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第8章 将軍への道程編
59.不発の帰還
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十部家との同盟交渉は決裂。
頼隆らは意気消沈したまま祐宗のいる八光御所へと戻ってきた。
頼隆・宗重
「我ら、十部国よりただ今戻りました…」
頼隆と宗重は二人して何やら気重な様子であった。
祐宗が二人に対して言う。
祐宗
「うむ、ご苦労であった。それにしても、よくぞ無事に戻られたものよ。して、義継殿の返事はいかがでござったのじゃ?」
祐宗のその問い掛けに頼隆は重々しい口調で答え始める。
頼隆
「ははっ。残念ながら…十部家は…当家と同盟を組むつもりは無いとの意向にございました…」
頼隆に続いて宗重も答える。
宗重
「どうやら…義継殿は…我らの言葉を聞く耳すら持たれぬようにございます…」
この二人の答えを聞いた祐宗は、残念そうな表情を浮かべ始める。
そして、その後に軽く頷きながら口を開く。
祐宗
「そうか、駄目にござったか…まぁ義継殿は外河家に睨まれておる故、同盟を組むなど元々無理な話であったのじゃろうかのう。」
現在の十部家は、国輝による強引な外交政策によって外河家の傘下に加えさせられている。
そのような状況下において他国が介入する事は、やはり難しかったのではなかろうか。
今回の外交政策の失敗は、起こるべくして起きたものであろうと祐宗は結論づけていた。
すると次の瞬間、頼隆が祐宗の前に額を擦り付けながら言う。
頼隆
「祐宗様、真に…真に申し訳ございませぬ…」
祐宗の前で十部家との同盟締結を必ず実現させると言い放ったが、結局は失敗に終わってしまった。
その事に対して責任を感じての行動であった。
すると祐宗は頼隆の肩を軽く叩き、静かな口調で言う。
祐宗
「頼隆殿よ、もう良い。顔を上げられよ。お主は真にようやってくれた。」
頼隆
「す、祐宗様…」
頼隆が顔を上げると祐宗は穏やかな表情をしていた。
祐宗
「それに、お主らが無事に戻って来られただけでも我は嬉しいぞ。大切な当家の家臣にござるからな。」
頼隆
「拙者のような役立たずの者に対してかようなお言葉をかけていただけるなど、真に勿体のうございます…」
頼隆は、今回の任務に失敗した事で祐宗から叱責を受けるは必定。
そして厳しい処断が下される…という事を覚悟していたようである。
しかし、祐宗は頼隆らを責める事は一切しなかった。
それどころか頼隆らの身を案じており、無事であった事を知った途端に安堵の表情を浮かべていたという。
そうした祐宗の慈悲深い対応に心を打たれた頼隆は、目からこぼれた大粒の涙が頬全体を濡らしたのであった。
しばらくした後に頼隆は涙を拭い、祐宗に対して言う。
頼隆
「悪あがきかも知れませぬが実は、同盟の交渉が決裂した後も義継殿に対して拙者は念を押して申したことがございます。」
頼隆は、十部家との同盟交渉が決裂した後に幾つかの事を義継に対して忠告をしたと祐宗に伝えていた。
祐宗
「ほう、そのようなことがあったのか。して、その効果はござるのか?」
祐宗は、頼隆の言った事に対して興味深い態度を示していた。
頼隆
「はい。もしかすれば、外河家と再び戦になった際に義継殿が何らかの心変わりをするやも知れませぬ。」
この忠告が聞き入れられるという確証は無いが、僅かな可能性に賭けたいと頼隆は言っていた。
祐宗
「なるほど、全ては義継殿次第というわけじゃな。なに、必ずや上手くいくであろう。今はそう思うしかござらぬ。そう思うしか、な…」
祐宗は、不安と期待が入り混じったような様子であった。
頼隆らは意気消沈したまま祐宗のいる八光御所へと戻ってきた。
頼隆・宗重
「我ら、十部国よりただ今戻りました…」
頼隆と宗重は二人して何やら気重な様子であった。
祐宗が二人に対して言う。
祐宗
「うむ、ご苦労であった。それにしても、よくぞ無事に戻られたものよ。して、義継殿の返事はいかがでござったのじゃ?」
祐宗のその問い掛けに頼隆は重々しい口調で答え始める。
頼隆
「ははっ。残念ながら…十部家は…当家と同盟を組むつもりは無いとの意向にございました…」
頼隆に続いて宗重も答える。
宗重
「どうやら…義継殿は…我らの言葉を聞く耳すら持たれぬようにございます…」
この二人の答えを聞いた祐宗は、残念そうな表情を浮かべ始める。
そして、その後に軽く頷きながら口を開く。
祐宗
「そうか、駄目にござったか…まぁ義継殿は外河家に睨まれておる故、同盟を組むなど元々無理な話であったのじゃろうかのう。」
現在の十部家は、国輝による強引な外交政策によって外河家の傘下に加えさせられている。
そのような状況下において他国が介入する事は、やはり難しかったのではなかろうか。
今回の外交政策の失敗は、起こるべくして起きたものであろうと祐宗は結論づけていた。
すると次の瞬間、頼隆が祐宗の前に額を擦り付けながら言う。
頼隆
「祐宗様、真に…真に申し訳ございませぬ…」
祐宗の前で十部家との同盟締結を必ず実現させると言い放ったが、結局は失敗に終わってしまった。
その事に対して責任を感じての行動であった。
すると祐宗は頼隆の肩を軽く叩き、静かな口調で言う。
祐宗
「頼隆殿よ、もう良い。顔を上げられよ。お主は真にようやってくれた。」
頼隆
「す、祐宗様…」
頼隆が顔を上げると祐宗は穏やかな表情をしていた。
祐宗
「それに、お主らが無事に戻って来られただけでも我は嬉しいぞ。大切な当家の家臣にござるからな。」
頼隆
「拙者のような役立たずの者に対してかようなお言葉をかけていただけるなど、真に勿体のうございます…」
頼隆は、今回の任務に失敗した事で祐宗から叱責を受けるは必定。
そして厳しい処断が下される…という事を覚悟していたようである。
しかし、祐宗は頼隆らを責める事は一切しなかった。
それどころか頼隆らの身を案じており、無事であった事を知った途端に安堵の表情を浮かべていたという。
そうした祐宗の慈悲深い対応に心を打たれた頼隆は、目からこぼれた大粒の涙が頬全体を濡らしたのであった。
しばらくした後に頼隆は涙を拭い、祐宗に対して言う。
頼隆
「悪あがきかも知れませぬが実は、同盟の交渉が決裂した後も義継殿に対して拙者は念を押して申したことがございます。」
頼隆は、十部家との同盟交渉が決裂した後に幾つかの事を義継に対して忠告をしたと祐宗に伝えていた。
祐宗
「ほう、そのようなことがあったのか。して、その効果はござるのか?」
祐宗は、頼隆の言った事に対して興味深い態度を示していた。
頼隆
「はい。もしかすれば、外河家と再び戦になった際に義継殿が何らかの心変わりをするやも知れませぬ。」
この忠告が聞き入れられるという確証は無いが、僅かな可能性に賭けたいと頼隆は言っていた。
祐宗
「なるほど、全ては義継殿次第というわけじゃな。なに、必ずや上手くいくであろう。今はそう思うしかござらぬ。そう思うしか、な…」
祐宗は、不安と期待が入り混じったような様子であった。
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