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第8章 将軍への道程編

21.危機

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頼隆は国輝と国時を連れ、志太家の八光御所を目指していた。
しかし、その道中において国輝の態度は豹変。
国輝は自身が野党を束ねていた頃に仕わせていた部下たちを使い、頼隆の襲撃を命令していた。

国輝らが始めから自身の命を狙っていたという事を悟った頼隆が問いかける。

頼隆
「我を、我を殺してどうするつもりじゃ?」

国輝がすかさず答える。

国輝
「言うまでも無い、志太家を完膚無きまで叩きのめして墨山国を奴らに認めさせるのよ。」

国輝は志太家と徹底的に戦って勝利する事によって墨山国の強さを知らしめようと言っていた。
そうする事で墨山国は幕府から独立した政権を維持させる事を認めさせる。
その後は外河家を乗っ取り、独裁体制を築こうという目論見である。
どうやら国輝は私利私欲むき出しの世界を実現させようとしているようだ。

すると頼隆が冷ややかな目を国輝に向けながら口を開く。

頼隆
「しかし、我を討てばお主らは謀叛者の汚名を一生着せられようぞ。それ相応の報いを受けることは承知の上か?」

今この場で国輝らが頼隆を討てば、当然その死を家臣や領民たちに説明せねばならぬ。
その際に不慮の事故死だと偽ったとしても、疑いの目は少なからず国輝らに向けられると言っても良い。
そうしていずれは真実があらわになる時が必ず訪れるであろう…

悪行は必ず露見する故、それなりの覚悟はしているつもりなのか。
頼隆は国輝らに対してそう問いかけていた。

しかし、今の国輝らにはそのような言葉を聞いてもどこ吹く風であった。
そして国輝は後ろを振り向いて言う。

国輝
「なあに、心配には及ばぬ。おい、お前。顔を見せてやれ!」

国輝の振り向いた先には一人の男が立っていた。
男の顔は頭巾で覆われている。
そして次の瞬間に男は頭巾を脱ぎ、その素顔を頼隆の前にさらした。

頼隆
「なっ…なんじゃと…」

頼隆は腰を抜かすほどの驚きの表情を見せた。

その男の顔は、頼隆と瓜二つであったからだ。
所謂、影武者と言うものである。

国輝
「じゃから申しておったろう?何の問題もござらぬとな。」

頼隆を討った後は、この男が何食わぬ顔で外河頼隆を演じるのだ。
そうする事で頼隆が暗殺された事は隠蔽され、自然な形で外河家を操る事が出来るというものだ。

そして国時が声を上げる。

国時
「それ故、同じ顔は二つもいらぬということにござる。さぁ、覚悟なされよ!」

国輝らは、じりじりと頼隆に近付いていた。

頼隆
「くっ…こんなところで…我は…討たれるわけにはいかぬのじゃ!」

そう言うと頼隆は国輝らの元を振り切るように全力で走り出した。

しかし頼隆一人に対し、国輝らを含む十数人の男たちの追手。
完全に逃げ切る事は不可能と言っても良いであろう。

気が付けば頼隆は、崖の上にまで追い詰められていた。
すぐ近くには大きな滝が流れており、崖の下の滝壺には凄まじい量の水が絶えず注ぎ込まれていた。

国輝
「頼隆殿よ、どこへ行こうとされておるのですかな?」

頼隆
「うぐぐぐぐ…」

国輝が気味の悪い笑みを浮かべながら声を上げる。

国輝
「ふははははっ!これでお主も終わりじゃな。よし、やれ!」

国時
「はっ!頼隆殿よ、今度こそご覚悟を!」

そう言うと国時は頼隆を崖から突き飛ばした。

頼隆
「ぐあああぁぁぁぁっ!」

頼隆は崖から転落し、一瞬にして滝壺に飲み込まれた。
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