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第8章 将軍への道程編

09.墨山城へと

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一介の案内によって康龍らは墨山の地に無事に到着。
城下町をあれこれと散策した後に、一介の誘いによって城下町の酒場へと招かれた。
そこでは墨山に関する貴重な情報を得る事ができた。

酒場を出た頃には既に日は落ちており、すっかり夜も更けていた。
すると一介が康龍たちに対して声をかけた。

一介
「お二方よ、もう遅い時間である故に今宵は私の屋敷に泊まっていきなされ。」

随分と酒に酔っているのであろうか、一介は血色の良い顔色をしていた。

康龍
「一介殿、何から何までお世話になってかたじけない。」

康龍は一介に対して感謝の言葉を述べていた。
康龍らもまた血色の良い顔色をしていたが、一介の言葉を聞くやいなや申し訳無さげな表情に切り替わった。
こうして康龍らは一介の屋敷で夜を過ごす事となった。

そして翌朝になり、康龍は一介に対して深々と頭を下げながら言う。

康龍
「見ず知らずの私どもを手厚くもてなしていただき、真に感謝しております。礼を申しますぞ。」

すると一介は、嬉しげな表情を浮かべながら答える。

一介
「いえ、礼を申すのは私のほうです。昨日は真に楽しゅうございました。また是非とも私を訪ねに来てくださいませ。私に出来ることがあれば力になりますぞ。」

一介は康龍らと出会えた事で楽しい時間を過ごすことが出来たと大変喜んでいる様子だ。
それだけではなく、康龍らに対して今後も協力するという姿勢を見せており、康龍らにとっては非常に意味のある出来事であった。

身支度を済ませた康龍が一息ついた後に口を開く。

康龍
「よし、それでは私たちはこれより外河家の殿様にお会いしてきますかな。」

一介
「上手く商いが進むことを私も願っておりますぞ。」

一介は康龍らの成功を心より願っていた。
そうして康龍らは、一介の住む屋敷を後にした。

ほどなくして康龍らは墨山城の城門に到着する。
そこでは門番をしていた家臣であろう人物がこちらを睨むようにじっと見つめていた。
やがて男は康龍に近付いて口を開く。


「むむっ、お主らは見慣れぬ顔にござるな。我ら外河家の墨山城に何の御用であるか?」

疑わしげな目つきをしながら男はそう言った。
腰にした刀を今にも抜かんばかりに警戒している様子である。

すると康龍らは、堂々たる態度で男に向かって答える。

康龍
「私は各地を渡り歩く旅の商人で、名を杉山と申します。こたびは頼隆様に珍しき品物をお見せしたく参った次第にございます。」

宗重
「同じく、旅の商人の宮田にございます。お気に召される品物がございますかは、まずは見ていただくのがよろしいかと…」

「杉山」に「宮田」
康龍と宗重がそれぞれ商人として名乗った偽名である。

康龍らの言葉を耳にした男は力を抜き、真顔へと切り替わった。


「ふむ、旅の商人の者とな。良いだろう、暫し待たれるが良い。」

そう言うと男は城の中へと入っていった。

宗重
「ふぅ…どうやら拙者らを本物の商人と思うておるようですな。」

宗重は胸を撫で下ろしながらそう言った。
すると康龍がすかさず宗重に対して口を開く。

康龍
「宗重殿、されどこの場所は敵地にございます故に油断は禁物…気を抜かれてはいけませぬぞ。」

敵地に足を踏み入れた以上、不測の事態が発生しても不思議では無い。
また、少しの気の緩みが命取りとなる危険が常に潜んでいるのだ。
康龍は気を引き締めさせるべく宗重に対してそう言っていた。

しばらくすると男が康龍らの前に戻って来て声をかける。


「頼隆様はお主らの話を聞きたいと申されておる。これよりお主らを頼隆様のもとへと案内いたす。さぁ、参れ。」

どうやら頼隆は康龍らの商談について興味があるようだ。

康龍
「ははっ、それではよろしくお願いいたします。」

康龍と宗重はお互いに目配せをしていた。
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