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第7章 天下分け目の大決戦編
33.荒廃
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信常の発明した地獄式爆弾が桐丘城で炸裂。
その破壊力は想像を絶するものであった。
爆発の衝撃によって桐丘城は完全に崩壊し、城下町もその被害を受けていた。
その後、祐藤は直ちに詳しい被害状況の調査の為に竹呉島の忍びである神内実重を桐丘島に送り込んでいた。
これは、爆弾による被害を受けた地域は混乱が発生する事が想定される為、忍びであれば暴動などのリスクに巻き込まれず逃亡が容易に行える故の判断であった。
桐丘城下に到着した実重は、思わずその惨状に口を開く。
実重
「うむぅ…これは…真に酷い有様じゃな…」
地獄式爆弾による被害を受けた桐丘城下は、まさしくこの世の地獄とも言える様子であったという。
その中で城下の領民たちと思わしき遺体も多く見受けられており、損傷が激しく人体である事を認識できる遺体も珍しくは無かった。
このような目を覆いたくなるほどの惨劇が、つい先刻前に起こったのである。
やがて実重は、城下でのある異変に気が付いた。
実重
「それにしてもこの辺りは粘りのある黒い煤があちらこちらに目立つのぅ。これは一体何じゃ。」
地獄式爆弾が凄まじい勢いで爆発を起こして発生した黒煙が一気に上空へと舞い上がった。
やがてその黒煙は上空の雨雲と混じり、雨となって桐丘の地に降り注いだ。
これは、近代の戦争において爆撃後によって発生した黒煙が塵と混じり合い、上空まで舞い上げられる事で更に雨雲と混じって雨となる所謂「黒い雨」と呼ばれる現象である。
どうやらその「黒い雨」が、今回の地獄式爆弾の爆発によって引き起こされたようである。
この「黒い雨」は、放射性物質を含む核兵器においてその影響が後々の健康被害として顕著に現れるという。
今回の地獄式爆弾に関して言えば放射性物質こそ含んではいないものの、それでも黒色を帯びた雨である故に人体に影響が出ないとは言い切れないであろう。
やがて実重は、城下町を通って桐丘城の方面を目指したが進めど進めどそれらしき物が見当たらなかった。
あるのは、おびただしい量の瓦礫があちこちに散乱している景色のみである。
その時、実重がふと何かに気付いた様子で口を開いた。
実重
「まさか…この瓦礫の山が桐丘城というのか…?」
実重は目を疑った。
そこにあるべきはずの桐丘城が原型を留める事無く完全に崩壊していた為、それが桐丘城の物である事を認識するまでには少しの時間がかかっていた。
地獄式爆弾が天守に着弾したと同時に凄まじい轟音と共に桐丘城は一瞬にして崩れ去ったと思われる。
辺りには砕け散った石垣や瓦の破片などが瓦礫の山となって散乱していた。
実重
「地獄式爆弾と申す物は真に恐ろしき兵器であるな…」
実重は目の前の惨劇を見て、地獄式爆弾の恐るべき破壊力を改めて実感させられていた。
そしてしばらく辺りを見回したのちに、実重が何かを見つけていた。
実重
「むっ、ここに誰かおったようじゃな。残念ながら既に亡くなってはおるがのぅ。」
実重は、桐丘城の天守であろう場所に積まれた瓦礫の山から白骨化した遺体を発見した。
損傷は激しくあらゆる部分が欠けてこそいるが、それが人骨であるという事をかろうじて認識できた。
さらに遺体を調べてみると、その傍らに一本の太刀が焼ける事無く残されていた。
その太刀は埃こそかぶってはいるものの、身分が上の者であるような高貴さがあった。
実重
「むっ、この太刀は確か…将軍家の中でも限られた幕臣のみが持つことを許される榊光ではないか。すると、この者が黒松義成であるのか…」
・榊光(さかきびかり)
代々の将軍家が愛用していたとされる太刀。
武家中心の封建社会において太刀は権威の象徴を意味し、豪華できらびやかな物が好まれたという。
特に榊光は、全ての大名家を束ねし武家社会の頂点である将軍家に相応しいと言っても良い程に華美に彩られており、見る者を魅了させられるほどである。
全体が眩いほどの黄金色に染まった中に、三浦将軍家の家紋である榊の葉がところかしこに細かく刻み込まれており、神々しさを感じられる。
この榊光は、将軍家の他には譜代衆である黒松氏が持つ事を許されていたという。
実重
「義成殿は最期の最期まで将軍家に対して忠誠を尽くされた武士の鏡。敵ながら天晴にござる。」
実重は、義成の遺体に手を合わせていた。
その破壊力は想像を絶するものであった。
爆発の衝撃によって桐丘城は完全に崩壊し、城下町もその被害を受けていた。
その後、祐藤は直ちに詳しい被害状況の調査の為に竹呉島の忍びである神内実重を桐丘島に送り込んでいた。
これは、爆弾による被害を受けた地域は混乱が発生する事が想定される為、忍びであれば暴動などのリスクに巻き込まれず逃亡が容易に行える故の判断であった。
桐丘城下に到着した実重は、思わずその惨状に口を開く。
実重
「うむぅ…これは…真に酷い有様じゃな…」
地獄式爆弾による被害を受けた桐丘城下は、まさしくこの世の地獄とも言える様子であったという。
その中で城下の領民たちと思わしき遺体も多く見受けられており、損傷が激しく人体である事を認識できる遺体も珍しくは無かった。
このような目を覆いたくなるほどの惨劇が、つい先刻前に起こったのである。
やがて実重は、城下でのある異変に気が付いた。
実重
「それにしてもこの辺りは粘りのある黒い煤があちらこちらに目立つのぅ。これは一体何じゃ。」
地獄式爆弾が凄まじい勢いで爆発を起こして発生した黒煙が一気に上空へと舞い上がった。
やがてその黒煙は上空の雨雲と混じり、雨となって桐丘の地に降り注いだ。
これは、近代の戦争において爆撃後によって発生した黒煙が塵と混じり合い、上空まで舞い上げられる事で更に雨雲と混じって雨となる所謂「黒い雨」と呼ばれる現象である。
どうやらその「黒い雨」が、今回の地獄式爆弾の爆発によって引き起こされたようである。
この「黒い雨」は、放射性物質を含む核兵器においてその影響が後々の健康被害として顕著に現れるという。
今回の地獄式爆弾に関して言えば放射性物質こそ含んではいないものの、それでも黒色を帯びた雨である故に人体に影響が出ないとは言い切れないであろう。
やがて実重は、城下町を通って桐丘城の方面を目指したが進めど進めどそれらしき物が見当たらなかった。
あるのは、おびただしい量の瓦礫があちこちに散乱している景色のみである。
その時、実重がふと何かに気付いた様子で口を開いた。
実重
「まさか…この瓦礫の山が桐丘城というのか…?」
実重は目を疑った。
そこにあるべきはずの桐丘城が原型を留める事無く完全に崩壊していた為、それが桐丘城の物である事を認識するまでには少しの時間がかかっていた。
地獄式爆弾が天守に着弾したと同時に凄まじい轟音と共に桐丘城は一瞬にして崩れ去ったと思われる。
辺りには砕け散った石垣や瓦の破片などが瓦礫の山となって散乱していた。
実重
「地獄式爆弾と申す物は真に恐ろしき兵器であるな…」
実重は目の前の惨劇を見て、地獄式爆弾の恐るべき破壊力を改めて実感させられていた。
そしてしばらく辺りを見回したのちに、実重が何かを見つけていた。
実重
「むっ、ここに誰かおったようじゃな。残念ながら既に亡くなってはおるがのぅ。」
実重は、桐丘城の天守であろう場所に積まれた瓦礫の山から白骨化した遺体を発見した。
損傷は激しくあらゆる部分が欠けてこそいるが、それが人骨であるという事をかろうじて認識できた。
さらに遺体を調べてみると、その傍らに一本の太刀が焼ける事無く残されていた。
その太刀は埃こそかぶってはいるものの、身分が上の者であるような高貴さがあった。
実重
「むっ、この太刀は確か…将軍家の中でも限られた幕臣のみが持つことを許される榊光ではないか。すると、この者が黒松義成であるのか…」
・榊光(さかきびかり)
代々の将軍家が愛用していたとされる太刀。
武家中心の封建社会において太刀は権威の象徴を意味し、豪華できらびやかな物が好まれたという。
特に榊光は、全ての大名家を束ねし武家社会の頂点である将軍家に相応しいと言っても良い程に華美に彩られており、見る者を魅了させられるほどである。
全体が眩いほどの黄金色に染まった中に、三浦将軍家の家紋である榊の葉がところかしこに細かく刻み込まれており、神々しさを感じられる。
この榊光は、将軍家の他には譜代衆である黒松氏が持つ事を許されていたという。
実重
「義成殿は最期の最期まで将軍家に対して忠誠を尽くされた武士の鏡。敵ながら天晴にござる。」
実重は、義成の遺体に手を合わせていた。
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