架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
287 / 549
第7章 天下分け目の大決戦編

61.三浦宮御所の戦い(14)

しおりを挟む
秋庭家春・郷田直胤・堀内為永ら三武将が揃う連合援軍は木内軍による激しい攻撃を受け、全軍が大乱れの状態となっていた。
さらに木内軍は秋庭軍に対して追い込みを行い、家春討死の危機に瀕していた。
しかしその瞬間に政豊は攻撃停止を命令し、今度は祐藤の構える本陣への突撃命令を下した。

政豊
「よしよし、これであやつらは儂らの軍に対して恐れをなしたであろう。」

政豊は満足げな顔をしていた。
そして側に控えていた一人の男に声をかける。

政豊
「おい、彦八よ!これより志太の殿様の首を取りに行くぞ!儂について参れ!」

彦八
「はっ!お頭!いよいよ我らの出番ですな!腕が鳴りますわい!」

その男の名は彦八と言い、政豊の参謀的存在の男であった。

・彦八(ひこはち)
政豊の側近。
柳城下のとある町大工の息子に生まれる。
幼少期より素行が悪く、たびたび町民を悩ませていたと言われている。
ある日、領内で狼藉を働く木内政豊と争い、敗北する。
その後は政豊に忠誠を尽くす事を誓い、盗賊衆の子分となる。
そこで天性の軍略・采配能力を発揮し、武力が物を言う盗賊衆の中で異質の存在を放つ。
やがてその能力を政豊に高く買われ、側近にまで出世。
数多くの奇襲戦法は彦八が思案し、遂行させたと言われている。

祐永
「むっ、どうやら政豊らが動き出したようにございますな。」

政豊の動きをいち早く感じた祐永がそう言った。
すると彦八が祐宗らの軍勢に向けて落ち着いた様子で言う。

彦八
「さてと、ここから先はあんたらに追われては困るもんでな。ちょいとここで留まってもらうぜ。」

そう言うと彦八は兵たちに合図を出した。
兵たちは液体の入った瓶を取り出し、勢いよく地面に向けて叩きつけた。
あちこちで瓶の割れる音がけたたましく響き渡っていた。

彦八
「よし!準備よし!お前たちよ、やれ!」

兵たちは割れた瓶から溢れだした液体に向けて鉄砲の火種を落とした。
その瞬間、凄まじい音とともに大きな炎が発生した。
炎はあちこちで激しく燃え盛り、容易に消火する事はできない様子である。

彦八
「ははは、来れるものなら来てみるが良い。最も、こちらに来られたとしてもお主らは黒焦げぞ。」

どうやらこの液体の正体は、油のようである。
しかもこの油は、勢い良く燃えてかつ消火しにくいように政豊ら盗賊衆の人間が独自に手を加えて作られたものだ。
その可燃性は、現代においてのガソリンに匹敵するほどであったと言われている。

政豊
「お前たちはここでゆっくりと火遊びでもしておれ!」

政豊は吐き捨てるようにそう言った。
この様子を目の当たりにした祐宗は、一瞬にして焦りの表情に切り替わった。

祐宗
「い、いかん!このままでは本陣が危ない!奴らの侵入を許してはならぬ!」

今まさに、祐藤の構える本陣に政豊らの兵たちが侵入しようとしている。
祐藤は陣中で病気が悪化したことにより、現在も休息中だ。
そのような状態で敵軍の脅威にさらされようものなら、祐藤は容易に討たれてしまうであろう。

総大将である祐藤が討たれてしまえば全軍の士気の著しい低下は不可避。
そうなれば志太軍は幕府軍を前にして全軍撤退を余儀なくされるであろう。
ゆえにこれは敗北を意味し、目前に差し迫っていた志太家による天下統一が遠ざかる事にも繋がりかねない。

そうした事から祐宗はこれまでに無いほどに取り乱していた。

祐永
「し、しかし…我らの前には炎が…これでは政豊らを追うことはできませぬぞ!」

この現状に祐永も焦りの表情を見せていた。

祐宗
「うぬぬぬぬ…政豊!この卑怯者めが!」

祐宗は下唇を噛み締め、悔しそうな表情をしていた。
そんな祐宗を見た政豊が大声をあげた。

政豊
「ふふん、何とでも言え!儂ら盗賊衆は勝つ為には手段は選ばぬ。よぉく覚えておくこったな!」

その言葉を聞いた祐宗たちは、政豊を鬼のような形相で睨みつけていた。
そして間髪入れずに政豊が言う。

政豊
「さてさて、今度こそ志太の殿様の顔を拝みに参ろうかのぅ。あばよ!殿様の息子さんたちよ!」

そうして政豊たちは、本陣を目指して走って行った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

江戸の夕映え

大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。 「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三) そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。 同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。 しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...