架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
上 下
320 / 549
第8章 将軍への道程編

14.世代交代

しおりを挟む
祐宗が外河家に対しての策略を開始して間もなく三月が過ぎようとしていた頃、志太家では大きな出来事が発生していた。

家臣である吉江貞勝及び口羽崇数が相次いでこの世を去ったのである。
共に晩年では老体に鞭を打ちつつ気力で乗り切っていたが、やはり寿命には勝てなかったようだ。

この二名が死去した事を受けて吉江家は貞勝の嫡男である貞広(さだひろ)が、口羽家は崇冬がそれぞれ家督を相続した。

・吉江 貞広(よしえ さだひろ)
貞勝の嫡男として生まれる。
父の死後に家督を相続し、吉江家の当主に就く。
そして祐宗より志太家の政務団長に任命され、若くして志太家の中核を担う存在となった。
常識にとらわれない斬新でかつ革新的な思考の持ち主であったと言われており、様々な政策を進めたという。

吉江貞勝と口羽崇数。
重臣とも言えるこの二名を失う事は、志太家にとって大きな痛手となっていた。
そうした事もあり、今後の志太家の行方に祐宗は不安を感じずにはいられなかった。

祐宗
「崇数殿と貞勝殿もついにこの世を去られたか…」

祐宗は心配げな表情をしていた。
その様子を見た家臣たちがすかさず言う。

貞広
「殿!今後はこの貞広めが父、貞勝の跡をしっかりと継いで志太家の天下統一に力を尽くします故、どうかご安心くださいませ!」

その後に続いて崇冬も口を開く。

崇冬
「おこがましきことは承知のうえで申します。拙者は亡き父上、崇数以上の将と必ずやなりましょうぞ。そして、その力を志太幕府の創設に注力いたしまする!」

共に二人は当主となった事で全ての覚悟を決めている様子であった。
そうした彼らの決意の言葉を聞き、祐宗は頼もしく感じていた。

祐宗
「うむ、そなたらの心意気は真に良きことである。これから我と共に新たな良き世を造ろうぞ。戦の無き泰平の世をな。」

先程とは打って変わって希望に溢れた表情を祐宗は見せていた。
そして崇冬が祐宗に対して言う。

崇冬
「殿、今日より我が息子の崇房も志太家の家臣としてお仕えさせていただきますぞ。」

ちょうどこの時期に崇冬の嫡男である崇房(たかふさ)が元服を迎えて新たに志太家の家臣として仕える事となったのである。

・口羽 崇房(くちば たかふさ)
崇冬の嫡男として生まれる。
崇数が死去した事を受け、崇冬が口羽家の当主となった際に次期当主として正式に任命される。
崇房は幼少期より祖父である崇数と父である崇冬の教育の施しを存分に受けて育った事もあり、家臣たちからも大きな期待が寄せられている。
だが、その若さ故からか無鉄砲な行動を起こす事もしばしばあったという。

崇房
「ははっ、この口羽崇房 祖父上にも引けを取らぬ働きをお見せいたします故、どうかよろしくお願いいたしまする。」

隆房は目を輝かせながら深々と祐宗に対して頭を下げていた。
その様子に祐宗が感嘆の声をあげる。

祐宗
「うむ、よう言うた。崇房よ、いつまでもその決意を忘れるでないぞ、良いな。」

そして祐宗は、集まった家臣たちを眺めながら呟き始める。

祐宗
「かような頼もしき家臣たちを持って我は真に果報者じゃ…」

祐宗の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
しおりを挟む
佐村孫千Webサイト
https://samuramagosen.themedia.jp/
感想 18

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

戦争はただ冷酷に

航空戦艦信濃
歴史・時代
 1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…  1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。

戦艦タナガーin太平洋

みにみ
歴史・時代
コンベース港でメビウス1率いる ISAF部隊に撃破され沈んだタナガー だがクルーたちが目を覚ますと そこは1942年の柱島泊地!?!?

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

処理中です...