架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
上 下
386 / 549
第8章 将軍への道程編

80.第二次墨山の戦い(20)

しおりを挟む
籠城戦が始まって数刻の時が過ぎた。
志太、十部軍は墨山城への侵入を行うべく城門の破壊に当たっている。
しかし墨山城の防御力は予想以上に堅く、未だに進展の様子が見られていない様子だ。

頼信
「どうじゃ?我が城の堅さ、思い知ったかのう?」

停滞している志太・十部軍の様子を見て頼信は自慢げな態度であった。
先程に見せた覇気のない表情とは全く別人の様子であった。

国輝
「はっ、流石は代々の外河様がお守りになられた城にございますな。」

頼信のその言葉を聞き、国輝もまた胸を張ってそう言っていた。

一方、進展無き戦況に志太・十部軍の陣営では義継が呟き始める。

義継
「くっ、外河の堅城とは真に良く申されたものじゃな…」

墨山城は墨山国やその周辺国からは堅城として知られている。
それ故に墨山城を攻めるとならば、多大な労力を費やさねば苦戦を強いられる事は間違い無い。
だが、そのような労力を注力するような国力を持った大名家は墨山国周辺には存在しなかった。
志太家という最も天下に近き存在の大名家が現れるまでは…
周辺各国が、外河家に対して今までに攻撃的な姿勢を殆ど見せなかった理由がそこにはあったからである。

そして祐宗らもまた、その事を充分に思い知らされた様子である。

祐宗
「やはり、我らが思うておる以上に墨山城は真に守りが堅いようにござるな…」

祐永
「ぐむう…どうやらこの戦、長引くことになりそうにございますな…」

墨山城の防御力が想像していたよりも遥かに高い事に対して祐宗らも非常に重々しい口調でそう言っていた。
先刻前までは、圧倒的な兵力差を前に外河軍が壊滅するのは時間の問題であろう。
志太・十部軍の将たちは皆がそう信じて疑わなかった。
しかし、その思いは見事に裏切られたのである。

そして、前線でなおも戦いを繰り広げている崇冬らも焦りの表情を見せ始めている。

崇冬
「もっと攻撃を加えるのじゃ!さすれば、さすれば…必ずや道は開ける!我らの意地を通し、何としてでも墨山城を落とすのじゃ!」

墨山城など、我らの軍勢で落としてみせようではないか。
そう大口をたたいた崇冬ではあったが、自身の思い通りにならない事に対して非常に苛立った様子を見せている。

康龍
「全く、何という堅固さなのじゃ。墨山城、恐るべし…」

康龍は、墨山城の前で外河軍を相手にあぐねいている自身の軍勢を見てそう言っていた。
これほどまでの兵力を費やしてでもびくともしない墨山城に対し、康龍は非常に恐れ入った様子である。

貞道
「この戦で墨山城を落とさねば、冥府におる義道殿に申し訳が立たぬわ!」

墨山城を陥落させて外河家を制圧する事が義道への供養となる故に、負けるわけにはいかない。
もし負け戦となろうものならば、命を犠牲にしてまでもして志太家の者たちを守り通した義道の努力は無駄であった事を意味するのだ。
今回の戦を義道の弔い合戦と考えていた貞道は、なおも決死の表情を見せている。

そうしてしばらくした後に、頼隆が政長の軍勢の様子に気付き始める。

頼隆
「むっ、政長殿の軍勢の様子が少し変わられたように見えるのう。」

どうやら政長は、これから何らかの動きを見せ始めるようである。

政長
「ううむ…正攻法では埒が明かぬ故、拙者が動かねばなるまいな…」

政長は、そう小さい声で呟いていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

処理中です...