架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第7章 天下分け目の大決戦編

70.三浦宮御所の戦い(23)

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教晴による人質解放の策が無事に完了した事を知った義久は、兵たちに対して継晴の軍勢への攻撃を命令。
義久と教晴による志太軍の寝返りにより、戦局は大きく変わろうとしていた。

★現在の戦況

志太連合軍(総兵数 7,400人)
志太軍
計 1,500人

口羽軍
計 2,000人

秋庭軍
計 300人

郷田軍
計 300人

堀内軍
計 300人

木内軍
計 1,000人

黒松軍
計 1,000人

三浦教晴軍
計 1,000人

幕府軍(総兵数 3,000人)
幕府軍
計 3,000人

義久の軍勢が幕府軍に対して攻撃を開始する前の事である。
教晴の手によって人質が無事に解放された事を知った義久は、志太軍への攻撃を止めた。
刀を手にしていた者は鞘へと収め、槍を手にしていた者は地面に置くなどして志太軍に対して敵意が無い事を示していた。

そして軍勢の中から一人の武将が祐宗たちの前に現れた。
義久である。

義久
「志太殿よ!先刻までの我らによる攻撃、真に身勝手であることは承知の上ではござるが、どうかお許しいただきたく存じます。」

そう言うと義久は祐宗らに対して深々と頭を下げた。
そして続けて義久が言う。

義久
「これより拙者 黒松義久の軍勢は、三浦幕府将軍 継晴を討つべく志太殿にお味方いたしまする!」

この様子には志太軍も驚いた様子である。
先刻まで敵と味方に分かれて激しい戦いを繰り広げていたのであるから無理も無いだろう。

その言葉を聞いた祐永が義久に対して冷ややかな目を向けて言う。

祐永
「これはこれは…義久殿よ、随分と都合の良きことを申されますな。」

すると、そんな祐永を制止するようにすかさず祐宗が言う。

祐宗
「良い、祐永よ。その者の話を聞こうではないか。」

どうやら祐宗は、今回の義久の行動に何か深い訳があるのだろうと感じていた。

義久
「ははっ、恐れ入りまする。では…」

義久は語り始めた。

将軍である継晴の悪政によって領民たちが今もなお苦しめられている事。
幕府に対して忠誠を誓わせる為、幕臣たちの家族が人質として差し出されている事。
また、謀叛の疑いをかけられた場合はたちまちその人質らが容赦なく処刑されてしまう事。

など、この世の地獄とも言える程の苦痛を幕府が領民たちに与え続けている事を必死に伝えていた。
すると祐宗は深く頷き、全てを理解した様子で口を開く。

祐宗
「つまり、お主らは今の幕府に対しての絶望を掻き消す故の今回の行動であると申したいわけじゃな?」

義久が静かに答える。

義久
「はい…戦の無き泰平の世を訪れさせる為にもこうするしか手は無かった故…」

義久は言葉を詰まらせながらそう言っていた。

その時である。
義久の後方からもう一つの軍勢が近付いて来た。
その軍勢は、教晴のものであった。

教晴は祐宗らの前に立ち、堂々たる態度をして言う。

教晴
「余が三浦教晴にござる。父である継晴の悪政を根元から断たせるべく、志太軍に助太刀いたしまする!」

教晴は真剣な表情でそうしっかりと声を上げていた。
これに対し祐宗もまた真剣な様子で教晴に声をかける。

祐宗
「教晴殿と申したな。話は義久殿から聞かせてもらった。将軍殿の世継でありながらも、かような策を強行するのはさぞかし心が痛むであろう…」

祐宗は教晴に同情している様子であった。

「親子」と言う、切っても切れぬはずの「絆」が、継晴と教晴には存在しないのだ。
祐宗自身は、生まれた頃より父である祐藤とは堅い絆で結ばれていたが故に教晴の境遇を誰よりも不憫に感じていたようである。

すると教晴があっさりとした様子で答える。

教晴
「余は、継晴を父とは思うておらぬ。父上、いや 継晴は天魔じゃ。それ故に我らが成敗せねば泰平の世は永遠に訪れぬであろう。」

実の父を「天魔」とまで言い切るほど教晴は継晴に対して嫌悪感を抱いているようである。
また、教晴のその言葉からは親子としての絆など最早微塵も感じられない。
いずれにせよ、複雑な心境である事に間違いは無いであろう。

やがて教晴の言葉に確固たる覚悟を感じ取ったのであろうか、祐宗が口を開く。

祐宗
「教晴殿に義久殿よ。良かろう、我が軍への参陣を許そうぞ。目指すは継晴の首である!全軍で総攻撃をかけるのじゃ!」

こうして三浦教晴軍と黒松軍は志太軍として参陣し、共に幕府軍を滅ぼすべく再び攻撃を始めたのであった。
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https://samuramagosen.themedia.jp/
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