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第8章 将軍への道程編
04.墨山城の外河家
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志太家では外河家に対する策を練るべく、家臣たちを御所に集めて緊急で評定が開かれた。
家臣たちが全員集まった中でまず祐宗が最初に口を開く。
祐宗
「外河家は、我らには従わぬとのことじゃ。」
この祐宗の発言に家臣たちは皆が驚きの表情を見せた。
そして祐永が目をかっと見開いて祐宗に対して言う。
祐永
「何と!我が志太家に対して抵抗する勢力がござったとは…いやはや、天晴というべきか無謀というべきか…」
祐永は、この期に及んで未だに抵抗の動きを見せる勢力が存在している事に信じられない様子であった。
すると今度は崇数が静かに口を開いた。
崇数
「我らに従わぬ勢力は、武を持って制す…にございますかな…」
幕府を成立させ、泰平の世を築く為には多少の犠牲がついて回る。
先の三浦家との戦いにおいても同じ思想を掲げて志太家はこれを滅ぼした。
そしてまたしても新たな犠牲を生み出す事になるのであろうか…
そう考えていた崇数も、これには抵抗を覚えた様子である。
そんな崇数を見た義道が言う。
義道
「最早、外河家と一戦を交えるは致し方の無きことかも知れぬな…」
どうやら義道も崇数の意見にはおおむね賛成のようである。
すると、玄名が難しい顔をして崇数たちに対して声を発した。
玄名
「いや、これ以上は戦によって互いの尊き命を失うことは避けたいですな…仏に仕えし身の私には心が酷く痛みまする…」
争いを好まぬ玄名らしい発言である。
やがて貞勝が祐宗に対して決断を迫るように問う。
貞勝
「殿…いかがなされますか?」
祐宗は少し考えた後に口を開く。
祐宗
「ここは一つ、外河家を探る必要がござろうな。」
祐宗の言葉に対し、貞勝が反射的に言葉を返す。
貞勝
「では、忍びの者を放ちますか。」
祐宗は、貞勝のその問い掛けに首を横に振って言う。
祐宗
「いや、忍びによる潜入では無い。我に少し考えがある。」
何やら祐宗に名案が浮かんだ様子である。
貞勝は祐宗による予想外の答えに驚いた表情を見せて更に問う。
貞勝
「と、申されますと?」
祐宗はひと息ついた後に、一人の家臣に対して声をかける。
祐宗
「こたびの墨山城の潜入を康龍、お主に命じる。」
祐宗の指は、康龍に対して真っ直ぐに向けられていた。
・杉 康龍(すぎ やすたつ)
村上家参謀 杉康虎の嫡男で幼名は幸龍丸(こうりゅうまる)と言う。
康虎が村上長継から謀叛の疑いをかけられた事により処刑された為、自身は領内の地下牢に幽閉される。
後に村上家と志太家との決戦時に崇冬によって地下牢から救出され、志太家によって保護された。
そして元服時には名を康龍とし、現在は蛭間玄名の家臣として志太家に仕えている。
康龍
「せ、拙者でございますか…」
康龍は突然の祐宗による自身の指名に動揺した様子である。
祐宗
「そうじゃ、お主にこたびの墨山城の潜入を任せようぞ。」
祐宗は、墨山城に送り込んで内情を探るには康龍が適していると考えていた。
それには理由があった。
康龍は幼少時に志太家によって保護され、やがて元服を迎えてから更に数年が過ぎていた。
その間にももちろん初陣や政にも携わるなど、それなりに武将としての経験は積まれている。
だが、仕えている武将が戦を好まない僧侶出身の玄名だ。
それ故に、必然的に他家の者たちに康龍の顔が知られる事が極端に少なかったのだ。
顔が余り知られていない者であれば、堂々と墨山城に送り込んでも問題は無いであろう。
そこで直接に領民や武将たちから外河家について内情を探る事で、より正確な情報を得られるのでは無いかと祐宗は考えていた。
康龍
「しかし…拙者にかような役が務まりますでしょうか…」
自信が無さげな様子で康龍はそう言っていた。
すると祐宗は、康龍の肩を軽く叩きながら言う。
祐宗
「お主には、かつての村上家を支えていた杉康虎殿の血が流れておる。今こそ父上殿のご遺志を立派に引き継いでその力を発揮する時ぞ!」
祐宗の父である祐藤は康虎の無限の才能に心底惚れており、晩年においても康虎の話を家臣たちにする事がしばしばあったと言われている。
その康虎の最期は、一貫して忠誠を誓っていた村上家によって処刑されるという何とも皮肉な結末で生涯を終えた。
志半ばでこの世を去ってしまった父の遺志を継ぐは今である。
祐宗は康龍に対してそう力強く語っていた。
すると康龍はみるみるうちに凛々しい表情へと切り替わり、声を上げる。
康龍
「ははっ!それではこの杉康龍、墨山城潜入の命を引き受けましょう!」
康龍の目は眩いほどに輝いていた。
家臣たちが全員集まった中でまず祐宗が最初に口を開く。
祐宗
「外河家は、我らには従わぬとのことじゃ。」
この祐宗の発言に家臣たちは皆が驚きの表情を見せた。
そして祐永が目をかっと見開いて祐宗に対して言う。
祐永
「何と!我が志太家に対して抵抗する勢力がござったとは…いやはや、天晴というべきか無謀というべきか…」
祐永は、この期に及んで未だに抵抗の動きを見せる勢力が存在している事に信じられない様子であった。
すると今度は崇数が静かに口を開いた。
崇数
「我らに従わぬ勢力は、武を持って制す…にございますかな…」
幕府を成立させ、泰平の世を築く為には多少の犠牲がついて回る。
先の三浦家との戦いにおいても同じ思想を掲げて志太家はこれを滅ぼした。
そしてまたしても新たな犠牲を生み出す事になるのであろうか…
そう考えていた崇数も、これには抵抗を覚えた様子である。
そんな崇数を見た義道が言う。
義道
「最早、外河家と一戦を交えるは致し方の無きことかも知れぬな…」
どうやら義道も崇数の意見にはおおむね賛成のようである。
すると、玄名が難しい顔をして崇数たちに対して声を発した。
玄名
「いや、これ以上は戦によって互いの尊き命を失うことは避けたいですな…仏に仕えし身の私には心が酷く痛みまする…」
争いを好まぬ玄名らしい発言である。
やがて貞勝が祐宗に対して決断を迫るように問う。
貞勝
「殿…いかがなされますか?」
祐宗は少し考えた後に口を開く。
祐宗
「ここは一つ、外河家を探る必要がござろうな。」
祐宗の言葉に対し、貞勝が反射的に言葉を返す。
貞勝
「では、忍びの者を放ちますか。」
祐宗は、貞勝のその問い掛けに首を横に振って言う。
祐宗
「いや、忍びによる潜入では無い。我に少し考えがある。」
何やら祐宗に名案が浮かんだ様子である。
貞勝は祐宗による予想外の答えに驚いた表情を見せて更に問う。
貞勝
「と、申されますと?」
祐宗はひと息ついた後に、一人の家臣に対して声をかける。
祐宗
「こたびの墨山城の潜入を康龍、お主に命じる。」
祐宗の指は、康龍に対して真っ直ぐに向けられていた。
・杉 康龍(すぎ やすたつ)
村上家参謀 杉康虎の嫡男で幼名は幸龍丸(こうりゅうまる)と言う。
康虎が村上長継から謀叛の疑いをかけられた事により処刑された為、自身は領内の地下牢に幽閉される。
後に村上家と志太家との決戦時に崇冬によって地下牢から救出され、志太家によって保護された。
そして元服時には名を康龍とし、現在は蛭間玄名の家臣として志太家に仕えている。
康龍
「せ、拙者でございますか…」
康龍は突然の祐宗による自身の指名に動揺した様子である。
祐宗
「そうじゃ、お主にこたびの墨山城の潜入を任せようぞ。」
祐宗は、墨山城に送り込んで内情を探るには康龍が適していると考えていた。
それには理由があった。
康龍は幼少時に志太家によって保護され、やがて元服を迎えてから更に数年が過ぎていた。
その間にももちろん初陣や政にも携わるなど、それなりに武将としての経験は積まれている。
だが、仕えている武将が戦を好まない僧侶出身の玄名だ。
それ故に、必然的に他家の者たちに康龍の顔が知られる事が極端に少なかったのだ。
顔が余り知られていない者であれば、堂々と墨山城に送り込んでも問題は無いであろう。
そこで直接に領民や武将たちから外河家について内情を探る事で、より正確な情報を得られるのでは無いかと祐宗は考えていた。
康龍
「しかし…拙者にかような役が務まりますでしょうか…」
自信が無さげな様子で康龍はそう言っていた。
すると祐宗は、康龍の肩を軽く叩きながら言う。
祐宗
「お主には、かつての村上家を支えていた杉康虎殿の血が流れておる。今こそ父上殿のご遺志を立派に引き継いでその力を発揮する時ぞ!」
祐宗の父である祐藤は康虎の無限の才能に心底惚れており、晩年においても康虎の話を家臣たちにする事がしばしばあったと言われている。
その康虎の最期は、一貫して忠誠を誓っていた村上家によって処刑されるという何とも皮肉な結末で生涯を終えた。
志半ばでこの世を去ってしまった父の遺志を継ぐは今である。
祐宗は康龍に対してそう力強く語っていた。
すると康龍はみるみるうちに凛々しい表情へと切り替わり、声を上げる。
康龍
「ははっ!それではこの杉康龍、墨山城潜入の命を引き受けましょう!」
康龍の目は眩いほどに輝いていた。
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