403 / 549
第8章 将軍への道程編
97.第二次墨山の戦い(37)
しおりを挟む
志太・十部軍に追い込まれた外河軍。
それを受けた国輝と国時らは、頼信の身を拘束。
やがて国輝が兵たちの前で声を上げる。
「これより外河軍の総大将は松永国輝である!」
国輝による突然の宣言に両軍は混乱した様子であった。
国輝
「ふふふ、何度でも儂は申すぞ。戦の場に卑怯も何も無い!どのような手を使っても最後に勝てばよいのじゃとな!」
戦場は殺し合いをする場だ。
自身の命を懸けた戦いに正義や悪など無い。
ゆえに、どのような卑怯な手段を用いても最終的には自身が勝てば良い。
どうやら国輝はこうした屈折した独自の思想を自身の中に持っているようである。
その言葉を聞いた頼隆は、顔を真赤にして怒鳴り声を上げる。
頼隆
「ふ、ふざけるな!国輝!貴様は鬼じゃ!人間の姿をした鬼じゃ!」
頼隆の目は、酷くつり上がっていた。
すると崇冬がそんな頼隆を制止して声を上げる。
崇冬
「頼隆殿、そなたのお気持ちは拙者も痛いほどよく分かる。じゃが、今一度落ち着かれよ!」
頼隆は、自身の嫡男である頼信が生命の危機にさらされている現実を目にした事で冷静さを失っていた。
つい先刻前には城内において勇敢にも先陣を切り、味方の軍勢を優勢に導いていた時とはまるで別人のようである。
そして国輝が頼隆の様子を見て嘲笑しながら問いかける。
国輝
「おうおう、墨山生まれの犬畜生が何やら吠えておるわ。ふむ、たとえ馬鹿息子であろうとも我が子は可愛いか。頼隆殿よ?」
国輝は頼隆に対して見下した態度を見せていた。
頼隆
「ぐぐぐぐぐっ…」
頼隆は口をつぐみ、悔しげな表情を浮かべていた。
やがて国輝は胸を大きく張り上げ、軍勢の前で大声を上げる。
国輝
「志太と十部の者たちよ!一度しか申さぬぞ!良く聞け!」
堂々たる態度で国輝が口を開く。
国輝
「直ちに全軍を撤退させよ!そして、この墨山国を二度と攻めぬことを誓うが良い!」
まず、国輝は志太・十部軍の全軍撤退を命じた。
さらに、墨山国に対して今後は攻撃を行わない事を誓わさせようという内容であった。
これは、墨山国を独立国として志太家は認めよと暗に言っているようなものだ。
そうして国輝は、頼信に対してにやりと不気味な笑みを浮かべた後に、軍勢に対して言う。
国輝
「これらのことを聞き入れられぬようであらば…分かっておろうな?」
国時
「頼信殿を生かすも殺すもお主らのご返答次第ということにござる。さぁ、どうされますかな?」
頼信を人質に取った国輝らは、どうやら墨山国を乗っ取ったうえで独裁政権を敷こうと企んでいるようである。
頼隆
「な、なんということじゃ…」
頼隆は愕然とした様子であった。
崇冬
「何と!初めからそれが狙いでござったというわけか…」
これまでに国輝らが見せた動きは外河家を乗っ取る為であったという事を知った崇冬は、思わず声を上げていた。
同時に、味方を器用に欺いてこの土壇場においてそれらを実行している国輝に対して不謹慎にも感心している様子でもあった。
康龍
「頼信殿を人質に取ったうえでかような悪あがき。国輝は真に醜き男よ…」
康龍には、窮地に立たされた際の切り札に頼信を人質に取るという卑劣とも言える手段を用いた国輝を痛烈に批判していた。
するとその言葉を聞いた貞道が口を開く。
貞道
「いや、悪あがきではござらぬ。現に我ら軍勢の足を止めさせておるのじゃからな。」
国輝によるこの策は、苦し紛れの末に実行したものでは無いと貞道は言っていた。
先刻までは外河軍を壊滅させんとしていた志太・十部の軍勢の激しい攻撃が今、こうしてぴたりと止んだ。
この状況をつくり出した国輝に貞道は、底知れぬ智謀力を感じているようであった。
最も実際は自軍が壊滅寸前に追い込まれるなど予想外の展開が発生した事で国輝が急遽思案した策ではあるが…
それでもこうして敵軍の動きを封じ込める事に成功した国輝の行動力は、相当なものであったとも言えようか。
そして本陣では祐永が神妙な顔つきをして祐宗に言う。
祐永
「兄者、いかがなされますか?どうかご決断を…」
祐宗
「ぐっ、国輝の奴め。我らの足元を見おってからに…」
祐宗は頭を抱えていた。
それを受けた国輝と国時らは、頼信の身を拘束。
やがて国輝が兵たちの前で声を上げる。
「これより外河軍の総大将は松永国輝である!」
国輝による突然の宣言に両軍は混乱した様子であった。
国輝
「ふふふ、何度でも儂は申すぞ。戦の場に卑怯も何も無い!どのような手を使っても最後に勝てばよいのじゃとな!」
戦場は殺し合いをする場だ。
自身の命を懸けた戦いに正義や悪など無い。
ゆえに、どのような卑怯な手段を用いても最終的には自身が勝てば良い。
どうやら国輝はこうした屈折した独自の思想を自身の中に持っているようである。
その言葉を聞いた頼隆は、顔を真赤にして怒鳴り声を上げる。
頼隆
「ふ、ふざけるな!国輝!貴様は鬼じゃ!人間の姿をした鬼じゃ!」
頼隆の目は、酷くつり上がっていた。
すると崇冬がそんな頼隆を制止して声を上げる。
崇冬
「頼隆殿、そなたのお気持ちは拙者も痛いほどよく分かる。じゃが、今一度落ち着かれよ!」
頼隆は、自身の嫡男である頼信が生命の危機にさらされている現実を目にした事で冷静さを失っていた。
つい先刻前には城内において勇敢にも先陣を切り、味方の軍勢を優勢に導いていた時とはまるで別人のようである。
そして国輝が頼隆の様子を見て嘲笑しながら問いかける。
国輝
「おうおう、墨山生まれの犬畜生が何やら吠えておるわ。ふむ、たとえ馬鹿息子であろうとも我が子は可愛いか。頼隆殿よ?」
国輝は頼隆に対して見下した態度を見せていた。
頼隆
「ぐぐぐぐぐっ…」
頼隆は口をつぐみ、悔しげな表情を浮かべていた。
やがて国輝は胸を大きく張り上げ、軍勢の前で大声を上げる。
国輝
「志太と十部の者たちよ!一度しか申さぬぞ!良く聞け!」
堂々たる態度で国輝が口を開く。
国輝
「直ちに全軍を撤退させよ!そして、この墨山国を二度と攻めぬことを誓うが良い!」
まず、国輝は志太・十部軍の全軍撤退を命じた。
さらに、墨山国に対して今後は攻撃を行わない事を誓わさせようという内容であった。
これは、墨山国を独立国として志太家は認めよと暗に言っているようなものだ。
そうして国輝は、頼信に対してにやりと不気味な笑みを浮かべた後に、軍勢に対して言う。
国輝
「これらのことを聞き入れられぬようであらば…分かっておろうな?」
国時
「頼信殿を生かすも殺すもお主らのご返答次第ということにござる。さぁ、どうされますかな?」
頼信を人質に取った国輝らは、どうやら墨山国を乗っ取ったうえで独裁政権を敷こうと企んでいるようである。
頼隆
「な、なんということじゃ…」
頼隆は愕然とした様子であった。
崇冬
「何と!初めからそれが狙いでござったというわけか…」
これまでに国輝らが見せた動きは外河家を乗っ取る為であったという事を知った崇冬は、思わず声を上げていた。
同時に、味方を器用に欺いてこの土壇場においてそれらを実行している国輝に対して不謹慎にも感心している様子でもあった。
康龍
「頼信殿を人質に取ったうえでかような悪あがき。国輝は真に醜き男よ…」
康龍には、窮地に立たされた際の切り札に頼信を人質に取るという卑劣とも言える手段を用いた国輝を痛烈に批判していた。
するとその言葉を聞いた貞道が口を開く。
貞道
「いや、悪あがきではござらぬ。現に我ら軍勢の足を止めさせておるのじゃからな。」
国輝によるこの策は、苦し紛れの末に実行したものでは無いと貞道は言っていた。
先刻までは外河軍を壊滅させんとしていた志太・十部の軍勢の激しい攻撃が今、こうしてぴたりと止んだ。
この状況をつくり出した国輝に貞道は、底知れぬ智謀力を感じているようであった。
最も実際は自軍が壊滅寸前に追い込まれるなど予想外の展開が発生した事で国輝が急遽思案した策ではあるが…
それでもこうして敵軍の動きを封じ込める事に成功した国輝の行動力は、相当なものであったとも言えようか。
そして本陣では祐永が神妙な顔つきをして祐宗に言う。
祐永
「兄者、いかがなされますか?どうかご決断を…」
祐宗
「ぐっ、国輝の奴め。我らの足元を見おってからに…」
祐宗は頭を抱えていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください


暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる