架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第8章 将軍への道程編

91.第二次墨山の戦い(31)

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墨山城に侵入した頼隆は、城門を開門させるべく作戦を敢行。
立ちはだかる外河軍の兵たちをものともせず突き進んで行った。
そうしてやがて頼隆と兵たちは各方角の城門に辿り着き、これらを全て開門させていた。

国時
「国輝様!城門は、頼隆らの兵どもによって全て開け放たれた模様にございます!」

頼隆によって墨山城の城門が全て開門された事を知った国時は、慌てた様子でそう言っていた。
その報告を聞いた国輝は、みるみるうちに険しい表情を見せ始めて叫び出す。

国輝
「何じゃと?うぬぬぬぬ…頼隆の奴め、とことん我らの邪魔をしおってからに!くそっ、今に見ておれよ…」

頼隆が城内に侵入したという報告が入った事により、自軍が劣勢に陥るのも時間の問題では無かろうか。
そう危惧していた国輝は、何としてでも頼隆を捕らえねばならぬと考えて必死に抵抗をしていた。
しかしその思いも虚しく、墨山城は頼隆らの手によって味方軍である志太・十部軍の軍勢の侵入を許してしまう事となる。
恐れていた事がとうとう現実のものとなってしまった。
この事実に対して国輝は、非常に強い憤りを感じている様子であった。
また同時に、いかにして自軍の形勢の巻き返しを図るべきかを考え始めるのであった。

そして頼信が体を震わせながら口を開く。

頼信
「父上…どうしても我らと戦わねばならぬのでございますね…」

どうやら頼信はここに来て頼隆と戦う事に対し、再び強い抵抗を覚え始めているようであった。
先刻前まではたとえ実の父親であろうとも、敵である以上は外河軍として討ち取るべし。
と言ってはいたが、やはり親子という関係を前に彼は非情になれない様子だ。

しかし、頼隆はそんな頼信の心情とは裏腹に非常に威勢の良い声を上げ続けている。

頼隆
「さぁさぁ皆の者たちよ、我らの力を存分に見せてやる時は今にござる。狙うは松永国輝、沖国時、そして…外河軍総大将 外河頼信の首ぞ!」

外河頼信の首。
今、確かに頼隆はそうはっきりと言っていた。
これには兵たちも一瞬凍りついた様子を見せたが、頼隆の迷いのない決死の表情を見て再びその勢いを取り戻していくのであった。

一方、志太軍の陣中では崇冬が城内の最前線に立っており、外河軍との猛烈な戦いを繰り広げている。
崇冬自身も外河軍と応戦し、無双のごとく次々と兵たちをなぎ倒していた。

そんな中、頼隆の声が崇冬の耳にも届き始める。
決死の表情を見せて兵たちに対して言い放った覚悟の号令である。
それを聞いた崇冬は、一人小さな声で呟く。

崇冬
「むぅ…それにしても、己の息子を敵である故に殺めねばならぬとはな…頼隆殿は、真に辛かろう…」

いくら敵とは言えど、頼信は紛れもない頼隆の息子である。
しかし頼隆は、躊躇する事なく頼信の首を刎ねてしまえとまで口にしている。

自家が起こした不始末は、自身の手で決着をつけねばならぬ。
そうした責任感が頼隆を鬼にまでもさせていた。
いや、鬼にならざるを得なかったのであろう。

崇冬は、頼隆の心情を想うと非常にやりきれない気持ちで胸がいっぱいになっていた。
そして南門付近で外河軍と応戦していた康龍にも頼隆の声は届いていた。

康龍
「頼隆殿よ、これもまた運命…いや、よもや宿命でござったのかも知れぬな…」

康龍は神妙な顔つきをしていた。
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