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第8章 将軍への道程編
94.第二次墨山の戦い(34)
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墨山城に志太・十部軍が侵入し始めて数刻の時が経った。
城内の各所は、それぞれの軍勢によって制圧。
残すは頼信らの構える本丸天守を残すのみとなっていた。
頼隆
「頼信よ、覚悟して参れよ…皆の者、行くぞ!」
そう言うと頼隆の軍勢は、本丸前の城門に攻撃を加え始めていた。
崇冬
「頼隆殿、真に辛かろうな…心中お察しいたす。」
これほどの軍勢をもってすれば開門するのは最早時間の問題と言っても良いであろう。
本丸天守への侵入を果たせば、頼信は討たれる すなわち死ぬという事を意味する。
その時は、刻一刻と確実に近付いてきているのだ。
崇冬は、必死の形相で城門を兵たちと共に破壊している頼隆の姿を見て痛々しい気持ちであった。
康龍
「親が実の子を殺める、か。かようなことなど、あってはならぬのじゃがな…」
親には子を守るという責務がある。
しかし、今の頼隆からはそのような物を微塵も感じられない。
こうした非情さを持って頼信を討たんとする頼隆の様子を見た康龍は、非情に残念そうな表情を浮かべていた。
貞道
「不本意とはいえ、一族の者たちで殺し合いをせねばならぬとは何たる皮肉であるか。義道殿も嘆いておるであろうな…」
この乱世において一族同士で敵味方に分かれて戦う事は、珍しい事では無い。
その場合は、私利私欲に目がくらんだ一族の者たちによる家督相続を巡ってと言った醜い争いが大半である。
しかし、今回の例は国輝という一人の男の策略によって引き起こされたものであり、いわば不本意な争いと言っても良い。
今のこの状況をもし義道が見ていたとすれば、何と言うであろうか。
貞道は静かにそう呟いていた。
玄名
「頼信殿は、生まれし時より頼隆殿とは悪縁であったというわけですね…」
この世に生を受けた時から頼信の運命は決まっていた。
それは、悪縁によって自らの命が滅びるという事であった。
玄名はこうした悲しき死生観に対して嘆きの声を上げていた。
本陣付近の祐永はそのような頼隆の動きに対し、いよいよかと言った表情を見せていた。
祐永
「頼隆殿、ついに覚悟を決められたか…」
すると祐宗が神妙な顔つきで静かに口を開く。
祐宗
「うむ、一番辛いのは頼隆殿本人じゃ。いやはや、頼隆殿は真に強き御方にござるな。」
「敵として会った以上、全力で立ち向かって勝利を収めるべし。
それが武士(もののふ)として生きる者の定めにござる。」
頼隆は、自身の兵たちに対してそう言っていた。
このように気丈に振る舞っている頼隆ではあったが、心の中では悲しみの涙を流している。
時折覗かせる戸惑いの表情が、それを物語っていた。
そうした頼隆の複雑な心境を読み取っていた祐宗は、やりきれない気持ちであった。
そして本丸天守に構える頼信、国輝、国時らが声を上げ始める。
国輝
「この松永国輝の首、取れるものなら取ってみるがよい!」
既に墨山城の城内は志太・十部軍らの軍勢によってほぼ制圧されており、本丸天守を残すのみとなっていた。
完全に墨山城が落城するのは最早時間の問題と言っても良いであろう。
しかし、そのような絶体絶命とも言える状態に置かれながらも国輝は敵軍に対して勇猛果敢な態度を見せていた。
国時
「沖国時、外河軍の意地を見せてくれるわ!」
国時もまた国輝と同じく勇ましい表情を見せており、たとえ何があろうとも敵には屈さぬと言わんばかりの態度である。
そのような二人の様子を見た頼信が凛々しい表情で声を上げる。
頼信
「父上、我は外河軍として最後まで戦いますぞ!」
天守の兵たちは皆、決死の表情をして刀を構えていた。
城内の各所は、それぞれの軍勢によって制圧。
残すは頼信らの構える本丸天守を残すのみとなっていた。
頼隆
「頼信よ、覚悟して参れよ…皆の者、行くぞ!」
そう言うと頼隆の軍勢は、本丸前の城門に攻撃を加え始めていた。
崇冬
「頼隆殿、真に辛かろうな…心中お察しいたす。」
これほどの軍勢をもってすれば開門するのは最早時間の問題と言っても良いであろう。
本丸天守への侵入を果たせば、頼信は討たれる すなわち死ぬという事を意味する。
その時は、刻一刻と確実に近付いてきているのだ。
崇冬は、必死の形相で城門を兵たちと共に破壊している頼隆の姿を見て痛々しい気持ちであった。
康龍
「親が実の子を殺める、か。かようなことなど、あってはならぬのじゃがな…」
親には子を守るという責務がある。
しかし、今の頼隆からはそのような物を微塵も感じられない。
こうした非情さを持って頼信を討たんとする頼隆の様子を見た康龍は、非情に残念そうな表情を浮かべていた。
貞道
「不本意とはいえ、一族の者たちで殺し合いをせねばならぬとは何たる皮肉であるか。義道殿も嘆いておるであろうな…」
この乱世において一族同士で敵味方に分かれて戦う事は、珍しい事では無い。
その場合は、私利私欲に目がくらんだ一族の者たちによる家督相続を巡ってと言った醜い争いが大半である。
しかし、今回の例は国輝という一人の男の策略によって引き起こされたものであり、いわば不本意な争いと言っても良い。
今のこの状況をもし義道が見ていたとすれば、何と言うであろうか。
貞道は静かにそう呟いていた。
玄名
「頼信殿は、生まれし時より頼隆殿とは悪縁であったというわけですね…」
この世に生を受けた時から頼信の運命は決まっていた。
それは、悪縁によって自らの命が滅びるという事であった。
玄名はこうした悲しき死生観に対して嘆きの声を上げていた。
本陣付近の祐永はそのような頼隆の動きに対し、いよいよかと言った表情を見せていた。
祐永
「頼隆殿、ついに覚悟を決められたか…」
すると祐宗が神妙な顔つきで静かに口を開く。
祐宗
「うむ、一番辛いのは頼隆殿本人じゃ。いやはや、頼隆殿は真に強き御方にござるな。」
「敵として会った以上、全力で立ち向かって勝利を収めるべし。
それが武士(もののふ)として生きる者の定めにござる。」
頼隆は、自身の兵たちに対してそう言っていた。
このように気丈に振る舞っている頼隆ではあったが、心の中では悲しみの涙を流している。
時折覗かせる戸惑いの表情が、それを物語っていた。
そうした頼隆の複雑な心境を読み取っていた祐宗は、やりきれない気持ちであった。
そして本丸天守に構える頼信、国輝、国時らが声を上げ始める。
国輝
「この松永国輝の首、取れるものなら取ってみるがよい!」
既に墨山城の城内は志太・十部軍らの軍勢によってほぼ制圧されており、本丸天守を残すのみとなっていた。
完全に墨山城が落城するのは最早時間の問題と言っても良いであろう。
しかし、そのような絶体絶命とも言える状態に置かれながらも国輝は敵軍に対して勇猛果敢な態度を見せていた。
国時
「沖国時、外河軍の意地を見せてくれるわ!」
国時もまた国輝と同じく勇ましい表情を見せており、たとえ何があろうとも敵には屈さぬと言わんばかりの態度である。
そのような二人の様子を見た頼信が凛々しい表情で声を上げる。
頼信
「父上、我は外河軍として最後まで戦いますぞ!」
天守の兵たちは皆、決死の表情をして刀を構えていた。
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