260 / 549
第7章 天下分け目の大決戦編
34.圧力
しおりを挟む
実重が桐丘島の現状調査から戻った翌日、祐藤は三浦宮御所を訪れていた。
祐藤と対面した継晴は、鬼のような形相をして叫び始めた。
継晴
「志太祐藤め!貴様!よくもぬけぬけと余の前に現れたな!」
継晴は、地獄式爆弾の攻撃によって桐丘城下を一瞬にして地獄に変えた祐藤に対して強い憎しみを剥き出しにしていた。
しかし祐藤は、継晴のそのような様子に対してもどこ吹く風と言わんばかりの表情をして口を開いた。
祐藤
「当家としては、継晴殿に忠告を申したはずにございます。しかしながら継晴殿は、その忠告を聞き入れられなかった。かくなるうえは、武をもってお分かりいただくこともやむ無しとの判断故のことにございます。」
継晴
「貴様!我が家臣の義成や桐丘城下の領民たちまで巻き込むことが正義と申すか!」
継晴は、志太家が地獄式爆弾の使用で桐丘城下において多くの犠牲者を出した事に対して強く非難していた。
罪無き領民までもが地獄式爆弾の餌食となった事に対しての非難に関しては確かに一理あろう。
すると祐藤は、険しい表情をして口を開いた。
祐藤
「ではお聞きいたしますが、泰平の世の為に将軍家が何か一つでも尽力なされたことがございましょうか?我らから申させていただきますと、己の保身の為に都合の悪きことばかりを我らに押し付けるそちらのほうが悪かと存じます。よって、武をもって我らが将軍家を退ける他に手は無い故に此度の攻撃に至った次第にございます。」
祐藤は、継晴の非難の声に対してここぞとばかりに反論の言葉を述べた。
全ては天下泰平の世を目指す為の犠牲である、と言う志太家側の方便である。
継晴
「えぇい!うるさいわい!いちいち御託を並べおって!」
祐藤によって痛い所を突かれた継晴は、怒鳴り声をあげていた。
そして、そんな継晴をなだめるような口調で祐藤が言う。
祐藤
「継晴殿よ、悪きことは申しませぬ。もう三浦幕府は終わらせるべきにございます。将軍の座を離れられて今は桐丘島の復興に尽力いただけませぬか。」
祐藤はそう言うと、次のような内容を継晴に述べていた。
①三浦家は将軍の座から離脱するべし
幕府として乱世を終結させるべく対策を何一つ講じずにただただ将軍家として胡座をかきつづけた結果、混乱した情勢が一層の激しさを増した事は紛れも無い事実である。
それ故に、最早三浦将軍家は何の意味も無い。
そのような機関は即刻に取り潰すべきと考える。
こうして祐藤は、十四代に渡って続いた三浦幕府に幕を閉じさせようとした。
②桐丘城下の復興支援を三浦家が全面的に行うべし
今回、地獄式爆弾によって被害を受けた桐丘城ならびに桐丘城下を完全に復興する為の費用を全て三浦家から捻出させる。
近世の戦争において敗戦国が戦勝国に対して賠償金を支払うと言ったイメージである。
勝った国が正義で負けた国が悪といった図式であるが、この創天国においては志太家を支持する大名家が大半で存在しているという事実もあってか、その思想が色濃く反映されていたという。
③三浦家は民に身分を落とすべし
三浦家が将軍家から離脱した後は、一国の民に身を落とさせようとしていた。
これは、三浦家を武家として残しておく事でその子孫たちが再び復古を目指して立ち上がる事を恐れた故である。
祐藤は当初、三浦家の一族を根絶やしにすべく大々的な処刑も検討していたが、古来より続いた名家の血筋を途絶えさせる事を忍びないと感じており、せめてもの恩情としての事であったという。
継晴
「何じゃと?貴様、余で将軍家を終わらせよと申すのか…」
継晴は、祐藤の言葉に自分に耳を疑っていた。
将軍である自身が一大名に責め立てられるとは思いも寄らなかったからである。
そして、そんな継晴にとどめを刺すかのように祐藤が続いて口を開く。
祐藤
「左用にございます。これらのことを聞き入れられぬようであれば…次は三浦宮御所が犠牲となりましょうぞ。これは脅しではござらぬ。よくお考えくだされ。」
祐藤は真剣な眼差しを継晴に向けてそう言った。
継晴
「うぬぬぬ…成り上がりの大名ふぜいが調子に乗りおって…」
継晴は悔しげな表情で祐藤を睨みつけていた。
祐藤
「継晴殿、どうか良きお返事をお待ちしておりますぞ。それでは拙者はこれにて失礼いたします。」
そう言うと祐藤は御所を後にした。
祐藤と対面した継晴は、鬼のような形相をして叫び始めた。
継晴
「志太祐藤め!貴様!よくもぬけぬけと余の前に現れたな!」
継晴は、地獄式爆弾の攻撃によって桐丘城下を一瞬にして地獄に変えた祐藤に対して強い憎しみを剥き出しにしていた。
しかし祐藤は、継晴のそのような様子に対してもどこ吹く風と言わんばかりの表情をして口を開いた。
祐藤
「当家としては、継晴殿に忠告を申したはずにございます。しかしながら継晴殿は、その忠告を聞き入れられなかった。かくなるうえは、武をもってお分かりいただくこともやむ無しとの判断故のことにございます。」
継晴
「貴様!我が家臣の義成や桐丘城下の領民たちまで巻き込むことが正義と申すか!」
継晴は、志太家が地獄式爆弾の使用で桐丘城下において多くの犠牲者を出した事に対して強く非難していた。
罪無き領民までもが地獄式爆弾の餌食となった事に対しての非難に関しては確かに一理あろう。
すると祐藤は、険しい表情をして口を開いた。
祐藤
「ではお聞きいたしますが、泰平の世の為に将軍家が何か一つでも尽力なされたことがございましょうか?我らから申させていただきますと、己の保身の為に都合の悪きことばかりを我らに押し付けるそちらのほうが悪かと存じます。よって、武をもって我らが将軍家を退ける他に手は無い故に此度の攻撃に至った次第にございます。」
祐藤は、継晴の非難の声に対してここぞとばかりに反論の言葉を述べた。
全ては天下泰平の世を目指す為の犠牲である、と言う志太家側の方便である。
継晴
「えぇい!うるさいわい!いちいち御託を並べおって!」
祐藤によって痛い所を突かれた継晴は、怒鳴り声をあげていた。
そして、そんな継晴をなだめるような口調で祐藤が言う。
祐藤
「継晴殿よ、悪きことは申しませぬ。もう三浦幕府は終わらせるべきにございます。将軍の座を離れられて今は桐丘島の復興に尽力いただけませぬか。」
祐藤はそう言うと、次のような内容を継晴に述べていた。
①三浦家は将軍の座から離脱するべし
幕府として乱世を終結させるべく対策を何一つ講じずにただただ将軍家として胡座をかきつづけた結果、混乱した情勢が一層の激しさを増した事は紛れも無い事実である。
それ故に、最早三浦将軍家は何の意味も無い。
そのような機関は即刻に取り潰すべきと考える。
こうして祐藤は、十四代に渡って続いた三浦幕府に幕を閉じさせようとした。
②桐丘城下の復興支援を三浦家が全面的に行うべし
今回、地獄式爆弾によって被害を受けた桐丘城ならびに桐丘城下を完全に復興する為の費用を全て三浦家から捻出させる。
近世の戦争において敗戦国が戦勝国に対して賠償金を支払うと言ったイメージである。
勝った国が正義で負けた国が悪といった図式であるが、この創天国においては志太家を支持する大名家が大半で存在しているという事実もあってか、その思想が色濃く反映されていたという。
③三浦家は民に身分を落とすべし
三浦家が将軍家から離脱した後は、一国の民に身を落とさせようとしていた。
これは、三浦家を武家として残しておく事でその子孫たちが再び復古を目指して立ち上がる事を恐れた故である。
祐藤は当初、三浦家の一族を根絶やしにすべく大々的な処刑も検討していたが、古来より続いた名家の血筋を途絶えさせる事を忍びないと感じており、せめてもの恩情としての事であったという。
継晴
「何じゃと?貴様、余で将軍家を終わらせよと申すのか…」
継晴は、祐藤の言葉に自分に耳を疑っていた。
将軍である自身が一大名に責め立てられるとは思いも寄らなかったからである。
そして、そんな継晴にとどめを刺すかのように祐藤が続いて口を開く。
祐藤
「左用にございます。これらのことを聞き入れられぬようであれば…次は三浦宮御所が犠牲となりましょうぞ。これは脅しではござらぬ。よくお考えくだされ。」
祐藤は真剣な眼差しを継晴に向けてそう言った。
継晴
「うぬぬぬ…成り上がりの大名ふぜいが調子に乗りおって…」
継晴は悔しげな表情で祐藤を睨みつけていた。
祐藤
「継晴殿、どうか良きお返事をお待ちしておりますぞ。それでは拙者はこれにて失礼いたします。」
そう言うと祐藤は御所を後にした。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる