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第8章 将軍への道程編
23.依頼
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源五郎が頼隆に成り代わってから数日が経った。
その日は、源五郎の命により信栄斎を墨山城へ呼び出していた。
信栄斎は墨山国において様々な知恵と技術を提供し、国力の増強に貢献している人物である。
信栄斎
「信栄斎、ただ今参りました。」
信栄斎は源五郎の前で跪いてそう言った。
すると源五郎が信栄斎に対して声をかける。
源五郎
「うむ、ご苦労にござる。早速じゃが、お主に頼みたいことがござってな。」
信栄斎
「ははっ、それはどのようなものにございましょうか?」
源五郎
「来たるべき志太家との戦いに備えて役立つ物をお主に造ってもらいたくてな。こういう物なのじゃが…」
そう言うと源五郎は手にしていた一本の巻物を広げた。
そこには、今回の源五郎に依頼する道具の内容がびっしりと記されていた。
現代で言うところの「設計書」のような物とでも言っておこうか。
その内容を見た信栄斎が戸惑った表情を見せながら言う。
信栄斎
「む…戦の為の道具、と申されましたか…」
源五郎
「うむ?信栄斎殿よ、そう申したのであるが。どうしたというのじゃ?」
源五郎の問いかけに対して信栄斎は黙り込み、次第に躊躇いの表情を見せ始める。
そうしてしばらくした後に信栄斎が口を開く。
信栄斎
「私は、民たちの暮らしが豊かになる為の道具や知恵をこれまで世に出して参りました。しかし、人を殺め合う戦の為にそうした物を造り出すこととなれば…」
どうやら信栄斎は、自身が造り出した道具が戦に使われるという事に抵抗を感じているようである。
間接的とは言え、それが人を殺める事に結果的には繋がっている。
そうした事を考えると、今回の源五郎による依頼を引き受けて果たして良いものなのであろうか、と信栄斎は考えていた。
すると源五郎は信栄斎の肩を軽く叩きながら言う。
源五郎
「確かに戦は多くの人を殺めるものである。じゃが信栄斎殿よ、これは墨山国の領民たちの為には仕方の無きことなのじゃ。」
戦は多くの者たちが犠牲になるであろう。
しかし、その犠牲無くしては墨山国の平和は成り立たないのだ。
戦争をあくまでも正当化するような内容ではあるが、これも自国の為に必要であると半ば強引に源五郎は説いていた。
そんな源五郎に続いて国輝も口を開く。
国輝
「頼隆様は、墨山に住まう者たち皆のことをお考えになられておるのじゃ。我らの国は我らが守らずして一体誰が守ってくれるというのじゃ?」
自国の平和と安全を守る為には時として武力を使わなければならぬ時が必ず来るであろう。
その時が今まさに刻一刻と迫りつつあるのだ、という事を源五郎に対して説いていた。
やがて源五郎は覚悟を決めた表情をし始める。
源五郎
「どのような手を使ってでも民たちを守り通さねばならぬ。そしてそれは正義とも言えよう。我はこの正義を貫き通すまでよ!」
源五郎は言った。
この戦いには外河家としての正義がある、と。
そして志太家と戦い、勝利を収める事によりその正義を貫くのだ、と。
信栄斎
「頼隆様…」
信栄斎はうつむき、少し間を置いた後に顔を上げて言う。
信栄斎
「分かりました…頼隆様の仰せられる正義の為に私も協力させていただきましょう。」
どうやら信栄斎は源五郎と国輝の言葉に納得したようである。
源五郎
「うむ、分かってくれたか。それでは、よろしく頼んだぞよ。」
源五郎は信栄斎の手をがっしりと握ってそう言った。
その日は、源五郎の命により信栄斎を墨山城へ呼び出していた。
信栄斎は墨山国において様々な知恵と技術を提供し、国力の増強に貢献している人物である。
信栄斎
「信栄斎、ただ今参りました。」
信栄斎は源五郎の前で跪いてそう言った。
すると源五郎が信栄斎に対して声をかける。
源五郎
「うむ、ご苦労にござる。早速じゃが、お主に頼みたいことがござってな。」
信栄斎
「ははっ、それはどのようなものにございましょうか?」
源五郎
「来たるべき志太家との戦いに備えて役立つ物をお主に造ってもらいたくてな。こういう物なのじゃが…」
そう言うと源五郎は手にしていた一本の巻物を広げた。
そこには、今回の源五郎に依頼する道具の内容がびっしりと記されていた。
現代で言うところの「設計書」のような物とでも言っておこうか。
その内容を見た信栄斎が戸惑った表情を見せながら言う。
信栄斎
「む…戦の為の道具、と申されましたか…」
源五郎
「うむ?信栄斎殿よ、そう申したのであるが。どうしたというのじゃ?」
源五郎の問いかけに対して信栄斎は黙り込み、次第に躊躇いの表情を見せ始める。
そうしてしばらくした後に信栄斎が口を開く。
信栄斎
「私は、民たちの暮らしが豊かになる為の道具や知恵をこれまで世に出して参りました。しかし、人を殺め合う戦の為にそうした物を造り出すこととなれば…」
どうやら信栄斎は、自身が造り出した道具が戦に使われるという事に抵抗を感じているようである。
間接的とは言え、それが人を殺める事に結果的には繋がっている。
そうした事を考えると、今回の源五郎による依頼を引き受けて果たして良いものなのであろうか、と信栄斎は考えていた。
すると源五郎は信栄斎の肩を軽く叩きながら言う。
源五郎
「確かに戦は多くの人を殺めるものである。じゃが信栄斎殿よ、これは墨山国の領民たちの為には仕方の無きことなのじゃ。」
戦は多くの者たちが犠牲になるであろう。
しかし、その犠牲無くしては墨山国の平和は成り立たないのだ。
戦争をあくまでも正当化するような内容ではあるが、これも自国の為に必要であると半ば強引に源五郎は説いていた。
そんな源五郎に続いて国輝も口を開く。
国輝
「頼隆様は、墨山に住まう者たち皆のことをお考えになられておるのじゃ。我らの国は我らが守らずして一体誰が守ってくれるというのじゃ?」
自国の平和と安全を守る為には時として武力を使わなければならぬ時が必ず来るであろう。
その時が今まさに刻一刻と迫りつつあるのだ、という事を源五郎に対して説いていた。
やがて源五郎は覚悟を決めた表情をし始める。
源五郎
「どのような手を使ってでも民たちを守り通さねばならぬ。そしてそれは正義とも言えよう。我はこの正義を貫き通すまでよ!」
源五郎は言った。
この戦いには外河家としての正義がある、と。
そして志太家と戦い、勝利を収める事によりその正義を貫くのだ、と。
信栄斎
「頼隆様…」
信栄斎はうつむき、少し間を置いた後に顔を上げて言う。
信栄斎
「分かりました…頼隆様の仰せられる正義の為に私も協力させていただきましょう。」
どうやら信栄斎は源五郎と国輝の言葉に納得したようである。
源五郎
「うむ、分かってくれたか。それでは、よろしく頼んだぞよ。」
源五郎は信栄斎の手をがっしりと握ってそう言った。
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