379 / 549
第8章 将軍への道程編
73.第二次墨山の戦い(13)
しおりを挟む
異常なまでに発達した積乱雲から発せられる雷は、何度も墨山城を直撃。
このままでは全軍が壊滅すると考えた国輝は、止む無く城からの再出撃を敢行。
志太軍との激闘を繰り広げていた。
しかし士気の乱れが著しい外河軍は、志太軍の勢いに次第に飲まれていった。
敗北は時間の問題かと諦めかけていたその時、墨山城の東側からこちらに向かって進軍している軍勢がいた。
軍勢の旗印を見た国時が声を上げる。
国時
「雲覗き月の旗印…十部殿の軍勢にございますぞ!」
・雲覗き月紋(くものぞきつきもん)
十部家の家紋。
墨山国の東側に位置する十部国も一年を通して不安定な天候で雲に覆われる日が多かった。
それ故に、現地では曇り空の中から時折覗く月がしばしば見られた事から、この情景を十部家の象徴として家紋に取り入れたと言われている。
康龍
「義継殿の軍勢とも刀を交えねばならぬというわけにござるか…」
崇冬
「ふむ、どうやら真に良きところでとんだ邪魔が入られたようじゃな…」
頼隆
「十部の兵たちか…これは厄介なことになりそうであるな…」
崇冬と信常の策によって外河軍を大混乱に陥れた。
そして、最後の大詰めとして全軍で総攻撃をかけて志太軍の勝利は間違いなしと読んでいた。
しかし十部義継率いる軍勢が援軍として登場した事により、その戦況は覆されるかもしれない。
志太軍の将たちは、さらに気を引き締めて戦いに挑む事を決意していた。
頼信
「十部殿による援軍か。かような時に参られるとはまさに天の助け、感謝いたすぞ!」
頼信は、窮地に立たされている自軍を救うべく立ち上がって援軍を出してくれた義継に対して感謝の言葉を発していた。
すると国輝は、傲慢な態度で義継に対して口を開く。
国輝
「おぉ、十部殿が墨山に参ったか!しかし、ちと遅過ぎはしまいか?」
国輝の策略により、十部家は外河家の傘下となった。
対等な立場であった同盟関係は、もう昔の話である。
主家である外河家の危機とあらば、すぐにでも援軍をよこすのが筋では無いのか。
どうやら国輝は、義継の遅すぎる対応にそうした不満を感じているような様子であった。
すると義継は頭を下げて声を上げる。
義継
「我ら十部軍の遅参、どうかお許しくださいませ!」
義継は、今回の戦いにおいて援軍としての到着が遅れた事に対して詫びの言葉を入れていた。
それを聞いた国輝は、義継に対して冷ややかな目線を向けながら言う。
国輝
「もうよい、それよりも早う我らと合流して共に志太の者どもと戦うのじゃ!良いな?」
国輝は、なおも傲慢な態度を見せている。
義継
「ははっ。それでは早速、我らの攻撃をお見舞いいたしましょう!」
そう言うと義継の軍勢が弓を構え始めた。
矢は外河軍の軍勢へと向けられている。
義継
「よし、皆の者よ準備は良いな。では、放てっ!」
義継の合図によって軍勢が一斉に矢を放った。
そうして放たれた矢は、たちまち外河軍の兵たちに降り注がれた。
国時
「な、何をいたす?義継殿よ、相手を間違えておられるぞ!」
突然の義継による攻撃を受けた国時は、慌てた様子であった。
そして義継をぎらりと睨みつけた国輝が声を上げる。
国輝
「こ、こら!貴様!これは一体、何の真似じゃ?答えよ!答えぬか!」
国輝による怒号が墨山城下に響き渡っていた。
義継は、険しい表情の国輝を睨み返して言う。
義継
「我ら十部家が戦う相手は志太家にあらず。真に戦うべき相手は国輝殿、そなたら外河軍にござる!」
義継は堂々たる態度であった。
このままでは全軍が壊滅すると考えた国輝は、止む無く城からの再出撃を敢行。
志太軍との激闘を繰り広げていた。
しかし士気の乱れが著しい外河軍は、志太軍の勢いに次第に飲まれていった。
敗北は時間の問題かと諦めかけていたその時、墨山城の東側からこちらに向かって進軍している軍勢がいた。
軍勢の旗印を見た国時が声を上げる。
国時
「雲覗き月の旗印…十部殿の軍勢にございますぞ!」
・雲覗き月紋(くものぞきつきもん)
十部家の家紋。
墨山国の東側に位置する十部国も一年を通して不安定な天候で雲に覆われる日が多かった。
それ故に、現地では曇り空の中から時折覗く月がしばしば見られた事から、この情景を十部家の象徴として家紋に取り入れたと言われている。
康龍
「義継殿の軍勢とも刀を交えねばならぬというわけにござるか…」
崇冬
「ふむ、どうやら真に良きところでとんだ邪魔が入られたようじゃな…」
頼隆
「十部の兵たちか…これは厄介なことになりそうであるな…」
崇冬と信常の策によって外河軍を大混乱に陥れた。
そして、最後の大詰めとして全軍で総攻撃をかけて志太軍の勝利は間違いなしと読んでいた。
しかし十部義継率いる軍勢が援軍として登場した事により、その戦況は覆されるかもしれない。
志太軍の将たちは、さらに気を引き締めて戦いに挑む事を決意していた。
頼信
「十部殿による援軍か。かような時に参られるとはまさに天の助け、感謝いたすぞ!」
頼信は、窮地に立たされている自軍を救うべく立ち上がって援軍を出してくれた義継に対して感謝の言葉を発していた。
すると国輝は、傲慢な態度で義継に対して口を開く。
国輝
「おぉ、十部殿が墨山に参ったか!しかし、ちと遅過ぎはしまいか?」
国輝の策略により、十部家は外河家の傘下となった。
対等な立場であった同盟関係は、もう昔の話である。
主家である外河家の危機とあらば、すぐにでも援軍をよこすのが筋では無いのか。
どうやら国輝は、義継の遅すぎる対応にそうした不満を感じているような様子であった。
すると義継は頭を下げて声を上げる。
義継
「我ら十部軍の遅参、どうかお許しくださいませ!」
義継は、今回の戦いにおいて援軍としての到着が遅れた事に対して詫びの言葉を入れていた。
それを聞いた国輝は、義継に対して冷ややかな目線を向けながら言う。
国輝
「もうよい、それよりも早う我らと合流して共に志太の者どもと戦うのじゃ!良いな?」
国輝は、なおも傲慢な態度を見せている。
義継
「ははっ。それでは早速、我らの攻撃をお見舞いいたしましょう!」
そう言うと義継の軍勢が弓を構え始めた。
矢は外河軍の軍勢へと向けられている。
義継
「よし、皆の者よ準備は良いな。では、放てっ!」
義継の合図によって軍勢が一斉に矢を放った。
そうして放たれた矢は、たちまち外河軍の兵たちに降り注がれた。
国時
「な、何をいたす?義継殿よ、相手を間違えておられるぞ!」
突然の義継による攻撃を受けた国時は、慌てた様子であった。
そして義継をぎらりと睨みつけた国輝が声を上げる。
国輝
「こ、こら!貴様!これは一体、何の真似じゃ?答えよ!答えぬか!」
国輝による怒号が墨山城下に響き渡っていた。
義継は、険しい表情の国輝を睨み返して言う。
義継
「我ら十部家が戦う相手は志太家にあらず。真に戦うべき相手は国輝殿、そなたら外河軍にござる!」
義継は堂々たる態度であった。
0
佐村孫千Webサイト
https://samuramagosen.themedia.jp/
https://samuramagosen.themedia.jp/
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~
Bonzaebon
ファンタジー
東方一の武芸の名門、流派梁山泊を破門・追放の憂き目にあった落ちこぼれのロアは行く当てのない旅に出た。 国境を越え異国へと足を踏み入れたある日、傷ついた男からあるものを託されることになる。 それは「勇者の額冠」だった。 突然、事情も呑み込めないまま、勇者になってしまったロアは竜帝討伐とそれを巡る陰謀に巻き込まれることになる。
『千年に一人の英雄だろうと、最強の魔物だろうと、俺の究極奥義の前には誰もがひれ伏する!』
※本作は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる