架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第8章 将軍への道程編

90.第二次墨山の戦い(30)

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政長らが墨山城への侵入を果たしたという情報が城外の志太・十部軍に入った事で両軍の士気は共に上昇。
城外の兵たちは、頼隆による城門の開門を今か今かと待ち受けている様子であった。

頼隆が兵たちに向けて急かすように声を上げる。

頼隆
「皆の者よ!急げ!急ぐのじゃ!我らが外の軍勢を城内に案内するまでは立ち止まっておる暇なぞあらぬぞ!」

すると兵たちはさらに勢いを増し、外河軍の兵たちを次々となぎ倒して城門へと進み出す。
頼隆による指揮の声は政長の元にも届いていた。

政長
「どうやら頼隆殿は、無事に策を遂行されておられるようにござるな。」

政長は、手際良く兵たちの指揮を取って着々と城門の開場を行おうとしている様子が頭に浮かんでいたようであった。

やがて頼隆と兵たちは、各方角の城門前に立っていた。
必ずや城門前に辿り着いて見せよう。
先刻前に頼隆がそう言い放っていた事が、ついに現実のものとなったのである。

頼隆
「ふぅ、何とか城門へと来る事ができたようじゃな…」

城門への到着を果たした頼隆は、安堵の表情を浮かべながらそう言っていた。
そして頼隆が続けて兵たちに向けて声を上げる。

頼隆
「ようし、では城門を開けよ!外におられる我らの兵たちを呼び込むのじゃ!」

すると兵たちは、城門の閂を一気に抜き始めた。
東門から始まり、西門、南門、北門、それぞれの城門の閂が抜かれていく…
そうして各方角の城門は開け放たれたのであった。

開いた城門のすぐ先には、大勢の志太・十部軍の軍勢が待ち構えていた。
城門が開くと軍勢は、我も我もとなだれ込むように城内へとわらわらと入っていった。

崇冬
「ようし、これで城門の突破を果たしたな!お前たちよ、ここが口羽の兵の腕の見せ所である故に遅れをとるでないぞ!」

城門が開門した事を知った崇冬は兵たちに対してそう一喝し、自身もまた馬を進めて墨山城の城内へと入って行った。

康龍
「頼隆殿、真に恩に着ますぞ!では、我らも直ちに城内に侵入いたして外河軍を追い詰めるのじゃ!」

南門が開門した瞬間を見た康龍はまず、頼隆に対して感謝の言葉を口にしていた。
そしてこの厚意に報いるべく、外河軍に追い打ちをかけて墨山城の陥落を目指すのであった。

貞道
「おぉ、城門が…開いた。それでは、儂らもちぃとお邪魔いたすかのう。」

西門では、貞道が落ち着いた様子を見せながらそう言っていた。
先程までは堅く閉ざされていた城門が開き始める様子を見た貞道には、まるで墨山城が自身たちの事を歓迎してくれているかのように思えてならなかったようである。

義継
「何と!頼隆殿がついにやられたか!これで外河家はお終いであろうな。」

東門を攻撃していた義継は、開門の瞬間に自軍の勝利を確信している様子でそう言っていた。

元光
「武の三梅の名に恥じぬよう、我らも参ろう!行くぞ!」

この戦において敵城への侵入という武功を政長らによって先に立てられた事に対し、元光は先程まで悔しさを感じていた。
だが、城門が開門した事によって次なる武功を先に立ててやろうと闘志に燃えていた。
それは、外河軍の武将ならびに総大将である外河頼信の一番槍という武功であった。

玄名
「国輝殿よ、裁きを受ける時はもうすぐぞ…覚悟はできておられるか。」

墨山城より少し離れた場所に陣を敷いていた玄名は、城の方角を向いて手を合わせながら静かにそう言っていた。
間もなく国輝に天罰が下ろうとしている…
自らの命をもって犠牲となった外河家の者たちへの償いを行う事となるであろう…

そして、志太軍の本陣では祐永が興奮した様子で祐宗に対して言う。

祐永
「兄者、我らも皆に続きましょうぞ!」

祐宗
「よし、では全軍総攻撃で外河軍を追い詰めてしまうのじゃ!行けっ!」

こうして志太・十部軍は、全軍で墨山城へと突入するのであった。
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