架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

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第7章 天下分け目の大決戦編

39.避けられぬ戦い

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継晴による徹底抗戦の意向はすぐに志太家の耳に入る事となった。

祐藤
「継晴殿はどうしても我らと一戦交えたいようじゃな。」

貞勝
「どうやらそのようにございますな。」

祐藤らは溜息をついていた。
現在の圧倒的不利な状況を分かっていながらも強気な姿勢を見せる継晴が理解出来なかったからである。

これは「将軍」という身分を無くす事によって自身の居場所を奪われたく無いが為の行動である事にほぼ間違いは無いと言っても良いであろう。
本来、このような不安を感じた際は継晴のような行動を起こすのが人間の常。

しかし「武士」という身分であらば、潔く身を退く事も美学であると言う風潮が存在している。
それ故に今回の継晴の行動は、この時代を生きる者たちにとっては異端者として映っていたようである。

すると、祐宗が祐藤に対して意見を述べ始めた。

祐宗
「父上、最早我らは武力行使に出る他に手はありませぬ。乱世を終わらせる為にも今一度、幕府軍と戦を行いましょうぞ!」

祐宗は、継晴の挑戦的とも言える態度に対してこちらも武力で対抗意向のようだ。
その言葉に対して祐藤は軽く頷いた後に、不安げな表情を見せて言った 。

祐藤
「うむ、祐宗の申す通りである。じゃが、再び戦を始めるとなれば鳥居景綱も幕府軍として参戦するであろうな…」

祐藤は、鳥居景綱に対して警戒している様子であった。

景綱は、志太家らの手によって攻め滅ぼされた大名 鳥居景望の孫である。
黒子城攻めで祖父の景望と父の景経の死によって路頭に迷った景綱は名を変えて辺境の地で民に身を落とし、不遇な生活を強いられていたという。

大名家の当主の血筋に生まれたものの、この没落ぶりは凄まじいものである。
その屈辱は、想像を絶するものであったと言えよう。

やがて時は流れて景綱が青年となった頃、幕府の黒松義政による志太家の討伐の協力要請に承諾。
こうして景綱は幕府軍として武将に復帰する事となった。
志太家に対する復讐心は、一日たりとも忘れる事が無かったという景綱にとってこの出来事は正に好機であった。

祐藤は、志太家に対して想像以上とも言える敵意を剥き出しにした景綱に対して底知れぬ恐ろしさを感じていた。

すると、貞勝が何かを思い出したかのような表情で祐藤に対して言った。
何やら名案が浮かんだ様子である。

貞勝
「殿、それならば木内政豊殿を我が軍に引き入れてはいかがでございましょうか。かの者の力を借りれば我が軍の士気も安定しましょうぞ。」

貞勝は、先の国米の戦いにおいて志太軍の窮地を救った木内政豊を味方につける事を提案した。

祐藤
「政豊殿か…あの者の戦いぶりには真に惚れ惚れさせられたものよな。」

政豊は、幕府軍に押されて壊滅寸前の志太軍の前に突如として現れた言わば救世主のような存在である。
かつては敵同士として一戦を交えていたが、後に口羽崇冬に破れた事で討死したと思われていた。

しかし、帰還後に政豊は奇跡的にも一命をとりとめた。
九死に一生を得た政豊は、後に幕府軍との戦いで押しかけで援軍として参戦。

政豊は、その際に祐藤に対して「志太祐藤はこのような場で死すべき者では無い」と言い放つ。
それは祐藤が、志太家がこの創天国を統べる者として相応しい存在であると暗に言っているようであった。
こうした経緯からも、政豊を味方に引き入れる事は志太家にとっても良い話であろう。

しかし、祐藤は難しげな顔をして言った。

祐藤
「されど政豊殿は各国を渡り歩く盗賊の頭である故、居場所が分からぬぞ。」

政豊は、柊家の滅亡後に再び盗賊の頭として部下たちを従えていた。
同じ地に定住する事で、その地の大名たちから討伐される事を恐れた政豊は、各国を転々と渡り住む言わば流浪の生活を送っていた。

貞勝
「それならば、忍びの者に探させるのが良いかと。政豊殿が味方に加われば三浦宮御所など容易に落とせましょう。」

祐藤
「うむ、それは実に良きことである。政豊殿を探し出し、我が志太家に引き入れるのじゃ。」

貞勝
「ははっ、それでは直ちに忍びの者らを放ちましょうぞ。」

こうして政豊を探すという任務を遂行する為、志太家の忍びたちが各国に放たれたのであった。
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