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第7章 天下分け目の大決戦編

34.圧力

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実重が桐丘島の現状調査から戻った翌日、祐藤は三浦宮御所を訪れていた。
祐藤と対面した継晴は、鬼のような形相をして叫び始めた。

継晴
「志太祐藤め!貴様!よくもぬけぬけと余の前に現れたな!」

継晴は、地獄式爆弾の攻撃によって桐丘城下を一瞬にして地獄に変えた祐藤に対して強い憎しみを剥き出しにしていた。
しかし祐藤は、継晴のそのような様子に対してもどこ吹く風と言わんばかりの表情をして口を開いた。

祐藤
「当家としては、継晴殿に忠告を申したはずにございます。しかしながら継晴殿は、その忠告を聞き入れられなかった。かくなるうえは、武をもってお分かりいただくこともやむ無しとの判断故のことにございます。」

継晴
「貴様!我が家臣の義成や桐丘城下の領民たちまで巻き込むことが正義と申すか!」

継晴は、志太家が地獄式爆弾の使用で桐丘城下において多くの犠牲者を出した事に対して強く非難していた。
罪無き領民までもが地獄式爆弾の餌食となった事に対しての非難に関しては確かに一理あろう。

すると祐藤は、険しい表情をして口を開いた。

祐藤
「ではお聞きいたしますが、泰平の世の為に将軍家が何か一つでも尽力なされたことがございましょうか?我らから申させていただきますと、己の保身の為に都合の悪きことばかりを我らに押し付けるそちらのほうが悪かと存じます。よって、武をもって我らが将軍家を退ける他に手は無い故に此度の攻撃に至った次第にございます。」

祐藤は、継晴の非難の声に対してここぞとばかりに反論の言葉を述べた。
全ては天下泰平の世を目指す為の犠牲である、と言う志太家側の方便である。

継晴
「えぇい!うるさいわい!いちいち御託を並べおって!」

祐藤によって痛い所を突かれた継晴は、怒鳴り声をあげていた。
そして、そんな継晴をなだめるような口調で祐藤が言う。

祐藤
「継晴殿よ、悪きことは申しませぬ。もう三浦幕府は終わらせるべきにございます。将軍の座を離れられて今は桐丘島の復興に尽力いただけませぬか。」

祐藤はそう言うと、次のような内容を継晴に述べていた。

①三浦家は将軍の座から離脱するべし
幕府として乱世を終結させるべく対策を何一つ講じずにただただ将軍家として胡座をかきつづけた結果、混乱した情勢が一層の激しさを増した事は紛れも無い事実である。
それ故に、最早三浦将軍家は何の意味も無い。
そのような機関は即刻に取り潰すべきと考える。
こうして祐藤は、十四代に渡って続いた三浦幕府に幕を閉じさせようとした。

②桐丘城下の復興支援を三浦家が全面的に行うべし
今回、地獄式爆弾によって被害を受けた桐丘城ならびに桐丘城下を完全に復興する為の費用を全て三浦家から捻出させる。
近世の戦争において敗戦国が戦勝国に対して賠償金を支払うと言ったイメージである。
勝った国が正義で負けた国が悪といった図式であるが、この創天国においては志太家を支持する大名家が大半で存在しているという事実もあってか、その思想が色濃く反映されていたという。

③三浦家は民に身分を落とすべし
三浦家が将軍家から離脱した後は、一国の民に身を落とさせようとしていた。
これは、三浦家を武家として残しておく事でその子孫たちが再び復古を目指して立ち上がる事を恐れた故である。
祐藤は当初、三浦家の一族を根絶やしにすべく大々的な処刑も検討していたが、古来より続いた名家の血筋を途絶えさせる事を忍びないと感じており、せめてもの恩情としての事であったという。

継晴
「何じゃと?貴様、余で将軍家を終わらせよと申すのか…」

継晴は、祐藤の言葉に自分に耳を疑っていた。
将軍である自身が一大名に責め立てられるとは思いも寄らなかったからである。

そして、そんな継晴にとどめを刺すかのように祐藤が続いて口を開く。

祐藤
「左用にございます。これらのことを聞き入れられぬようであれば…次は三浦宮御所が犠牲となりましょうぞ。これは脅しではござらぬ。よくお考えくだされ。」

祐藤は真剣な眼差しを継晴に向けてそう言った。

継晴
「うぬぬぬ…成り上がりの大名ふぜいが調子に乗りおって…」

継晴は悔しげな表情で祐藤を睨みつけていた。

祐藤
「継晴殿、どうか良きお返事をお待ちしておりますぞ。それでは拙者はこれにて失礼いたします。」

そう言うと祐藤は御所を後にした。
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