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第8章 将軍への道程編
20.凶行
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大名である頼隆自らが志太家に出向き、面会するという事を決断して一夜が明けようとしている。
暁闇に包まれながら頼隆は国輝・国時らと共に墨山城を出発した。
頼隆
「二人共早き刻に真にご苦労である。感謝致すぞ。」
頼隆は、夜明け前という早い時間にも関わらずに自身と行動を共にしようとしている国輝らに労いの言葉をかけていた。
国輝
「頼隆様の御身をお守りする為であらば、これしきのことなど何ともございませぬ。」
国時
「拙者も同じく。外河家の命運がかかっております故、拙者たちがしっかりとお供させていただきますぞ。」
国輝と国時は、主君である頼隆の為であらば身を投げ出しても惜しくは無いと言わんばかりの態度を見せていた。
頼隆
「真に頼もしきことを申してくれよるわ。」
頼隆は二人の言葉を聞き、天にも昇る心地であった。
やがて数刻が過ぎたことで朝陽が登り始め、頼隆らを照らし出そうとしていた。
その頃、一行は墨山を抜けて外河家の領地から離れていた。
ふと頼隆が思い出したように国輝らに対して問いかける。
頼隆
「ところで、国輝殿と国時殿は何故に志太家を離れたのじゃ?」
頼隆は、かつて志太家に仕えていた国輝らが出奔するに至った経緯について疑問に感じていたようである。
すると国輝が神妙な顔つきをして口を開く。
国輝
「志太祐藤、という男に底知れぬ恐怖を感じた故にございます。あの男は危険にございます…」
国時
「拙者たちが身の危険を感じることが幾多もございました…」
国輝と国時は、ここぞとばかりに志太家に対して悪印象を持たせるべく様々な事を語り出した。
もちろんこれは国輝ら主観での話であり、事実とは大きく異なっている。
もし志太家の者が今この場にいれば、言いがかりも甚だしいと激しく批判の声を上げるであろう…
これに対し頼隆は深く頷いた後に口を開く。
頼隆
「なるほど、それ故に志太家を警戒されておったというわけか。じゃが国輝殿よ、時代は変わった。今の志太家は泰平の世を築くことを目標に掲げておるではないか。」
国輝らからは志太家、特に祐藤の抱く野望を実現させる為には手段をも選ばぬ実行力に底知れぬ恐怖を抱いていたと聞く。
だが、あくまでもそれは過去の話。
天下統一の事業に精力的に取り組んでいる現在の志太家を見る限りでは、悪い印象は感じられない。
思うに、祐藤から祐宗へと当主が代わった事をきっかけに考えを改めたのでは無いか。
など、頼隆は志太家に対してそうした思いを寄せていたようである。
そして頼隆が胸を張りながら言う。
頼隆
「我も志太殿と共に泰平の世を築いてみたくなったものでな。争いの無き世は我の夢でもあるわい。」
すると国輝は、にやりと笑いながら言う。
国輝
「ふふふ…頼隆様、残念ですがその夢は叶うことはございませぬな。」
頼隆
「なに?それはどういう意味じゃ?国輝殿よ?」
国輝が突然見せた不気味な笑みに頼隆は戸惑いの表情を見せていた。
そして国輝が声をあげる。
国輝
「おいお前たちよ、出てこい!」
その瞬間である。
林の中から数十人はいるであろう男たちが一斉に現れた。
この男たちは、国輝がかつて松永党の頭領であった頃に部下として仕えていた元党員である。
・松永党(まつながとう)
かつて扇山国で組織されていた野党。
松永国輝を当主として活動していたが、国輝の志太家への士官によって解散する。
その後、各国へ流れる元党員たちも少なくは無かったが一部の者は国輝の配下となった。
部下たちは瞬く間に頼隆の周りを取り囲んだ。
頼隆
「ぐっ、何じゃ何じゃ。国輝殿、一体何のつもりじゃ?」
突然の出来事に頼隆は混乱した様子ではあったが、自身の命が狙われている事だけは理解できていた。
国輝が下品な笑い声を上げながら頼隆に言う。
国輝
「ふはははっ!こうも簡単に儂の策略にはまるとは思わなんだわい。」
すると頼隆は目を吊り上げて大声を上げる。
頼隆
「国輝!貴様!最初から我の命を狙うつもりであったのか!許せぬ!許せぬぞ!」
鬼のような形相となった頼隆に向かって国輝が吐き捨てるように言う。
国輝
「今更気付いても遅いわ!おいお前たちよ、早いとこ片付けてしまえ!」
国時・部下
「外河頼隆殿、お覚悟を!」
頼隆
「くっ…何ということじゃ…」
頼隆は唇をかみしめていた。
暁闇に包まれながら頼隆は国輝・国時らと共に墨山城を出発した。
頼隆
「二人共早き刻に真にご苦労である。感謝致すぞ。」
頼隆は、夜明け前という早い時間にも関わらずに自身と行動を共にしようとしている国輝らに労いの言葉をかけていた。
国輝
「頼隆様の御身をお守りする為であらば、これしきのことなど何ともございませぬ。」
国時
「拙者も同じく。外河家の命運がかかっております故、拙者たちがしっかりとお供させていただきますぞ。」
国輝と国時は、主君である頼隆の為であらば身を投げ出しても惜しくは無いと言わんばかりの態度を見せていた。
頼隆
「真に頼もしきことを申してくれよるわ。」
頼隆は二人の言葉を聞き、天にも昇る心地であった。
やがて数刻が過ぎたことで朝陽が登り始め、頼隆らを照らし出そうとしていた。
その頃、一行は墨山を抜けて外河家の領地から離れていた。
ふと頼隆が思い出したように国輝らに対して問いかける。
頼隆
「ところで、国輝殿と国時殿は何故に志太家を離れたのじゃ?」
頼隆は、かつて志太家に仕えていた国輝らが出奔するに至った経緯について疑問に感じていたようである。
すると国輝が神妙な顔つきをして口を開く。
国輝
「志太祐藤、という男に底知れぬ恐怖を感じた故にございます。あの男は危険にございます…」
国時
「拙者たちが身の危険を感じることが幾多もございました…」
国輝と国時は、ここぞとばかりに志太家に対して悪印象を持たせるべく様々な事を語り出した。
もちろんこれは国輝ら主観での話であり、事実とは大きく異なっている。
もし志太家の者が今この場にいれば、言いがかりも甚だしいと激しく批判の声を上げるであろう…
これに対し頼隆は深く頷いた後に口を開く。
頼隆
「なるほど、それ故に志太家を警戒されておったというわけか。じゃが国輝殿よ、時代は変わった。今の志太家は泰平の世を築くことを目標に掲げておるではないか。」
国輝らからは志太家、特に祐藤の抱く野望を実現させる為には手段をも選ばぬ実行力に底知れぬ恐怖を抱いていたと聞く。
だが、あくまでもそれは過去の話。
天下統一の事業に精力的に取り組んでいる現在の志太家を見る限りでは、悪い印象は感じられない。
思うに、祐藤から祐宗へと当主が代わった事をきっかけに考えを改めたのでは無いか。
など、頼隆は志太家に対してそうした思いを寄せていたようである。
そして頼隆が胸を張りながら言う。
頼隆
「我も志太殿と共に泰平の世を築いてみたくなったものでな。争いの無き世は我の夢でもあるわい。」
すると国輝は、にやりと笑いながら言う。
国輝
「ふふふ…頼隆様、残念ですがその夢は叶うことはございませぬな。」
頼隆
「なに?それはどういう意味じゃ?国輝殿よ?」
国輝が突然見せた不気味な笑みに頼隆は戸惑いの表情を見せていた。
そして国輝が声をあげる。
国輝
「おいお前たちよ、出てこい!」
その瞬間である。
林の中から数十人はいるであろう男たちが一斉に現れた。
この男たちは、国輝がかつて松永党の頭領であった頃に部下として仕えていた元党員である。
・松永党(まつながとう)
かつて扇山国で組織されていた野党。
松永国輝を当主として活動していたが、国輝の志太家への士官によって解散する。
その後、各国へ流れる元党員たちも少なくは無かったが一部の者は国輝の配下となった。
部下たちは瞬く間に頼隆の周りを取り囲んだ。
頼隆
「ぐっ、何じゃ何じゃ。国輝殿、一体何のつもりじゃ?」
突然の出来事に頼隆は混乱した様子ではあったが、自身の命が狙われている事だけは理解できていた。
国輝が下品な笑い声を上げながら頼隆に言う。
国輝
「ふはははっ!こうも簡単に儂の策略にはまるとは思わなんだわい。」
すると頼隆は目を吊り上げて大声を上げる。
頼隆
「国輝!貴様!最初から我の命を狙うつもりであったのか!許せぬ!許せぬぞ!」
鬼のような形相となった頼隆に向かって国輝が吐き捨てるように言う。
国輝
「今更気付いても遅いわ!おいお前たちよ、早いとこ片付けてしまえ!」
国時・部下
「外河頼隆殿、お覚悟を!」
頼隆
「くっ…何ということじゃ…」
頼隆は唇をかみしめていた。
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