架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第8章 将軍への道程編

54.三人の脅威

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頼隆が志太家に仕官した理由は、国輝によって大きく歪曲されて外河家に知れ渡った。
この情報はやがて、墨山の領民たちにまでも伝わる事となった。

そしてそれから数週間が経ち、さらに志太家の領内にもその情報が噂として入ってきたようである。
この事を受け、志太家では家臣たちが祐宗の元に集まっていた。

頼隆
「それにしても国輝の奴め、好き勝手なことを吹聴しおってからに…」

頼隆は国輝による虚報を墨山国全土に吹聴して回った事に対して激しい怒りを覚えていた。
そんな様子を見た祐宗が声をかける。

祐宗
「頼隆殿よ、我ら家中の者たちはお主のことを良く周知しておる。これだけでも充分では無いか。」

今の頼隆の周りにいる者たちは皆がその真実を知っている。
それ故、この志太家では堂々と胸を張っていれば良いのだ。
祐宗は頼隆に対してそう慰めるように言っていた。

康龍
「松永国輝…それにしても真に卑怯極まりなき男にございますな…」

卑劣な手段を用いて頼隆を貶めようとする国輝に対し、康龍は嫌悪感を覚えている様子だ。

玄名
「盟友である十部家に対してかような仕打ちは許されるものではございません。必ずや国輝殿には天罰が下り、地獄へ堕ちることとなりましょう。」

僧である玄名は、国輝の悪行について痛烈に批判。
人道に背く行為を躊躇なく繰り返す者には天罰が下るとまで述べていた。

そして祐宗は、国輝の起こした一連の行動に対して分析を始めていた。

祐宗
「外河家は我らに対抗いたそうと必死なのじゃろう。挙句の果てに同盟相手を脅迫までもして国力の増強を図っておるのじゃからな。」

志太家という大勢力と対等にやり合う為には国力を少しでも上げなければいけない。
それ故に国輝は隣国の併合を行うなど、あらゆる手を尽くさねば志太家には勝てないと感じているのであろう。
国を守る為。否、自身を守る為に国輝は必死なのだ、と。

そうしてしばらくした後、祐宗は首を傾げて頼隆に対して言う。

祐宗
「しかし、たった二つほどの国が集まったところで我らに勝負を挑んだとしても勝機はござらんのでは無いか?」

今や志太家は創天国のほぼ全土を領土とする天下に近き存在である。
そのような大勢力に対して戦を仕掛けたとて、勝ち目は無いであろう。
この問い掛けに頼隆がすかさず首を振って答える。

頼隆
「いえ、とんでもございません。特に十部家を国輝が取り込んだことで我らも苦戦を強いられることとなりましょう…」

祐宗
「ほう、それは何故にござるか?」

頼隆
「十部家には優れた家臣がおります。外河家の者たちも恐れるほどの家臣にございます。」

すると祐宗は何かを思い出したかのように口を開く。

祐宗
「むっ、優れた家臣と申すと…確か東浦殿の嫡男、政長殿といったか。その者のことか?」

祐宗は東浦政景の存在については知っているようであった。
そして政長の父 政景は、志太家の元家臣で築城など建築技術に長けた人物であったという事も当然ながら周知している。
こうした父の才能を受け継いでいるであろう政長の存在がある故、厄介なのであろうかと祐宗は考えているようであった。

すると頼隆は深く頷いた後に答える。

頼隆
「確かに祐宗様の申される通り、政長殿はかなりの実力者です。しかし、十部家には松竹梅三人衆と呼ばれる者たちが一番厄介にございます…」

・松竹梅三人衆(しょうちくばいさんにんしゅう)
三松(さんまつ)・三竹(みたけ)・三梅(さんばい)の三家の武将たちの事を指す。
それぞれは「智の三松」「政の三竹」「武の三梅」と呼ばれ、代々の当主が十部家の中枢を担っているという。
この三家は十部景継の子それぞれが改姓した事が始まりであるとされている。

・三松 利昌(さんまつ としまさ)
現三松家当主。
祖は景継の次男である利継(としつぐ)
三松家は智に長けた家柄であり、代々が外交業務に携わっていたという。
現代で活躍している創天国外交官の三松 利恵(さんまつ としえ)は彼の子孫とされている。

・三竹 盛兼(みたけ もりかね)
現三竹家当主。
祖は景継の三男である盛継(もりつぐ)
三竹家は政に長けた家柄であり、代々が政務に携わっていたという。
そうした事もあってか、後の子孫は近代から現代にかけて多数の議員を輩出している。

・三梅 元光(さんばい もとみつ)
現三梅家当主。
祖は景継の四男である元継(もとつぐ)
三梅家は武に長けた家柄であり、代々が軍師として十部家に仕えていたという。
子孫には、幕末の時代に政府軍と壮絶な戦いを繰り広げた三梅 元昭(さんばい もとあき)がいる。

祐宗
「何と!十部家にはかような者たちが構えておると申すか。うぬぬ…確かに厄介にござるな…」

この松竹梅三人衆という新たな人物の存在を知った祐宗は驚き、そして頭を悩ませ始めていた。
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