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第8章 将軍への道程編
15.墨山国の動き
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志太家による外河家への策略を開始して三月の時が経った。
任務を終えた忍びが御所へと帰還し、早々に祐宗の元へと向かった。
御所では忍びを含む家臣ら一同が集まっている。
その中で祐宗が口を開く。
祐宗
「真にご苦労であったな、礼を申すぞ。それで早速じゃが、墨山での動きを聞かせてくれ。」
祐宗は労いの言葉を忍びにかけると同時に、今回の策略の結果について問い掛けていた。
すると忍びが報告を始める。
忍び
「ははっ、どうやらこたびの選挙戦は外河家推薦代表の武野殿の勝利に終わった模様にございます。」
祐宗
「ほう、武野殿が勝ったか。外河家推薦だけあって当選するは必定というわけじゃな。」
今回、墨山の国で行われた政務団長選挙戦の結果は、外河家推薦代表の武野氏豊候補が当選していた。
やはり、墨山国を治める大元の大名である外河家を後ろ盾にする候補者が圧倒的に有利である事に間違いは無いようである。
この結果に祐宗は、想定通りであったと言っていた。
すると忍びが祐宗の言葉を遮って言う。
忍び
「ですが、こたびの選挙戦は少し変わった結果であったとのことを民たちが口々にしておりました。」
祐宗
「ほう、詳しく聞かせてみよ。」
忍びが報告を始める。
その内容とは、次のようなものであった。
・武野は商人推薦代表の一条と僅差の票数で勝利
墨山国の選挙戦の結果は、外河家推薦代表の候補者が他の候補者の追随を許さないほど大差の票数で勝利する事がほぼ毎年の出来事だと言う。
それが、今回初めて商人推薦代表側が外河家推薦代表と肩を並べるほどの獲得票数であったと言う。
結果的には外河家推薦代表の勝利には終わったが、この票数に関して家中において疑問を抱き始める者が現れて来たようである。
・一条政太郎が掲げた政策について
商人推薦代表である一条政太郎は、政策として全ての領民に豊かな暮らしを与えると言う内容である。
それにはまず、墨山国を志太家に差し出したうえで幕府の領地となる事が前提となる。
幕府という強大な組織に取り入れられる事で、安定した政を執り行う事が出来るであろうと期待しての政策だと言う。
祐宗
「ふむ、我の仕掛けた策がじわじわと効いておるようじゃな。」
祐宗の策略。
それは、選挙戦の近付く時期に墨山国の領民たちに対して外河家が志太家の傘下となる事が良策であるという思想を植え付けたのだ。
忍びによる流言を流すかの如く始めた策が、ついには大勢の領民の心を動かしたと言う事実が今回の票数として現れたのであろう。
貞広
「なるほど、領民たちを上手く扇動させたというわけでございますか。流石は殿にございますな。」
貞広は尊敬の眼差しで祐宗を見つめていた。
すると祐宗が貞広に対して言う。
祐宗
「こういった策は、お主の父上である貞勝殿が得意とされておった。それ故に我もかような策を出すことが出来たのじゃ。貞広よ、今後のお主には期待しておるぞ。」
貞勝は、生前に志太家において様々な策を練り出しては成功を収めて来たと言う。
そうした過去の策を参考にし、今回の策を考案する事が出来たと祐宗は言っていた。
子である貞広もまた父と同じ政務団長の座に就いてはいるが、いかんせんまだ若い。
貞勝と同等の才能こそあるが、まだ経験は皆無に等しいのだ。
祐宗は、父である貞勝を手本としてさらなる飛躍を遂げる事を貞広に期待しているようであった。
貞広
「ははっ、拙者も早く父 貞勝のような良き策を練られるよう精進いたしまする!」
貞広は力強い口調でそう答えていた。
祐宗
「うむ、その心意気じゃ。頼んだぞ。」
祐宗は貞広の肩を軽く叩いてそう言っていた。
そして御所の外から見える景色を眺めながら呟く。
祐宗
「さぁて、後はこれで外河家がどう動くかじゃな…」
任務を終えた忍びが御所へと帰還し、早々に祐宗の元へと向かった。
御所では忍びを含む家臣ら一同が集まっている。
その中で祐宗が口を開く。
祐宗
「真にご苦労であったな、礼を申すぞ。それで早速じゃが、墨山での動きを聞かせてくれ。」
祐宗は労いの言葉を忍びにかけると同時に、今回の策略の結果について問い掛けていた。
すると忍びが報告を始める。
忍び
「ははっ、どうやらこたびの選挙戦は外河家推薦代表の武野殿の勝利に終わった模様にございます。」
祐宗
「ほう、武野殿が勝ったか。外河家推薦だけあって当選するは必定というわけじゃな。」
今回、墨山の国で行われた政務団長選挙戦の結果は、外河家推薦代表の武野氏豊候補が当選していた。
やはり、墨山国を治める大元の大名である外河家を後ろ盾にする候補者が圧倒的に有利である事に間違いは無いようである。
この結果に祐宗は、想定通りであったと言っていた。
すると忍びが祐宗の言葉を遮って言う。
忍び
「ですが、こたびの選挙戦は少し変わった結果であったとのことを民たちが口々にしておりました。」
祐宗
「ほう、詳しく聞かせてみよ。」
忍びが報告を始める。
その内容とは、次のようなものであった。
・武野は商人推薦代表の一条と僅差の票数で勝利
墨山国の選挙戦の結果は、外河家推薦代表の候補者が他の候補者の追随を許さないほど大差の票数で勝利する事がほぼ毎年の出来事だと言う。
それが、今回初めて商人推薦代表側が外河家推薦代表と肩を並べるほどの獲得票数であったと言う。
結果的には外河家推薦代表の勝利には終わったが、この票数に関して家中において疑問を抱き始める者が現れて来たようである。
・一条政太郎が掲げた政策について
商人推薦代表である一条政太郎は、政策として全ての領民に豊かな暮らしを与えると言う内容である。
それにはまず、墨山国を志太家に差し出したうえで幕府の領地となる事が前提となる。
幕府という強大な組織に取り入れられる事で、安定した政を執り行う事が出来るであろうと期待しての政策だと言う。
祐宗
「ふむ、我の仕掛けた策がじわじわと効いておるようじゃな。」
祐宗の策略。
それは、選挙戦の近付く時期に墨山国の領民たちに対して外河家が志太家の傘下となる事が良策であるという思想を植え付けたのだ。
忍びによる流言を流すかの如く始めた策が、ついには大勢の領民の心を動かしたと言う事実が今回の票数として現れたのであろう。
貞広
「なるほど、領民たちを上手く扇動させたというわけでございますか。流石は殿にございますな。」
貞広は尊敬の眼差しで祐宗を見つめていた。
すると祐宗が貞広に対して言う。
祐宗
「こういった策は、お主の父上である貞勝殿が得意とされておった。それ故に我もかような策を出すことが出来たのじゃ。貞広よ、今後のお主には期待しておるぞ。」
貞勝は、生前に志太家において様々な策を練り出しては成功を収めて来たと言う。
そうした過去の策を参考にし、今回の策を考案する事が出来たと祐宗は言っていた。
子である貞広もまた父と同じ政務団長の座に就いてはいるが、いかんせんまだ若い。
貞勝と同等の才能こそあるが、まだ経験は皆無に等しいのだ。
祐宗は、父である貞勝を手本としてさらなる飛躍を遂げる事を貞広に期待しているようであった。
貞広
「ははっ、拙者も早く父 貞勝のような良き策を練られるよう精進いたしまする!」
貞広は力強い口調でそう答えていた。
祐宗
「うむ、その心意気じゃ。頼んだぞ。」
祐宗は貞広の肩を軽く叩いてそう言っていた。
そして御所の外から見える景色を眺めながら呟く。
祐宗
「さぁて、後はこれで外河家がどう動くかじゃな…」
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