311 / 549
第8章 将軍への道程編
05.道中
しおりを挟む
御所での評定において祐宗は、外河家について詳しく情報を得る事が重要であると語った。
そして外河家の内情調査による潜入を任命された康龍は身支度を済ませ、早々に領内を出発。
また、道中の山賊などによる襲撃から守るためにと祐宗は忍びで身軽な宮本宗重を康龍の護衛に着けさせていた。
康龍は、自身のすぐ後方で目を光らせながら警戒している宗重に対して声をかける。
康龍
「宗重殿よ、拙者などを護衛して頂けるとは真に感謝にござる。」
すると宗重が恐縮した様子で答える。
宗重
「いえ、むしろ感謝するのは拙者にござる。康虎殿のご嫡男であられる康龍殿の護衛を任されて拙者は真に嬉しゅうございます。」
宗重は、かつては村上島(現在の志栄島)で忍びを束ねる頭領として活躍していた。
優れた忍びが多いと言われる竹呉島の出身という事もあってか、宗重の忍者としての能力も非常に高かった。
だが、当時の村上家の家中においての宗重に対しての風当たりは強かったという。
放浪して村上島に移り住んだ言わば「余所者」であった宗重は、古くからこの地に住む者たちに受け入れられる事は難しかったようである。
そんな中でも、康虎だけは違った。
彼は宗重に対して無下に扱ったり、横柄な態度をとるなどといった行為を一切しなかった。
元来からどのような身分の者であってっも別け隔て無く接する、といった康虎の性格に宗重は酷く心を打たれたのだ。
康虎は、村上家において宗重の良き理解者であったとも言えよう。
そうした恩に報いるべく、彼の嫡男である康龍の護衛を任された事に対して宗重は非常に喜びを得ていた。
康龍
「そう申していただけると拙者も嬉しいですな。では、よろしく頼みましたぞ。」
康龍は宗重に笑顔を向けてそう言っていた。
すると今度は苦笑した様子で康龍が呟き始める。
康龍
「しかし、この身なりをするのは拙者は初めて故に妙な感じじゃのぅ。」
宗重
「我らが侍と分かってしまわれては、共に身が危ういですからな。」
祐宗は、康龍らに旅の商人を装って墨山城下に潜入するように命じていた。
墨山の者たちに康龍らが武将である事が発覚すれば、詳しい内情を得られなくなるからである。
更に志太家の者と言う事がひとたび露呈してしまえば、康龍ら自身の命が危険にさらされる可能性も十分に有り得る。
それ故に、身分を隠して潜入する必要があったのだ。
それから一刻ほどの時が過ぎ、一行の目の前には険しい山道が飛び込んできた。
どうやらこの山を越えた先に墨山城があるという。
康龍
「この山を越えねばならぬようじゃな。どうやら墨山までの道は、拙者たちが思う以上に険しいようにござるな…」
宗重
「全く、その通りにございますな…」
二人は高くそびえる山に圧倒されている様子であった。
そうしているとやがて一人の男が現れ、康龍らに近付いて声をかける。
男
「おや、旅の者ですかな。どうなされましたかな?」
男は康龍らが山道の前で立ち止まって悩ましい表情を見せていた為、気になって声をかけたようである。
康龍
「いかにも、私たちは旅の商人にございます。こたびは墨山の地を訪れる為にここまで来ましたが、余りの険しき山道に圧倒されまして…」
康龍は男に自身らを商人である事を伝え、これから墨山に訪問する旨の内容を話していた。
すると男は真剣な顔をして言う。
男
「ほう、初めて墨山を訪れる旅の者にござったか。それでは、ここからは私が案内いたそう。この墨山に辿り着くまでに道に迷う旅の者も多くおられるものでな。」
この男は墨山城下の領民で、一介(いちすけ)と名乗った。
康龍
「かたじけない。では、一介殿のご厚意に甘えさせていただきます。」
康龍は一介に対して頭を深々と下げていた。
そして外河家の内情調査による潜入を任命された康龍は身支度を済ませ、早々に領内を出発。
また、道中の山賊などによる襲撃から守るためにと祐宗は忍びで身軽な宮本宗重を康龍の護衛に着けさせていた。
康龍は、自身のすぐ後方で目を光らせながら警戒している宗重に対して声をかける。
康龍
「宗重殿よ、拙者などを護衛して頂けるとは真に感謝にござる。」
すると宗重が恐縮した様子で答える。
宗重
「いえ、むしろ感謝するのは拙者にござる。康虎殿のご嫡男であられる康龍殿の護衛を任されて拙者は真に嬉しゅうございます。」
宗重は、かつては村上島(現在の志栄島)で忍びを束ねる頭領として活躍していた。
優れた忍びが多いと言われる竹呉島の出身という事もあってか、宗重の忍者としての能力も非常に高かった。
だが、当時の村上家の家中においての宗重に対しての風当たりは強かったという。
放浪して村上島に移り住んだ言わば「余所者」であった宗重は、古くからこの地に住む者たちに受け入れられる事は難しかったようである。
そんな中でも、康虎だけは違った。
彼は宗重に対して無下に扱ったり、横柄な態度をとるなどといった行為を一切しなかった。
元来からどのような身分の者であってっも別け隔て無く接する、といった康虎の性格に宗重は酷く心を打たれたのだ。
康虎は、村上家において宗重の良き理解者であったとも言えよう。
そうした恩に報いるべく、彼の嫡男である康龍の護衛を任された事に対して宗重は非常に喜びを得ていた。
康龍
「そう申していただけると拙者も嬉しいですな。では、よろしく頼みましたぞ。」
康龍は宗重に笑顔を向けてそう言っていた。
すると今度は苦笑した様子で康龍が呟き始める。
康龍
「しかし、この身なりをするのは拙者は初めて故に妙な感じじゃのぅ。」
宗重
「我らが侍と分かってしまわれては、共に身が危ういですからな。」
祐宗は、康龍らに旅の商人を装って墨山城下に潜入するように命じていた。
墨山の者たちに康龍らが武将である事が発覚すれば、詳しい内情を得られなくなるからである。
更に志太家の者と言う事がひとたび露呈してしまえば、康龍ら自身の命が危険にさらされる可能性も十分に有り得る。
それ故に、身分を隠して潜入する必要があったのだ。
それから一刻ほどの時が過ぎ、一行の目の前には険しい山道が飛び込んできた。
どうやらこの山を越えた先に墨山城があるという。
康龍
「この山を越えねばならぬようじゃな。どうやら墨山までの道は、拙者たちが思う以上に険しいようにござるな…」
宗重
「全く、その通りにございますな…」
二人は高くそびえる山に圧倒されている様子であった。
そうしているとやがて一人の男が現れ、康龍らに近付いて声をかける。
男
「おや、旅の者ですかな。どうなされましたかな?」
男は康龍らが山道の前で立ち止まって悩ましい表情を見せていた為、気になって声をかけたようである。
康龍
「いかにも、私たちは旅の商人にございます。こたびは墨山の地を訪れる為にここまで来ましたが、余りの険しき山道に圧倒されまして…」
康龍は男に自身らを商人である事を伝え、これから墨山に訪問する旨の内容を話していた。
すると男は真剣な顔をして言う。
男
「ほう、初めて墨山を訪れる旅の者にござったか。それでは、ここからは私が案内いたそう。この墨山に辿り着くまでに道に迷う旅の者も多くおられるものでな。」
この男は墨山城下の領民で、一介(いちすけ)と名乗った。
康龍
「かたじけない。では、一介殿のご厚意に甘えさせていただきます。」
康龍は一介に対して頭を深々と下げていた。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?
三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい! ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。
イラスト/ノーコピーライトガール
稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜
撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。
そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!?
どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか?
それは生後半年の頃に遡る。
『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。
おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。
なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。
しかも若い。え? どうなってんだ?
体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!?
神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。
何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。
何故ならそこで、俺は殺されたからだ。
ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。
でも、それなら魔族の問題はどうするんだ?
それも解決してやろうではないか!
小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。
今回は初めての0歳児スタートです。
小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。
今度こそ、殺されずに生き残れるのか!?
とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。
今回も癒しをお届けできればと思います。
武田信玄Reローデッド~チートスキル『ネット通販風林火山』で、現代の物をお取り寄せ無双して、滅亡する武田家の運命をチェンジ!
武蔵野純平
ファンタジー
第3回まんが王国コミカライズコンテストにて優秀賞を受賞しました! 応援感謝です!
戦国時代をモチーフにした和風の異世界ファンタジー!
平凡なサラリーマンだった男は、若き日の武田信玄――十四歳の少年、武田太郎に転生した。戦国最強の騎馬軍団を率いる武田家は、織田信長や徳川家康ですら恐れた大名家だ。だが、武田信玄の死後、武田家は滅亡する運命にある。
武田太郎は、転生時神様に貰ったチートスキル『ネット通販風林火山』を使って、現代日本のアイテムを戦国時代に持ち込む。通販アイテムを、内政、戦争に生かすうちに、少しずつ歴史が変わり出す。
武田家の運命を変えられるのか?
史実の武田信玄が夢見た上洛を果すのか?
タイトル変更しました!
旧タイトル:転生! 風林火山!~武田信玄に転生したので、ネット通販と現代知識でチート!
※この小説はフィクションです。
本作はモデルとして天文三年初夏からの戦国時代を題材にしておりますが、日本とは別の異世界の話しとして書き進めています。
史実と違う点がありますが、ご了承下さい。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
荒野で途方に暮れていたらドラゴンが嫁になりました
ゲンタ
ファンタジー
転生したら、荒れ地にポツンと1人で座っていました。食べ物、飲み物まったくなし、このまま荒野で死ぬしかないと、途方に暮れていたら、ドラゴンが助けてくれました。ドラゴンありがとう。人族からエルフや獣人たちを助けていくうちに、何だかだんだん強くなっていきます。神様……俺に何をさせたいの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる