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第8章 将軍への道程編
98.第二次墨山の戦い(38)
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頼信を人質に取った国輝は、志太・十部軍の全軍撤退を命じた。
そして、今後は墨山国に対して一切の干渉を行わないという事を誓わせようとしていた。
国輝
「おい頼隆に祐宗よ、早うせぬか!頼信がどうなっても良いと申すのか?違うであろう?ふふふ…」
苛立った口調で国輝はそう声を上げていた。
なおも頼信の首元には、国輝によって刀の刃が向けられている。
頼隆
「うっ、我が外河家を馬鹿にしおって…」
頼信が国輝らによってぞんざいな扱いを受けている事に対して頼隆は、腸が煮えくり返る思いであった。
祐宗
「ぐぐぐっ…我ら軍勢が撤退するもやむ無し、か…」
これには祐宗も打つ手は無い故に、全軍撤退をせざるを得ない状況であろうかと考え始めていた。
最早、我が軍の勝利は間違い無いであろう。
その矢先にこうした事態に陥り、形勢は一気に逆転してしまった。
祐宗は、非常に悔しげな表情を浮かべていた。
その時である。
頼信が頼隆らの軍勢の前に身を乗り出して声を上げ始める。
頼信
「祐宗殿!そして父上!お聞きくだされ!志太殿が築かれる泰平の世の為であらばこの頼信は、我が命を捨てても構いませぬ!」
頼信は、毅然とした態度を見せている。
頼隆
「よ、頼信…お前まさか…」
頼隆は、頼信の顔を見つめながら声を詰まらせてそう言った。
思いもよらぬ頼信の言葉に非常に驚いている様子であった。
国輝
「なんじゃと?貴様、気は確かであるか?」
どうやら、頼信による覚悟の言葉が国輝は信じられないようだ。
そして国時が呆れた顔をして問いかける。
国時
「全く、何とも奇特なことを申す者がおったものよな。正直になられよ頼信殿よ。真は怖いのであろう?そうであろう?」
元服して間もない者が果たしてここまで大層な言葉を言い放つであろうか。
幼き頃より類まれなる天性の才能を発揮するいわば「神童」であらば話は別ではあるが。
だが、仮にそうであったとしても所詮は人生経験浅き若造である事に変わりは無い。
それ故に頼信による先程の言葉は、内心を偽り表面を取り繕っただけの物なのでは無いかと国時は疑っているようであった。
すると頼信は、なおも毅然とした態度を見せながら口を開く。
頼信
「拙者の命が犠牲となることで墨山国、いや創天国に平和が訪れるでありましょう。さすれば、喜んでこの身を投げ捨てましょうぞ!」
どうやら頼信は、既に自身が犠牲になる事を覚悟しているようである。
玄名
「頼信殿の命をもってこの墨山国にはびこる悪の連鎖を断つ、というわけですね…真にご立派なお考えにございます。」
玄名は頼信の覚悟ある言葉に対して非常に感心した様子であった。
そして頼信の思いを汲み取ったのであろうか、頼隆は引き締まった表情へと切り替わり、口を開く。
頼隆
「頼信よ、お前という奴は…分かった。その命、無駄にはせぬぞ。約束いたそう。」
祐宗に対して頼隆が声を張り上げて言う。
頼隆
「祐宗様!今一度、我らに国輝ならびに国時を討つご命令をくだされ!」
かような脅しになど屈する事無く、戦うべきである。
頼隆は、あくまでも今回の戦で何としてでも国輝らを成敗せねばならぬと言わんばかりの様子であった。
祐宗が真剣な表情をして頼隆に問う。
祐宗
「頼隆殿、それで…真によろしいのでござるな?」
頼隆
「はい。思えばこの戦が始まりし頃から拙者は既に腹に決めておりました故のことにございます…」
戦の最中においては、親子が敵味方に分かれて戦う事に対しての葛藤に苦しんでいる様子を頼隆は何度も見せていた。
しかし今の状況下に置かれた事により、こうする事が最善であると頼隆が考えたうえでの言葉であった。
頼隆の表情にただならぬ覚悟を感じたのであろうか、祐宗もまた意を決した表情で声を上げる。
祐宗
「承知いたした。では皆の者よ、参るぞ!」
こうして志太・十部軍による攻撃が再び始まる事となったのである。
そして、今後は墨山国に対して一切の干渉を行わないという事を誓わせようとしていた。
国輝
「おい頼隆に祐宗よ、早うせぬか!頼信がどうなっても良いと申すのか?違うであろう?ふふふ…」
苛立った口調で国輝はそう声を上げていた。
なおも頼信の首元には、国輝によって刀の刃が向けられている。
頼隆
「うっ、我が外河家を馬鹿にしおって…」
頼信が国輝らによってぞんざいな扱いを受けている事に対して頼隆は、腸が煮えくり返る思いであった。
祐宗
「ぐぐぐっ…我ら軍勢が撤退するもやむ無し、か…」
これには祐宗も打つ手は無い故に、全軍撤退をせざるを得ない状況であろうかと考え始めていた。
最早、我が軍の勝利は間違い無いであろう。
その矢先にこうした事態に陥り、形勢は一気に逆転してしまった。
祐宗は、非常に悔しげな表情を浮かべていた。
その時である。
頼信が頼隆らの軍勢の前に身を乗り出して声を上げ始める。
頼信
「祐宗殿!そして父上!お聞きくだされ!志太殿が築かれる泰平の世の為であらばこの頼信は、我が命を捨てても構いませぬ!」
頼信は、毅然とした態度を見せている。
頼隆
「よ、頼信…お前まさか…」
頼隆は、頼信の顔を見つめながら声を詰まらせてそう言った。
思いもよらぬ頼信の言葉に非常に驚いている様子であった。
国輝
「なんじゃと?貴様、気は確かであるか?」
どうやら、頼信による覚悟の言葉が国輝は信じられないようだ。
そして国時が呆れた顔をして問いかける。
国時
「全く、何とも奇特なことを申す者がおったものよな。正直になられよ頼信殿よ。真は怖いのであろう?そうであろう?」
元服して間もない者が果たしてここまで大層な言葉を言い放つであろうか。
幼き頃より類まれなる天性の才能を発揮するいわば「神童」であらば話は別ではあるが。
だが、仮にそうであったとしても所詮は人生経験浅き若造である事に変わりは無い。
それ故に頼信による先程の言葉は、内心を偽り表面を取り繕っただけの物なのでは無いかと国時は疑っているようであった。
すると頼信は、なおも毅然とした態度を見せながら口を開く。
頼信
「拙者の命が犠牲となることで墨山国、いや創天国に平和が訪れるでありましょう。さすれば、喜んでこの身を投げ捨てましょうぞ!」
どうやら頼信は、既に自身が犠牲になる事を覚悟しているようである。
玄名
「頼信殿の命をもってこの墨山国にはびこる悪の連鎖を断つ、というわけですね…真にご立派なお考えにございます。」
玄名は頼信の覚悟ある言葉に対して非常に感心した様子であった。
そして頼信の思いを汲み取ったのであろうか、頼隆は引き締まった表情へと切り替わり、口を開く。
頼隆
「頼信よ、お前という奴は…分かった。その命、無駄にはせぬぞ。約束いたそう。」
祐宗に対して頼隆が声を張り上げて言う。
頼隆
「祐宗様!今一度、我らに国輝ならびに国時を討つご命令をくだされ!」
かような脅しになど屈する事無く、戦うべきである。
頼隆は、あくまでも今回の戦で何としてでも国輝らを成敗せねばならぬと言わんばかりの様子であった。
祐宗が真剣な表情をして頼隆に問う。
祐宗
「頼隆殿、それで…真によろしいのでござるな?」
頼隆
「はい。思えばこの戦が始まりし頃から拙者は既に腹に決めておりました故のことにございます…」
戦の最中においては、親子が敵味方に分かれて戦う事に対しての葛藤に苦しんでいる様子を頼隆は何度も見せていた。
しかし今の状況下に置かれた事により、こうする事が最善であると頼隆が考えたうえでの言葉であった。
頼隆の表情にただならぬ覚悟を感じたのであろうか、祐宗もまた意を決した表情で声を上げる。
祐宗
「承知いたした。では皆の者よ、参るぞ!」
こうして志太・十部軍による攻撃が再び始まる事となったのである。
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