架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第8章 将軍への道程編

78.第二次墨山の戦い(18)

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志太・十部軍と外河軍との籠城戦の戦況としては、両軍共に五分五分といったところである。
そうして数刻の時が経った後、十部軍の後方からもう一つの軍勢が現れた。
軍勢は墨山城に向かって一直線に進み、やがて城の手前に到着していた。

それは、東浦政長率いる軍勢であった。

★現在の戦況

志太軍(総兵数 19,000人)
志太軍
計 19,000人

外河軍(総兵数 9,500人)
外河軍
計 9,500人

十部軍(総兵数 7,000人)
十部家総大将「十部義継」
十部家軍師「三梅元光」
十部家家老「東浦政長」
計 7,000人




赤色→志太軍
青色→外河軍
緑色→十部軍

政長
「十部家 家老 東浦政長、遅ればせながら志太殿の軍勢に加勢すべく馳せ参じました!」

義継らの軍勢と合流した政長は、開口一番にそう言った。
政長の軍勢に対して義継が静かな口調で声をかける。

義継
「うむ、政長よ…よう来た。来てくれると信じておったぞ。」

義継は、安心したような表情を見せていた。
政長が参戦した事を知った崇冬らは、手を止めて政長の軍勢の方向を向いて口を開く。

崇冬
「あの東浦政景殿のご嫡男、東浦政長殿にござるか。これは面白いことになってきたのう。」

康龍
「東浦政長…頼隆殿からは噂は聞いておる。さてさて、どのような戦いを見せるのでござろうな。」

崇冬と康龍は、政長の戦いぶりについて期待に胸を膨らませている様子である。
そして頼隆が政長の軍勢に対して頭を下げながら言う。

頼隆
「政長殿よ、援軍として参られたことを真に感謝いたす!」

政長
「はっ、こたびは拙者の我儘において遅参したことをどうかお許しくださいませ。」

恐らく政長の中では、自身に不遇の生活を強いられた志太家に対して味方すべきか否かといった葛藤があったのであろう。
そうして結果的には志太家へ味方する事を決心したのではあったが、それまでに些か時間がかかり過ぎていたようだ。
政長は、今回の戦において遅れて援軍として出陣した事に対して詫びの言葉を入れていた。

一方、外河軍の陣営でも政長が援軍として参戦した事を知る事となった。

国輝
「なに?政長殿が志太軍の援軍に参ったじゃと?ふざけおってからに…」

この報告に国輝は、顔をしかめていた。
そして国時は、驚いた様子で声を上げる。

国時
「政長殿は、志太家に対して敵意を抱いておったはずであろう?何故に今になって姿を現したのじゃ?」

父であった政景が謀反に加担した罪に連座する形で、墨山国の辺境地へと志太家の手によって政長は追放されていた。
政長はその当時、元服には程遠いくらいの年端の行かぬ幼少期であったという。
そうした不遇の環境に政長を突き落とした志太家を憎まぬはずは無いであろう。
国時は、政長の起こした行動が理解できなかった。

すると頼信が冷静な表情をして言う。

頼信
「主君の命あらばやむ無し、であろう。致し方はござらぬことよのう。じゃが、我ら外河家の命には従わなかったがな…」

政長の主君である義継の意向であれば、それに従うは当然の事である。
御上の仰せられるままに、と言った封建社会での掟と言っても良いであろう。
だが、こと外河家と十部家との主従関係においてそれは例外であった事に対し、頼信は複雑な心境であった。

国輝
「えぇい!どこまで我ら外河家を馬鹿にすれば気が済むというのじゃ!」

国輝は険しい表情をして政長の軍勢に対してそう怒鳴り散らした。
これに対し政長は、淡々とした口調で答え始める。

政長
「外河家のご恩は忘れてはおりませぬ。しかし、近頃の外河家の横暴は目に余ります故、愛想を尽かしたとでも申しておきましょうか。」

さらに義継もここぞとばかりに続けて言う。

義継
「政長の申す通りじゃ。我ら十部家は、かような愚かな主君の元に仕えてまでも生き永らえるつもりは毛頭ござらんでな。」

十部家は、外河家による昨今の横暴を見たことで傘下に加わる事に対して疑問を感じ始めていた。
そのような愚かな君主の家臣になるなどまっぴらごめんである。
義継と政長らは、辛辣とも言える言葉を国輝に対して浴びせていた。

国輝
「もはや裏切り者には死、あるのみ!お前たちよ、もう遠慮はいらぬ!やってしまえ!」

国輝の目は大きく吊り上がっていた。
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