにその場に倒れた。
その様子に周りの兵たちも慌て出し、信常の身を案じ始める。
が、信常は既に息絶えていたようであった。

九条信常。
彼は数々の革新的な発明品を生み出す事により、志太家を陰で支え続けていた。
その結果、志太家は大大名という立場に急成長を遂げ、やがては天下人に手が届くほどにまで至った。
天才発明家と称され、各国の将たちから恐れられていた男がこの世を去った。

そして頼隆は、その場に座り込んで一人呟き始める。

頼隆
「さて、次は我の番ぞ…頼信よ、お前を一人にはさせぬ故に待っておれよ…」

頼隆は手にした刀の刃を自身の体に向けていた。
どうやら今回の外河家が引き起こした騒動の責任を取ろうとしているようである。
自らが切腹して果てるという事で…

その光景を見た祐宗は、激しい剣幕で声を上げる。

祐宗
「待て!待たれよ!頼隆殿!ならぬならぬ!死んではならぬぞ!」

そして続けて祐宗が言う。

祐宗
「そなたには外河家を復興させ、繁栄させる責務がござろう。そなたまで死なれてしまえば、頼信殿も浮かばれぬぞ。違うか?」

頼隆には、外河家を存続させるという責務がある。
それ故に早まった行動を起こすべきではない。
祐宗は、頼隆に対してそう必死に語りかけていた。

すると義継も頼隆に対して声をかける。

義継
「外河家あってこその我ら十部家でもございます故、死ぬことはまかりなりませぬ!」

外河家という盟友がいたからこそ、十部家もこうして存続できているのである。
そしてその逆もしかり、共に力を合わせて今後も両家の繁栄する事を心から願っているのだ。
義継は、そう言いたげな表情であった。

この二人の言葉を聞いた頼隆の目には、大粒の涙がこぼれ落ちていた。

頼隆
「祐宗様…義継殿…」

祐宗
「そういうことじゃ、頼隆殿よ。そなたは生きるべきにござる。これは主命であるぞ!」

頼隆
「真に…真に有難きお言葉を…」

頼隆は涙を拭い、背筋を伸ばして声を上げる。

頼隆
「祐宗様、分かり申した!必ずや外河家を復興させ、幕府をお支えいたすことを約束しましょうぞ!」

こうして墨山での戦いは終わりを告げたのであった。
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