394 / 549
第8章 将軍への道程編
88.第二次墨山の戦い(28)
しおりを挟む
墨山城の地下蔵付近においては頼隆と政長らが奮闘中である。
そんな中、頼隆が意を決して立ち上がる。
どうやら地下蔵から一気に墨山城の城門へと移動し、外にいる味方の軍勢を引き入れるというものだ。
兵数では不利に見えていたが、頼隆は自身に満ちた表情をしていた。
墨山城、ここは自身の城である。
それ故に、たとえ敵兵がいようとも城門まで移動して味方の軍勢を呼び寄せる事などは容易である。
非常に短絡的な考え方ではあったが、自身が動く事で戦況を何としてでも変えなければならない、といった責任を感じている様子であった。
そうして地下蔵を離れて進み始めた頼隆とその兵たちは、ほどなくして城内の外河軍の兵たちに見つかってしまう。
兵
「はっ、あれは!よ、頼隆様じゃ…頼隆様じゃ!」
頼隆の姿を見つけた兵たちは皆、困惑した表情を見せ始める。
外河家の先代である頼隆が敵軍として彼らの前に現れたのであるから無理は無いであろう。
頼隆
「くっ、もう見つかってしまったか…これは少しばかりか骨を折ることになりそうじゃな…」
頼隆は、深刻な表情を見せていた。
そして次の瞬間、頼隆は手にした刀を大きくかざした後に兵たちに刃先を向けて声を上げる。
頼隆
「えぇい!元墨山国大名 外河頼隆のお通りじゃ!死にたくない者は下がっておれ!」
兵
「う、うぅぅぅ…拙者たちはどうすれば、どうすれば良いのじゃ…」
気迫ある頼隆の叫び声に外河軍の兵たちは、ますます戸惑いの色を見せていた。
すると、天守の方角から非常に通った声が聞こえ始める。
その声は、外河軍総大将 外河頼信のものであった。
頼信
「最早是非もなし!構わぬ!我が父、外河頼隆を今その場で討ち取ってしまうのじゃ!」
何と頼信は、自身の父である頼隆を討てと言っていた。
二人は「親子」という深い絆で結ばれた関係であるにも関わらずだ。
こうした不本意な決断を下さざるを得なかったとは言え、頼信の覚悟は相当なものであろう。
すると国輝が身を乗り出して頼信に対して言う。
国輝
「元主君であったとしても遠慮は無用というわけにございますな。では、我らもそのようにさせていただきますぞ!」
先刻前までは、志太・十部軍との戦いに対して頼信は二の足を踏んでいた。
そんな中、ようやく自身の肉親である頼隆を討ち取るべし、という決断を下したのである。
これで堂々と頼隆を亡き者にする事ができる。
そう考えた国輝は、にやりと不気味な笑みを浮かべていた。
そしてこの様子に国時は、困惑した表情を見せて口を開く。
国時
「それにしても、真に厄介なことになったのう…早いところ頼隆を討ってしまわねばな…」
一方、頼隆らは外河軍の兵たちとの戦いを繰り広げている。
目の前に立ち尽くす兵たちを次々となぎ倒した後に、頼隆が大声を上げる。
頼隆
「こうなった以上、頼信を我らが討たねばならぬ!じゃが、今はこの墨山城に味方の軍勢を引き入れることを考えよ!良いな?」
頼隆のその声は、天守にいる頼信の元にも届いていた。
頼信
「父上…頼信は、頼信は…真に残念にございますぞ…何故に、父上と戦わねばならぬのじゃ…」
頼隆による容赦のない言葉を聞いた事により、頼信は動揺し始めていた。
先程までは
「実の父であろうとも討ち取るべし」
などと威勢よく声を上げていた頼信ではあったが、今のこの瞬間にはまるで別人のように戦々恐々としている。
その様子を見た国輝が小さな声で一人呟く。
国輝
「ちっ、馬鹿息子めが怖気づきおって。かような奴を儂らが主君に仕立て上げたのがそもそもの間違いであったようじゃな…」
国輝は、面倒げな表情を見せていた。
そんな中、頼隆が意を決して立ち上がる。
どうやら地下蔵から一気に墨山城の城門へと移動し、外にいる味方の軍勢を引き入れるというものだ。
兵数では不利に見えていたが、頼隆は自身に満ちた表情をしていた。
墨山城、ここは自身の城である。
それ故に、たとえ敵兵がいようとも城門まで移動して味方の軍勢を呼び寄せる事などは容易である。
非常に短絡的な考え方ではあったが、自身が動く事で戦況を何としてでも変えなければならない、といった責任を感じている様子であった。
そうして地下蔵を離れて進み始めた頼隆とその兵たちは、ほどなくして城内の外河軍の兵たちに見つかってしまう。
兵
「はっ、あれは!よ、頼隆様じゃ…頼隆様じゃ!」
頼隆の姿を見つけた兵たちは皆、困惑した表情を見せ始める。
外河家の先代である頼隆が敵軍として彼らの前に現れたのであるから無理は無いであろう。
頼隆
「くっ、もう見つかってしまったか…これは少しばかりか骨を折ることになりそうじゃな…」
頼隆は、深刻な表情を見せていた。
そして次の瞬間、頼隆は手にした刀を大きくかざした後に兵たちに刃先を向けて声を上げる。
頼隆
「えぇい!元墨山国大名 外河頼隆のお通りじゃ!死にたくない者は下がっておれ!」
兵
「う、うぅぅぅ…拙者たちはどうすれば、どうすれば良いのじゃ…」
気迫ある頼隆の叫び声に外河軍の兵たちは、ますます戸惑いの色を見せていた。
すると、天守の方角から非常に通った声が聞こえ始める。
その声は、外河軍総大将 外河頼信のものであった。
頼信
「最早是非もなし!構わぬ!我が父、外河頼隆を今その場で討ち取ってしまうのじゃ!」
何と頼信は、自身の父である頼隆を討てと言っていた。
二人は「親子」という深い絆で結ばれた関係であるにも関わらずだ。
こうした不本意な決断を下さざるを得なかったとは言え、頼信の覚悟は相当なものであろう。
すると国輝が身を乗り出して頼信に対して言う。
国輝
「元主君であったとしても遠慮は無用というわけにございますな。では、我らもそのようにさせていただきますぞ!」
先刻前までは、志太・十部軍との戦いに対して頼信は二の足を踏んでいた。
そんな中、ようやく自身の肉親である頼隆を討ち取るべし、という決断を下したのである。
これで堂々と頼隆を亡き者にする事ができる。
そう考えた国輝は、にやりと不気味な笑みを浮かべていた。
そしてこの様子に国時は、困惑した表情を見せて口を開く。
国時
「それにしても、真に厄介なことになったのう…早いところ頼隆を討ってしまわねばな…」
一方、頼隆らは外河軍の兵たちとの戦いを繰り広げている。
目の前に立ち尽くす兵たちを次々となぎ倒した後に、頼隆が大声を上げる。
頼隆
「こうなった以上、頼信を我らが討たねばならぬ!じゃが、今はこの墨山城に味方の軍勢を引き入れることを考えよ!良いな?」
頼隆のその声は、天守にいる頼信の元にも届いていた。
頼信
「父上…頼信は、頼信は…真に残念にございますぞ…何故に、父上と戦わねばならぬのじゃ…」
頼隆による容赦のない言葉を聞いた事により、頼信は動揺し始めていた。
先程までは
「実の父であろうとも討ち取るべし」
などと威勢よく声を上げていた頼信ではあったが、今のこの瞬間にはまるで別人のように戦々恐々としている。
その様子を見た国輝が小さな声で一人呟く。
国輝
「ちっ、馬鹿息子めが怖気づきおって。かような奴を儂らが主君に仕立て上げたのがそもそもの間違いであったようじゃな…」
国輝は、面倒げな表情を見せていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
墨山事件
佐村孫千(サムラ マゴセン)
ミステリー
舞台は架空世界の現代。
とある地方で謎の集団失踪事件が発生。
それから四十数年の時が過ぎたが未だ真相解明には至っていない。
この未解決事件を解決すべく一人の若き探偵が立ち上がった...。
※
この物語は、ネットの都市伝説である「鮫島事件」をモチーフに作者が独自のオリジナル要素を加えて執筆した作品です。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる