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第8章 将軍への道程編

70.第二次墨山の戦い(10)

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崇冬が率いる犬の軍勢の攻撃を受けた国輝と国時の軍勢は混乱状態となった。
軍勢の壊滅を恐れた国輝は、墨山城への退却を命令。
それを受けた外河軍の軍勢がぞろぞろと城内へと退却。

やがて全軍は墨山城内に入城していた。

国時
「沖国時が率いし軍勢、全て墨山城内へと戻りました!」

国輝
「うむ、儂もたった今戻ったところじゃ。」

頼信
「国輝殿に国時殿よ、よくぞ無事に戻られた。さて、これから籠城戦となろうか…」

共に城内へと無事に戻った国輝と国時の姿を見た頼信は安堵の表情を浮かべながらそう言った。
そして同時にこれから始まるであろう志太軍との籠城戦に対して不安な様子を見せていた。

すると国輝がはきはきとした態度を見せて答える。

国輝
「殿、この堅固な墨山城がある限り我が外河軍は負けませぬぞ!」

国輝は自身に満ちた表情であった。

一方、墨山城への退却が完了した事に対して貞道が口を開く。

貞道
「どうやら国輝殿と国時殿らの軍勢は全て城へ退却したようじゃな。」

そしてその様子を知った信常がここぞとばかりに声を上げる。

信常
「よし、ではいよいよ儂の発明品を披露いたそう。この機を逃してはならぬ!いくぞ!」

そう言うと兵たちが信常の前に集まり、何かを組み立て始めていた。
どうやら今回の発明品を使用する準備に入っているようであった。

そうしてしばらく経った後に組み立ては完了。
信常の前には大きな箱のような装置が姿を表していた。

信常
「よし、これで準備は整った!では…いくぞ!」

信常は組み立てられた装置をいじり始めた。
すると装置からは白いもやのような物が一斉に吹き始めていた。
そのもやは垂直に伸びていき、あっという間に上空の高さにまで達して墨山城を包む雨雲たちと合流した。

信常
「儂の発明は成功したようじゃな。間もなく奴らは国輝らの軍勢に牙をむくであろう。」

城内で頼信が空を眺めながら言う。

頼信
「それにしても、今日の墨山の天候は荒れに荒れておるのう…」

墨山の地は不安定な気候である故に、急な雨などに遭う事は日常茶飯事である。
頼信らを始めとする外河家の者たちがこうした天候が崩れる事に対しては、さほど気にした様子は見せなかった。
しかし、今の墨山周辺での天候はいつにも増して酷い崩れ様であると頼信は感じているようであった。

その言葉に国時が頷いて答える。

国時
「真にございますな。しかし、霧が我らの味方となった故に良き天候かと。」

確かに今回の天候の崩れの激しさは今までに無いものであった。
だが、この激しい天候の崩れによって外河家の形勢を逆転させた言わば恵みの雨ならぬ霧である。
国時は、この天候に感謝をしている様子だ。

上空の雨雲はやがて巨大な積乱雲となり、墨山城付近を包み始めた。
そしてみるみるうちに異常なほどにまで積乱雲は発達し、真っ黒な色へと変化。
墨山城内はたちまち真夜中のような暗さに包まれた。

その様子に気付いた国輝が大慌てで声を上げる。

国輝
「はっ!いっ、いかん!このままでは…」

国時
「国輝様?そんなにお慌てになられてどうなされたのでございますか?」

そんな国輝に対して国時が不思議そうな表情を見せて言った。

国輝
「ここにおってはいかん!お前たちよ、城から早う出るのじゃ!さもなくば…さもなくば…」

国輝はなおも慌てた様子で兵たちに対して叫び声を上げた。
全軍は、つい先程に入城したにも関わらず今度は城から出ろとの命令である。
これには兵たちも首を傾げている様子だ。

積乱雲に包まれた墨山城を見て信常が声を上げる。

信常
「もう遅い。自然の脅威を思い知るが良い!」

その直後、凄まじい轟音が墨山城内に鳴り響いた。
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