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第8章 将軍への道程編
40.墨山の戦い(8)
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祐宗は全軍出撃を命じ、国輝らの軍勢に対して攻撃を開始しようとしていた。
志太軍による総攻撃を受ければ外河軍の壊滅はほぼ間違い無いであろう。
しかし、ここで思わぬ事態が起きる。
志太軍の全部隊が墨山城を取り囲んだ頃、突如として巨大な霧が発生。
その霧は瞬く間に志太軍、外河軍の両軍の軍勢を深く包み込んだ。
一寸先も見えぬ程の濃い霧の中に包まれた志太軍は、その場に留まる他に無かった。
その時である。
大量の矢と鉄砲玉が志太軍を目掛けて一斉に放たれた。
この突然の出来事に、志太軍の将たちは驚きの表情を見せ始める。
崇冬
「ぐっ…この濃い霧の中というのに奴らは何故にこちらの動きが掴めておるというのじゃ!」
すると国輝が笑いながら答える。
国輝
「ふふふ…それはな、信栄斎殿の開発した道具【霧眼鏡】のおかげじゃ!」
国輝は自慢げな表情をし、その道具を手に持っていた。
・霧眼鏡(むげんきょう)
墨山国の信栄斎が開発した道具。
その名の通り眼鏡の形をしており、霧や闇夜のような視界の悪い場所でもくっきりと周りを見渡せる事が出来る。
現代で言えば「暗視ゴーグル」のような機能を備えていたと言われている。
康龍
「信栄斎…墨山の一介殿が申しておったあの男のことにござるか!」
康龍は以前、墨山国に潜入した際に出会った一介という男から信栄斎に関する情報を得ていた。
信栄斎は多彩な才能の持ち主であり、その墨山国の発展に大きく貢献していたと聞いていた。
すると国輝は感心した様子で答える。
国輝
「ほう、信栄斎殿を知っておる者が志太家にもいたとはな。あの男は墨山一、いや創天一の才覚の持ち主ぞ。まだ知らぬ者は覚えておくが良い!」
祐宗
「信栄斎か…真に、なかなかの男よの…」
祐宗は信栄斎の底知れぬ才能に対して言葉を失いつつあった。
そして国輝は顔を引き締めて軍勢に対して大声を上げる。
国輝
「さぁて、このまま祐宗の本隊に総攻撃をかけるとするかね。お前たち、かかれっ!」
国時
「祐宗殿、お覚悟を!」
国輝と国時の軍勢は、志太軍に対して一斉攻撃を開始。
依然として霧の中にいる志太軍は身動きを取れずにいた。
その為、外河軍の攻撃をただただ一方的に受けるしか無い状況である。
この様子に祐永は慌てふためき、祐宗に対して声をかける。
祐永
「国輝らの狙いは兄者のお命にございます故、一刻も早くこの場を離脱しましょうぞ!」
祐宗
「うむ、分かってはおる。じゃが、この霧の中ではな…」
最早ここまで形勢が逆転したとならば退却するしか道は無い。
しかし濃い霧に包まれている事もあり、退却を試みたとて果たしてそれが成功する保証はどこにも無い。
さらに外河軍は、霧眼鏡によって志太軍の動きは手に取るように分かっている状況だ。
そのような状況で退却するなど、無駄な行為であるとも言えよう。
やがて国輝が下品な笑い声を上げながら志太軍に対して言う。
国輝
「ふははははは!貴様らを全員、地獄へと送り届けてくれるわ!」
国輝は全軍で志太軍に向けての突撃を開始しようとしていた。
義道
「万事休す、か…」
外河軍の様子に義道は覚悟を決めた様子であった。
すると、墨山城の西側の方角から突如として太鼓の音が聞こえてきた。
音の先には太鼓を持ち、勢い良く音を鳴らす義秀(頼隆)の姿があった。
太鼓の音は等間隔で鳴り響き、しばらくして鳴り止んだ。
義秀(頼隆)
「祐宗様!ここは拙者が案内いたします!この太鼓の鳴る方に向けて一気にお進みくだされ!」
頼隆は手にした太鼓を再び鳴らし始めていた。
志太軍による総攻撃を受ければ外河軍の壊滅はほぼ間違い無いであろう。
しかし、ここで思わぬ事態が起きる。
志太軍の全部隊が墨山城を取り囲んだ頃、突如として巨大な霧が発生。
その霧は瞬く間に志太軍、外河軍の両軍の軍勢を深く包み込んだ。
一寸先も見えぬ程の濃い霧の中に包まれた志太軍は、その場に留まる他に無かった。
その時である。
大量の矢と鉄砲玉が志太軍を目掛けて一斉に放たれた。
この突然の出来事に、志太軍の将たちは驚きの表情を見せ始める。
崇冬
「ぐっ…この濃い霧の中というのに奴らは何故にこちらの動きが掴めておるというのじゃ!」
すると国輝が笑いながら答える。
国輝
「ふふふ…それはな、信栄斎殿の開発した道具【霧眼鏡】のおかげじゃ!」
国輝は自慢げな表情をし、その道具を手に持っていた。
・霧眼鏡(むげんきょう)
墨山国の信栄斎が開発した道具。
その名の通り眼鏡の形をしており、霧や闇夜のような視界の悪い場所でもくっきりと周りを見渡せる事が出来る。
現代で言えば「暗視ゴーグル」のような機能を備えていたと言われている。
康龍
「信栄斎…墨山の一介殿が申しておったあの男のことにござるか!」
康龍は以前、墨山国に潜入した際に出会った一介という男から信栄斎に関する情報を得ていた。
信栄斎は多彩な才能の持ち主であり、その墨山国の発展に大きく貢献していたと聞いていた。
すると国輝は感心した様子で答える。
国輝
「ほう、信栄斎殿を知っておる者が志太家にもいたとはな。あの男は墨山一、いや創天一の才覚の持ち主ぞ。まだ知らぬ者は覚えておくが良い!」
祐宗
「信栄斎か…真に、なかなかの男よの…」
祐宗は信栄斎の底知れぬ才能に対して言葉を失いつつあった。
そして国輝は顔を引き締めて軍勢に対して大声を上げる。
国輝
「さぁて、このまま祐宗の本隊に総攻撃をかけるとするかね。お前たち、かかれっ!」
国時
「祐宗殿、お覚悟を!」
国輝と国時の軍勢は、志太軍に対して一斉攻撃を開始。
依然として霧の中にいる志太軍は身動きを取れずにいた。
その為、外河軍の攻撃をただただ一方的に受けるしか無い状況である。
この様子に祐永は慌てふためき、祐宗に対して声をかける。
祐永
「国輝らの狙いは兄者のお命にございます故、一刻も早くこの場を離脱しましょうぞ!」
祐宗
「うむ、分かってはおる。じゃが、この霧の中ではな…」
最早ここまで形勢が逆転したとならば退却するしか道は無い。
しかし濃い霧に包まれている事もあり、退却を試みたとて果たしてそれが成功する保証はどこにも無い。
さらに外河軍は、霧眼鏡によって志太軍の動きは手に取るように分かっている状況だ。
そのような状況で退却するなど、無駄な行為であるとも言えよう。
やがて国輝が下品な笑い声を上げながら志太軍に対して言う。
国輝
「ふははははは!貴様らを全員、地獄へと送り届けてくれるわ!」
国輝は全軍で志太軍に向けての突撃を開始しようとしていた。
義道
「万事休す、か…」
外河軍の様子に義道は覚悟を決めた様子であった。
すると、墨山城の西側の方角から突如として太鼓の音が聞こえてきた。
音の先には太鼓を持ち、勢い良く音を鳴らす義秀(頼隆)の姿があった。
太鼓の音は等間隔で鳴り響き、しばらくして鳴り止んだ。
義秀(頼隆)
「祐宗様!ここは拙者が案内いたします!この太鼓の鳴る方に向けて一気にお進みくだされ!」
頼隆は手にした太鼓を再び鳴らし始めていた。
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