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第8章 将軍への道程編
95.第二次墨山の戦い(35)
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墨山城の城内は、志太・十部軍の軍勢で溢れかえっていた。
それを受けた外河軍の将たちは、本丸天守へと退却。
そして軍勢は、本丸天守の城門に手をかけ始めていた。
それから幾分かの時が過ぎ、城門は見るも無残な姿へと形を変えつつあった。
創天国随一の堅固さを誇る墨山城ではあったが、大軍の兵たちを前ではどうやらその意味をも成さなかったようである。
そして本丸天守に火が放たれ、みるみるうちに辺りは炎に包まれていった。
その様子に国輝が慌てた表情で声を上げる。
国時
「あぁっ、天守に火が!このままでは敵軍に侵入されてしまいますぞ!」
国輝の声を聞いた頼信は、唇を噛み締めたのちに弱々しい声を出す。
頼信
「ぐっ、最早これまで。外河家は…外河家は終わってしまうのか…」
外河軍の命の綱とも言える墨山城の本丸天守が今、激しい音を立てて燃え始めている。
この光景を目の当たりにした頼信は、諦めの表情を見せていた。
先刻までは、毅然とした態度を見せて最後まで外河軍として戦おうと口にしていた決意は最早どこにも無かったようである。
その様子を見た国輝が頼信の耳元で小さく囁く。
国輝
「真にそうでございますな。これで外河家は終わり、そして…新たな始まりにございます。」
国輝はにやりと不気味な笑みを浮かべていた。
すると頼信が驚きながら国輝に対して聞き返す。
頼信
「なに?国輝殿、それはどういうことにござるか?」
国輝は下品な笑い声を上げながら答える。
国輝
「ぐはははは、ここで終わられるのは頼信様一人だけにござるということよ!おい国時、やれ!」
すると国時は素早く頼信の背後に回り、頼信を羽交い締めにしていた。
国時
「はっ!それでは頼信様、ご覚悟願います!」
そう言うと国時は、頼信の体を縄で強く縛り上げ始める。
頼信
「お、おい、こら!国時殿よ?な、何をいたすのじゃ?何故にここで我を縛るというのじゃ?」
頼信らのいる本丸天守への城門は崩壊寸前であり、さらに辺りは火の海と化そうとしている。
そのような非常事態において一体、何故に自身の身の自由を奪われねばならぬというのだ。
頼信は、この国輝らの行動が理解出来ないようであった。
すると国輝が呆れた表情を見せた後、頼信に対して吐き捨てるように言う。
国輝
「ふん、やはり貴様は馬鹿息子よのう。これであの外河頼隆の子とは聞いて呆れるわい。まだ分からぬか、まぁ良いわ。」
そうして国輝は、天守の外にいる軍勢の前に姿を現して声を上げる。
国輝
「頼隆と志太・十部の者たちよ、聞くが良い!これより外河軍の総大将はこの儂、松永国輝じゃ!」
外河軍を束ねし新たな総大将は、自身であると国輝は軍勢の前で口にした。
その発言に、敵味方の両軍の兵たちの動きが一瞬ぴたりと止まっていた。
そして頼隆の目には国輝らの姿が飛び込んで来た。
頼隆
「なっ、何じゃと?国輝、貴様!一体どういうつもりじゃ?答えよ、答えぬか!」
国輝による突然の言葉を聞いた頼隆もまた他の兵たちと同様に足を止めていた。
だがすぐさまに険しい表情となり、国輝に対して怒鳴るように声を上げていた。
すると次は国時も軍勢の前に姿を現し始める。
そしてその横には、縄によって縛り上げられた頼信の姿もあった。
国輝
「おおっと頼隆よ、そこまでじゃ。下手な真似をするとこやつの首を即刻刎ねてしまうぞ。良いのかのう?ふふふ…」
頼信の首元には、国輝が手にする刀の刃先を向けられていた。
それを受けた外河軍の将たちは、本丸天守へと退却。
そして軍勢は、本丸天守の城門に手をかけ始めていた。
それから幾分かの時が過ぎ、城門は見るも無残な姿へと形を変えつつあった。
創天国随一の堅固さを誇る墨山城ではあったが、大軍の兵たちを前ではどうやらその意味をも成さなかったようである。
そして本丸天守に火が放たれ、みるみるうちに辺りは炎に包まれていった。
その様子に国輝が慌てた表情で声を上げる。
国時
「あぁっ、天守に火が!このままでは敵軍に侵入されてしまいますぞ!」
国輝の声を聞いた頼信は、唇を噛み締めたのちに弱々しい声を出す。
頼信
「ぐっ、最早これまで。外河家は…外河家は終わってしまうのか…」
外河軍の命の綱とも言える墨山城の本丸天守が今、激しい音を立てて燃え始めている。
この光景を目の当たりにした頼信は、諦めの表情を見せていた。
先刻までは、毅然とした態度を見せて最後まで外河軍として戦おうと口にしていた決意は最早どこにも無かったようである。
その様子を見た国輝が頼信の耳元で小さく囁く。
国輝
「真にそうでございますな。これで外河家は終わり、そして…新たな始まりにございます。」
国輝はにやりと不気味な笑みを浮かべていた。
すると頼信が驚きながら国輝に対して聞き返す。
頼信
「なに?国輝殿、それはどういうことにござるか?」
国輝は下品な笑い声を上げながら答える。
国輝
「ぐはははは、ここで終わられるのは頼信様一人だけにござるということよ!おい国時、やれ!」
すると国時は素早く頼信の背後に回り、頼信を羽交い締めにしていた。
国時
「はっ!それでは頼信様、ご覚悟願います!」
そう言うと国時は、頼信の体を縄で強く縛り上げ始める。
頼信
「お、おい、こら!国時殿よ?な、何をいたすのじゃ?何故にここで我を縛るというのじゃ?」
頼信らのいる本丸天守への城門は崩壊寸前であり、さらに辺りは火の海と化そうとしている。
そのような非常事態において一体、何故に自身の身の自由を奪われねばならぬというのだ。
頼信は、この国輝らの行動が理解出来ないようであった。
すると国輝が呆れた表情を見せた後、頼信に対して吐き捨てるように言う。
国輝
「ふん、やはり貴様は馬鹿息子よのう。これであの外河頼隆の子とは聞いて呆れるわい。まだ分からぬか、まぁ良いわ。」
そうして国輝は、天守の外にいる軍勢の前に姿を現して声を上げる。
国輝
「頼隆と志太・十部の者たちよ、聞くが良い!これより外河軍の総大将はこの儂、松永国輝じゃ!」
外河軍を束ねし新たな総大将は、自身であると国輝は軍勢の前で口にした。
その発言に、敵味方の両軍の兵たちの動きが一瞬ぴたりと止まっていた。
そして頼隆の目には国輝らの姿が飛び込んで来た。
頼隆
「なっ、何じゃと?国輝、貴様!一体どういうつもりじゃ?答えよ、答えぬか!」
国輝による突然の言葉を聞いた頼隆もまた他の兵たちと同様に足を止めていた。
だがすぐさまに険しい表情となり、国輝に対して怒鳴るように声を上げていた。
すると次は国時も軍勢の前に姿を現し始める。
そしてその横には、縄によって縛り上げられた頼信の姿もあった。
国輝
「おおっと頼隆よ、そこまでじゃ。下手な真似をするとこやつの首を即刻刎ねてしまうぞ。良いのかのう?ふふふ…」
頼信の首元には、国輝が手にする刀の刃先を向けられていた。
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