架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第8章 将軍への道程編

60.満を持して

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それから三月ほどの時が過ぎた頃、八光御所には信常と崇冬の姿があった。
二人は興奮した様子で祐宗に対して言う。

信常
「祐宗様、ご依頼されていた発明品ですが、昨夜にようやく完成いたしましたぞ!」

祐宗
「おぉ、ついに完成したか!信常殿よ、真に大儀にござったな。」

先の墨山での戦いにおいて大敗を喫した志太家。
御所へと命からがらで逃げ帰った祐宗は、信常に対して主命を言い渡した。
来たるべき次の外河家との戦いで志太軍を有利に進める為の発明品の製作である。

その発明品が、やっと完成したというのだ。
信常の報告を聞いた祐宗の顔には笑みがこぼれ落ちていた。

続けて崇冬もまた興奮した様子で口を開く。

崇冬
「祐宗様、拙者も対外河軍への策の準備が整いましたぞ!」

祐宗
「おぉ、崇冬殿もか!二人共、真によくやってくれたものじゃ!礼を申すぞ!」

二人は同じ時期に任務を無事に完了したのである。
この事を知った祐宗は心が弾んだ様子を見せ始める。
まるで志太家の勝利を確信したかのような表情であった。

すると貞広が背筋をぴんと伸ばし、祐宗に対して声をかける。

貞広
「では、再び外河家と戦う準備はこれで全て整ったというわけにございますな。」

祐宗
「うむ、外河家との決着がようやくつきそうじゃな。もうすぐじゃ、もうすぐじゃぞ…」

それを聞いた信常と崇冬が身を乗り出しながら言う。

信常
「こたびの拙者の発明で泰平の世を呼び込むことを願うばかりにございます。」

崇冬
「祐宗様、次の戦こそは必ずや我らが勝利を収めて見せましょうぞ!」

二人は、なおも興奮冷めぬ様子であった。
すると祐宗はすくと立ち上がり、声を上げる。

祐宗
「よし、では軍議の支度をいたせ!外河家を攻めるは今ぞ!この機を逃してはならぬ!」

そうして次の日、御所には家臣たちが集まって軍議が開かれた。
祐宗は家臣たちの前に立ち、凛々しい表情をしている。

祐宗
「つい先日に信常殿の発明品が完成し、崇冬殿の策の準備も整った。これで外河家と戦う期は充分に熟した。皆の者よ、出陣の支度をいたすのじゃ!」

すると、家臣たちからはたちまち歓喜の声が上がり始める。

康龍
「義道殿の為にも次こそは外河家に負けるわけにはいきませぬな。」

祐永
「叔父御、必ずや仇を討ちます故、見ていてくだされ!」

貞道
「我が友である義道殿を奪った罪は重いぞ。国輝よ、首を洗って待っておれ!」

玄名
「どうやら国輝殿が報いを受ける時が近づいてきたようにございますかな。悪は滅びる運命である故、覚悟なされるが良い。」

家臣たちは皆、外河家との戦いに向けて思い思いの言葉を発していた。
そんな中、頼隆が水を差すように皆の前で言う。

頼隆
「しかし、国輝は真に侮れぬ男である故、油断は禁物にございますぞ…」

頼隆は、外河家を影で操りながら国力増強に注力している国輝の存在について言及し始めていた。
国内の警備強化や同盟国であった十部家を傘下に加えるなど、軍備の増強には抜かり無い国輝に対して脅威を感じている様子だ。

この一言によって家臣たちは次第に冷静になり始め、先程の活気に溢れた雰囲気とは打って変わって静まり返っていた。
そうしてしばらくした後、祐宗が静かに口を開く。

祐宗
「うむ、そうじゃな…先の戦ではあやつの策に翻弄された故、気を引き締めねばなるまい…」

祐宗は、神妙な顔つきをしていた。
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