架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第7章 天下分け目の大決戦編

61.三浦宮御所の戦い(14)

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秋庭家春・郷田直胤・堀内為永ら三武将が揃う連合援軍は木内軍による激しい攻撃を受け、全軍が大乱れの状態となっていた。
さらに木内軍は秋庭軍に対して追い込みを行い、家春討死の危機に瀕していた。
しかしその瞬間に政豊は攻撃停止を命令し、今度は祐藤の構える本陣への突撃命令を下した。

政豊
「よしよし、これであやつらは儂らの軍に対して恐れをなしたであろう。」

政豊は満足げな顔をしていた。
そして側に控えていた一人の男に声をかける。

政豊
「おい、彦八よ!これより志太の殿様の首を取りに行くぞ!儂について参れ!」

彦八
「はっ!お頭!いよいよ我らの出番ですな!腕が鳴りますわい!」

その男の名は彦八と言い、政豊の参謀的存在の男であった。

・彦八(ひこはち)
政豊の側近。
柳城下のとある町大工の息子に生まれる。
幼少期より素行が悪く、たびたび町民を悩ませていたと言われている。
ある日、領内で狼藉を働く木内政豊と争い、敗北する。
その後は政豊に忠誠を尽くす事を誓い、盗賊衆の子分となる。
そこで天性の軍略・采配能力を発揮し、武力が物を言う盗賊衆の中で異質の存在を放つ。
やがてその能力を政豊に高く買われ、側近にまで出世。
数多くの奇襲戦法は彦八が思案し、遂行させたと言われている。

祐永
「むっ、どうやら政豊らが動き出したようにございますな。」

政豊の動きをいち早く感じた祐永がそう言った。
すると彦八が祐宗らの軍勢に向けて落ち着いた様子で言う。

彦八
「さてと、ここから先はあんたらに追われては困るもんでな。ちょいとここで留まってもらうぜ。」

そう言うと彦八は兵たちに合図を出した。
兵たちは液体の入った瓶を取り出し、勢いよく地面に向けて叩きつけた。
あちこちで瓶の割れる音がけたたましく響き渡っていた。

彦八
「よし!準備よし!お前たちよ、やれ!」

兵たちは割れた瓶から溢れだした液体に向けて鉄砲の火種を落とした。
その瞬間、凄まじい音とともに大きな炎が発生した。
炎はあちこちで激しく燃え盛り、容易に消火する事はできない様子である。

彦八
「ははは、来れるものなら来てみるが良い。最も、こちらに来られたとしてもお主らは黒焦げぞ。」

どうやらこの液体の正体は、油のようである。
しかもこの油は、勢い良く燃えてかつ消火しにくいように政豊ら盗賊衆の人間が独自に手を加えて作られたものだ。
その可燃性は、現代においてのガソリンに匹敵するほどであったと言われている。

政豊
「お前たちはここでゆっくりと火遊びでもしておれ!」

政豊は吐き捨てるようにそう言った。
この様子を目の当たりにした祐宗は、一瞬にして焦りの表情に切り替わった。

祐宗
「い、いかん!このままでは本陣が危ない!奴らの侵入を許してはならぬ!」

今まさに、祐藤の構える本陣に政豊らの兵たちが侵入しようとしている。
祐藤は陣中で病気が悪化したことにより、現在も休息中だ。
そのような状態で敵軍の脅威にさらされようものなら、祐藤は容易に討たれてしまうであろう。

総大将である祐藤が討たれてしまえば全軍の士気の著しい低下は不可避。
そうなれば志太軍は幕府軍を前にして全軍撤退を余儀なくされるであろう。
ゆえにこれは敗北を意味し、目前に差し迫っていた志太家による天下統一が遠ざかる事にも繋がりかねない。

そうした事から祐宗はこれまでに無いほどに取り乱していた。

祐永
「し、しかし…我らの前には炎が…これでは政豊らを追うことはできませぬぞ!」

この現状に祐永も焦りの表情を見せていた。

祐宗
「うぬぬぬぬ…政豊!この卑怯者めが!」

祐宗は下唇を噛み締め、悔しそうな表情をしていた。
そんな祐宗を見た政豊が大声をあげた。

政豊
「ふふん、何とでも言え!儂ら盗賊衆は勝つ為には手段は選ばぬ。よぉく覚えておくこったな!」

その言葉を聞いた祐宗たちは、政豊を鬼のような形相で睨みつけていた。
そして間髪入れずに政豊が言う。

政豊
「さてさて、今度こそ志太の殿様の顔を拝みに参ろうかのぅ。あばよ!殿様の息子さんたちよ!」

そうして政豊たちは、本陣を目指して走って行った。
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