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第8章 将軍への道程編

39.墨山の戦い(7)

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崇冬の軍勢が優勢である事を受け、志太軍は全軍出撃を開始した。
全兵力を外河軍にぶつけて一気にねじ伏せてしまおうという狙いである。

やがて出撃した軍勢は、前線で戦う軍勢と合流。
そうして全ての軍勢が外河軍と接触。
たちまち戦闘状態となった。
終始外河軍との戦闘を行っていた崇冬と康龍にとってこの増援は、非常に心強いものとなったであろう。

国輝が上を向きながら何度も呪文を唱えるかのごとく呟き始める。

国輝
「もうじきじゃ…もうじきじゃ…もうじきじゃ…もうじきじゃぞ…もうじきじゃ…」

国輝の視線は、墨山の空を向いていた。
墨山周辺の天候は曇り始めており、霧もあちらこちらで発生し始めていた。

祐宗
「むっ…霧が出てきおったようじゃな…」

祐宗は霧が辺りに出始めていた事を真っ先に察知し、心配げな表情を浮かべている。

祐永
「これが墨山の地と呼ばれる所以の霧か…かような時で無ければ真に風流なのじゃがな…」

祐永は、霧に包まれた事によって薄っすらとその姿を覗かせる墨山城を見てそう呟いていた。

義道
「見通しが悪くなってきたのう…ここは一旦、留まった方が良いかも知れぬな。」

義道は霧に包まれた自身の軍勢をその場に留まらせる事を検討。
霧の中で無闇に動いて自軍を見失い、気が付いた時には既に窮地に陥っていた、となる事を危惧している様子だ。

玄名
「真に美しき景色であるな。敵も味方も関係無く、かような感動を共に分かち合える日が来ることを私は望んでいます…」

玄名もまた祐永と同様に、立ち込める霧の中から浮かび上がる墨山城の美しさに圧倒されている様子だ。
そして、こうした感動を皆で分かち合えるような争い無き「泰平の世」を一日も早く訪れる事を切に願っていた。

義秀(頼隆)
「霧、か…まぁ墨山では良くある事じゃが…よりによってこの戦の最中にとはのう…」

頼隆は自国の主という事もあり、このような天候は見慣れた光景であった。
しかし自軍が優勢で絶好の機という事もあり、この霧が後の戦に影響しないかを頼隆は案じていた。

康龍
「国時の軍勢が霞んできておる…なんということじゃ!敵軍を見失ってしまうぞ!」

崇冬
「くっ、かような時に限って霧じゃと?これでは思うように攻められぬでは無いか…」

前線で外河軍と戦っている崇冬と康龍らは、目の前に広がる霧に対して苛立った表情であった。

そうしていると霧はみるみるうちに濃くなっていき、両軍をさらに深く包み込んでいった。
すると国輝が全軍に対して大声を上げる。

国輝
「よし、そろそろじゃな。全軍に告ぐ!直ちに新栄斎殿の道具を用意せよ!良いな?!」

国輝のその一声により、外河軍の兵たちが動き出す。
どうやらここで信栄斎が開発したと言う道具を使うようである。

その道具を使う為の準備は瞬く間に終わった。
全ての兵たちの準備が完了した事を確認した国輝が合図の声を上げる。

国輝
「天は我に味方せり!行けっ!」

国輝の合図により、外河軍は志太軍に対して弓と鉄砲の一声発射を開始。
放たれた矢と鉄砲玉は霧の中を迷う事無く突き進み、志太軍に降り注いだ。

崇冬
「なっ…この霧の中で不意打ちじゃと?!」

康龍
「まさか…かような時に敵襲じゃというのか?!」

この突然とも言える外河軍の一方的な攻撃に対し、崇冬や康龍らは混乱した様子であった。

国輝
「ふははははは!我が軍の反撃の始まりじゃ!覚悟して参れよ!」

祐永
「何じゃと…互いは霧の中というのに何故奴らは拙者らの場所が分かるのじゃ?」

祐永は、この濃い霧が立ち込める中において志太軍に対して正確に攻撃を行える外河軍に疑問を感じている様子だ。
すると祐宗が何かを理解した様子で言う。

祐宗
「どうやら外河家には相当な切れ者がおるようじゃな…」

祐宗は苦い表情を浮かべていた。
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