296 / 549
第7章 天下分け目の大決戦編
70.三浦宮御所の戦い(23)
しおりを挟む
教晴による人質解放の策が無事に完了した事を知った義久は、兵たちに対して継晴の軍勢への攻撃を命令。
義久と教晴による志太軍の寝返りにより、戦局は大きく変わろうとしていた。
★現在の戦況
志太連合軍(総兵数 7,400人)
志太軍
計 1,500人
口羽軍
計 2,000人
秋庭軍
計 300人
郷田軍
計 300人
堀内軍
計 300人
木内軍
計 1,000人
黒松軍
計 1,000人
三浦教晴軍
計 1,000人
幕府軍(総兵数 3,000人)
幕府軍
計 3,000人
義久の軍勢が幕府軍に対して攻撃を開始する前の事である。
教晴の手によって人質が無事に解放された事を知った義久は、志太軍への攻撃を止めた。
刀を手にしていた者は鞘へと収め、槍を手にしていた者は地面に置くなどして志太軍に対して敵意が無い事を示していた。
そして軍勢の中から一人の武将が祐宗たちの前に現れた。
義久である。
義久
「志太殿よ!先刻までの我らによる攻撃、真に身勝手であることは承知の上ではござるが、どうかお許しいただきたく存じます。」
そう言うと義久は祐宗らに対して深々と頭を下げた。
そして続けて義久が言う。
義久
「これより拙者 黒松義久の軍勢は、三浦幕府将軍 継晴を討つべく志太殿にお味方いたしまする!」
この様子には志太軍も驚いた様子である。
先刻まで敵と味方に分かれて激しい戦いを繰り広げていたのであるから無理も無いだろう。
その言葉を聞いた祐永が義久に対して冷ややかな目を向けて言う。
祐永
「これはこれは…義久殿よ、随分と都合の良きことを申されますな。」
すると、そんな祐永を制止するようにすかさず祐宗が言う。
祐宗
「良い、祐永よ。その者の話を聞こうではないか。」
どうやら祐宗は、今回の義久の行動に何か深い訳があるのだろうと感じていた。
義久
「ははっ、恐れ入りまする。では…」
義久は語り始めた。
将軍である継晴の悪政によって領民たちが今もなお苦しめられている事。
幕府に対して忠誠を誓わせる為、幕臣たちの家族が人質として差し出されている事。
また、謀叛の疑いをかけられた場合はたちまちその人質らが容赦なく処刑されてしまう事。
など、この世の地獄とも言える程の苦痛を幕府が領民たちに与え続けている事を必死に伝えていた。
すると祐宗は深く頷き、全てを理解した様子で口を開く。
祐宗
「つまり、お主らは今の幕府に対しての絶望を掻き消す故の今回の行動であると申したいわけじゃな?」
義久が静かに答える。
義久
「はい…戦の無き泰平の世を訪れさせる為にもこうするしか手は無かった故…」
義久は言葉を詰まらせながらそう言っていた。
その時である。
義久の後方からもう一つの軍勢が近付いて来た。
その軍勢は、教晴のものであった。
教晴は祐宗らの前に立ち、堂々たる態度をして言う。
教晴
「余が三浦教晴にござる。父である継晴の悪政を根元から断たせるべく、志太軍に助太刀いたしまする!」
教晴は真剣な表情でそうしっかりと声を上げていた。
これに対し祐宗もまた真剣な様子で教晴に声をかける。
祐宗
「教晴殿と申したな。話は義久殿から聞かせてもらった。将軍殿の世継でありながらも、かような策を強行するのはさぞかし心が痛むであろう…」
祐宗は教晴に同情している様子であった。
「親子」と言う、切っても切れぬはずの「絆」が、継晴と教晴には存在しないのだ。
祐宗自身は、生まれた頃より父である祐藤とは堅い絆で結ばれていたが故に教晴の境遇を誰よりも不憫に感じていたようである。
すると教晴があっさりとした様子で答える。
教晴
「余は、継晴を父とは思うておらぬ。父上、いや 継晴は天魔じゃ。それ故に我らが成敗せねば泰平の世は永遠に訪れぬであろう。」
実の父を「天魔」とまで言い切るほど教晴は継晴に対して嫌悪感を抱いているようである。
また、教晴のその言葉からは親子としての絆など最早微塵も感じられない。
いずれにせよ、複雑な心境である事に間違いは無いであろう。
やがて教晴の言葉に確固たる覚悟を感じ取ったのであろうか、祐宗が口を開く。
祐宗
「教晴殿に義久殿よ。良かろう、我が軍への参陣を許そうぞ。目指すは継晴の首である!全軍で総攻撃をかけるのじゃ!」
こうして三浦教晴軍と黒松軍は志太軍として参陣し、共に幕府軍を滅ぼすべく再び攻撃を始めたのであった。
義久と教晴による志太軍の寝返りにより、戦局は大きく変わろうとしていた。
★現在の戦況
志太連合軍(総兵数 7,400人)
志太軍
計 1,500人
口羽軍
計 2,000人
秋庭軍
計 300人
郷田軍
計 300人
堀内軍
計 300人
木内軍
計 1,000人
黒松軍
計 1,000人
三浦教晴軍
計 1,000人
幕府軍(総兵数 3,000人)
幕府軍
計 3,000人
義久の軍勢が幕府軍に対して攻撃を開始する前の事である。
教晴の手によって人質が無事に解放された事を知った義久は、志太軍への攻撃を止めた。
刀を手にしていた者は鞘へと収め、槍を手にしていた者は地面に置くなどして志太軍に対して敵意が無い事を示していた。
そして軍勢の中から一人の武将が祐宗たちの前に現れた。
義久である。
義久
「志太殿よ!先刻までの我らによる攻撃、真に身勝手であることは承知の上ではござるが、どうかお許しいただきたく存じます。」
そう言うと義久は祐宗らに対して深々と頭を下げた。
そして続けて義久が言う。
義久
「これより拙者 黒松義久の軍勢は、三浦幕府将軍 継晴を討つべく志太殿にお味方いたしまする!」
この様子には志太軍も驚いた様子である。
先刻まで敵と味方に分かれて激しい戦いを繰り広げていたのであるから無理も無いだろう。
その言葉を聞いた祐永が義久に対して冷ややかな目を向けて言う。
祐永
「これはこれは…義久殿よ、随分と都合の良きことを申されますな。」
すると、そんな祐永を制止するようにすかさず祐宗が言う。
祐宗
「良い、祐永よ。その者の話を聞こうではないか。」
どうやら祐宗は、今回の義久の行動に何か深い訳があるのだろうと感じていた。
義久
「ははっ、恐れ入りまする。では…」
義久は語り始めた。
将軍である継晴の悪政によって領民たちが今もなお苦しめられている事。
幕府に対して忠誠を誓わせる為、幕臣たちの家族が人質として差し出されている事。
また、謀叛の疑いをかけられた場合はたちまちその人質らが容赦なく処刑されてしまう事。
など、この世の地獄とも言える程の苦痛を幕府が領民たちに与え続けている事を必死に伝えていた。
すると祐宗は深く頷き、全てを理解した様子で口を開く。
祐宗
「つまり、お主らは今の幕府に対しての絶望を掻き消す故の今回の行動であると申したいわけじゃな?」
義久が静かに答える。
義久
「はい…戦の無き泰平の世を訪れさせる為にもこうするしか手は無かった故…」
義久は言葉を詰まらせながらそう言っていた。
その時である。
義久の後方からもう一つの軍勢が近付いて来た。
その軍勢は、教晴のものであった。
教晴は祐宗らの前に立ち、堂々たる態度をして言う。
教晴
「余が三浦教晴にござる。父である継晴の悪政を根元から断たせるべく、志太軍に助太刀いたしまする!」
教晴は真剣な表情でそうしっかりと声を上げていた。
これに対し祐宗もまた真剣な様子で教晴に声をかける。
祐宗
「教晴殿と申したな。話は義久殿から聞かせてもらった。将軍殿の世継でありながらも、かような策を強行するのはさぞかし心が痛むであろう…」
祐宗は教晴に同情している様子であった。
「親子」と言う、切っても切れぬはずの「絆」が、継晴と教晴には存在しないのだ。
祐宗自身は、生まれた頃より父である祐藤とは堅い絆で結ばれていたが故に教晴の境遇を誰よりも不憫に感じていたようである。
すると教晴があっさりとした様子で答える。
教晴
「余は、継晴を父とは思うておらぬ。父上、いや 継晴は天魔じゃ。それ故に我らが成敗せねば泰平の世は永遠に訪れぬであろう。」
実の父を「天魔」とまで言い切るほど教晴は継晴に対して嫌悪感を抱いているようである。
また、教晴のその言葉からは親子としての絆など最早微塵も感じられない。
いずれにせよ、複雑な心境である事に間違いは無いであろう。
やがて教晴の言葉に確固たる覚悟を感じ取ったのであろうか、祐宗が口を開く。
祐宗
「教晴殿に義久殿よ。良かろう、我が軍への参陣を許そうぞ。目指すは継晴の首である!全軍で総攻撃をかけるのじゃ!」
こうして三浦教晴軍と黒松軍は志太軍として参陣し、共に幕府軍を滅ぼすべく再び攻撃を始めたのであった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話
下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。
主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる