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第8章 将軍への道程編
69.第二次墨山の戦い(9)
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崇冬によって送り込まれた犬たちの軍勢は、国時の構える墨山城の南側へと移動。
犬たちは国時の軍勢を発見するやいなや飛びかかり、攻撃を始めていた。
国時
「ひっ!これはたまらん!このままでは我が軍勢は壊滅してしまうぞ!」
思わぬ援軍による攻撃を受けた事によって国時は焦りを感じていた。
国時の慌てふためいた声を聞いた康龍が声をかける。
康龍
「おやおや、どうやらお慌てのようにございますな。国時殿よ?」
康龍は、濃い霧が発生した事によって自身の軍勢が再び劣勢になる事を覚悟していた。
しかし、思いもよらぬ援軍によってその不安は取り去られたのだ。
そうした事もあってか、康龍は非常に安堵した表情を見せていた。
頼隆
「国時の兵たちは最早為す術もないか。口羽崇冬、真に良き策を考えられたものじゃな。」
康龍の近くに布陣していた頼隆もまた感心した様子であった。
一方、墨山城の北側では国輝の軍勢がなおも混乱状態にあった。
先刻の犬たちによって受けた攻撃の余韻が残っているようである。
得意気な表情を見せて崇冬が言う。
崇冬
「どうじゃ、国輝殿よ!我が軍の恐ろしさ、思い知ったか!」
たかが犬と甘く見ていた国輝ではあったが、凄まじい攻撃を受けた事によりその考えは間違っていたと思い始めていた。
しかし、今ごろ気付いたとてもう遅い。
判断を見誤った事を国輝は後悔しているようであった。
そうして悔しげな表情を見せながら軍勢に対して声を上げる。
国輝
「えぇい、ひとまず全軍城へと退却するのじゃ!お前たちよ、儂に続け!急げ!急ぐのじゃ!」
どうやら外河軍は、全軍が墨山城に戻って低下した士気を立て直すつもりである。
国輝による退却命令は、ほどなくして国時の軍勢の耳にも届く事となる。
国時
「国輝様より退却命令が下された。我らも城へ退却いたす。遅れるでないぞ!」
そう言うと国時たちの軍勢も急いで城内へとなだれ込むように退却を始めていた。
退却する軍勢を眺めながら国時が一人言う。
国時
「くそっ!かような小童を前に儂らが身を退くことになろうとは…真に不覚なり。」
突然の援軍による攻撃を受けた事による退却ではあったが、自身よりも随分年下である康龍に背を向ける事に対して国時は非常に悔しげな様子であった。
崇冬
「ほう、城に戻って籠城いたすとな。良き選択にござるな。」
一斉にして城内へと逃げ帰る国輝の軍勢の様子に対して崇冬はそう口にしていた。
士気も著しく低下し、混乱状態に陥った軍勢は裸同然の姿である。
そのような状態で敵軍と戦ったとて勝ち目は無いと言っても良いであろう。
この国輝の素早い判断は、賢明な選択であろうと崇冬は考えていた。
貞道
「どうやら城の外に出ておる外河軍を退けさせることができそうじゃのう。さて、籠城戦か…ここからが勝負にござるな…」
貞道は、野戦においては志太軍が勝利した事で非常に嬉しげな様子であった。
しかし、間もなく始まるであろう籠城戦に対しては、より一層気を引き締めて戦わねばならぬと感じていた。
外河軍の城内退却の情報は、墨山城から離れた軍勢の元にもやがて知れる事となった。
祐永
「どうやら崇冬殿が大活躍されたようにございますな。」
祐宗
「あやつもなかなか良き策を立てたものよの。それに、戦いぶりも見事であったわ。」
祐宗と祐永らは、外河軍を劣勢に追い込んだ崇冬に対して称賛の声を上げていた。
信常
「外河軍が全軍退却か…国輝殿に国時殿よ、お主らが城に戻った時こそが本当の地獄であるぞ…」
信常は、意味ありげな言葉を口にしていた。
犬たちは国時の軍勢を発見するやいなや飛びかかり、攻撃を始めていた。
国時
「ひっ!これはたまらん!このままでは我が軍勢は壊滅してしまうぞ!」
思わぬ援軍による攻撃を受けた事によって国時は焦りを感じていた。
国時の慌てふためいた声を聞いた康龍が声をかける。
康龍
「おやおや、どうやらお慌てのようにございますな。国時殿よ?」
康龍は、濃い霧が発生した事によって自身の軍勢が再び劣勢になる事を覚悟していた。
しかし、思いもよらぬ援軍によってその不安は取り去られたのだ。
そうした事もあってか、康龍は非常に安堵した表情を見せていた。
頼隆
「国時の兵たちは最早為す術もないか。口羽崇冬、真に良き策を考えられたものじゃな。」
康龍の近くに布陣していた頼隆もまた感心した様子であった。
一方、墨山城の北側では国輝の軍勢がなおも混乱状態にあった。
先刻の犬たちによって受けた攻撃の余韻が残っているようである。
得意気な表情を見せて崇冬が言う。
崇冬
「どうじゃ、国輝殿よ!我が軍の恐ろしさ、思い知ったか!」
たかが犬と甘く見ていた国輝ではあったが、凄まじい攻撃を受けた事によりその考えは間違っていたと思い始めていた。
しかし、今ごろ気付いたとてもう遅い。
判断を見誤った事を国輝は後悔しているようであった。
そうして悔しげな表情を見せながら軍勢に対して声を上げる。
国輝
「えぇい、ひとまず全軍城へと退却するのじゃ!お前たちよ、儂に続け!急げ!急ぐのじゃ!」
どうやら外河軍は、全軍が墨山城に戻って低下した士気を立て直すつもりである。
国輝による退却命令は、ほどなくして国時の軍勢の耳にも届く事となる。
国時
「国輝様より退却命令が下された。我らも城へ退却いたす。遅れるでないぞ!」
そう言うと国時たちの軍勢も急いで城内へとなだれ込むように退却を始めていた。
退却する軍勢を眺めながら国時が一人言う。
国時
「くそっ!かような小童を前に儂らが身を退くことになろうとは…真に不覚なり。」
突然の援軍による攻撃を受けた事による退却ではあったが、自身よりも随分年下である康龍に背を向ける事に対して国時は非常に悔しげな様子であった。
崇冬
「ほう、城に戻って籠城いたすとな。良き選択にござるな。」
一斉にして城内へと逃げ帰る国輝の軍勢の様子に対して崇冬はそう口にしていた。
士気も著しく低下し、混乱状態に陥った軍勢は裸同然の姿である。
そのような状態で敵軍と戦ったとて勝ち目は無いと言っても良いであろう。
この国輝の素早い判断は、賢明な選択であろうと崇冬は考えていた。
貞道
「どうやら城の外に出ておる外河軍を退けさせることができそうじゃのう。さて、籠城戦か…ここからが勝負にござるな…」
貞道は、野戦においては志太軍が勝利した事で非常に嬉しげな様子であった。
しかし、間もなく始まるであろう籠城戦に対しては、より一層気を引き締めて戦わねばならぬと感じていた。
外河軍の城内退却の情報は、墨山城から離れた軍勢の元にもやがて知れる事となった。
祐永
「どうやら崇冬殿が大活躍されたようにございますな。」
祐宗
「あやつもなかなか良き策を立てたものよの。それに、戦いぶりも見事であったわ。」
祐宗と祐永らは、外河軍を劣勢に追い込んだ崇冬に対して称賛の声を上げていた。
信常
「外河軍が全軍退却か…国輝殿に国時殿よ、お主らが城に戻った時こそが本当の地獄であるぞ…」
信常は、意味ありげな言葉を口にしていた。
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