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第7章 天下分け目の大決戦編

22.対将軍家の準備

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長包は将軍家によって処刑され、桐丘島は幕府の管轄に置かれる事となり、桐丘城は黒松義成が新たに城主となった。
そしてその情報は、すぐに各国へと伝わっていった。



長包処刑の情報が入った志太家では、家臣たちを集めていた。

祐藤
「やはり思った通りじゃな。勝手に長包の方から自滅しおったわい。」

祐藤は、家臣たちの前でそう言った。

貞勝
「流石は殿にございます。これで我らは幕府軍に対して専念できるというわけにございますな。」

目標が定まった事に貞勝は一安心の様子である。
すると祐藤は、信常に目を合わせて口を開いた。

祐藤
「うむ、その件じゃが信常が動いてくれておる。のう信常よ。して、動きの経過はどうなっておるのじゃ?」

その問い掛けに対して信常は、すかさず答えた。

信常
「はっ、例の件ですが昨日ついに準備が整いました。大変遅くなりましたが、これで一気に世の流れを変えられるかと存じます。」

信常は自信満々の表情であった。

祐藤
「おぉ、そうかそれはちょうど良かった。では間もなく、将軍の座を我らが奪い取ることになろうぞ。」

祐藤は勝ち誇った様子でそう言っていた。
すると、その様子を見た祐宗が祐藤に対して意見を述べ始めた。

祐宗
「父上、その前にここは大神様へご挨拶に伺った方が良いかと。」

・大神(おおかみ)
この国における最高位の人物を指す。
創天大神が初代の大神に就き、後にその子孫が代々の大神を継承して現在にまで至る。

・創天大神(そうてんのおおかみ)
太古の昔、この国を創造したと伝わる人物。
法力によってこの国の地形や国民たちを産み出し、一つの国家として栄えさせたとされているが、あくまでも神話上での話である。
また、この時より創天国(そうてんのくに)として国名が定められたとされる。
いずれにせよ、創天大神によってこの国が建国された事に変わりは無い。

そして祐宗が続けて言う。

祐宗
「三浦将軍家は、創武大神様の頃が始祖にございます。それ故、我らの倒幕行為を現大神の創栄大神様がどうお思いになられるかですが…」

・創武大神(そうぶのおおかみ)
創天大神から数十代後に即位した大神。
この時代では各地で天災などが相次ぎ、国は大混乱に陥っていた。
そして当時は、各地を統率する存在の人物が曖昧だった事もあり、さらなる混乱を招いてしまう。
この事態を収束させるべく創武大神は、自身の部下たちを守護大名として任命し、各地で政を行う事で国を治めさせた。
さらにその守護大名の頂点とも言えるべき存在である将軍は、創武大神の側近として仕えていた三浦利晴(みうら としはる)を任命する事で統率を図った。
大神は国の創造主ということもあり、代々が絶対不可侵の存在として君臨し続けているが、これ以後は政には関与をしないというスタンスを保ち続ける事となる。

・創栄大神(そうえいのおおかみ)
現大神。
第十二代将軍の三浦秀晴の時代に各地で紛争が勃発し、時代は戦国の世へと突入する。
しかし、創武大神の頃より政に関与をしないことを貫き通していた為に大神は、最早形だけの最高位の人物に過ぎない存在となっていた。
創栄大神は、祖先の代より続く将軍家の行方をただ見守るしか無いといった現状である。

祐藤
「うむ、儂もそれを考えておる。この謁見で倒幕に対して大神様にもお許しをいただくつもりじゃ。さすれば我らは正義の名のもとに安心して幕府を滅ぼせられようぞ。」

志太家として大神の元を訪ね、将軍家を滅ぼす大義名分を得ようと祐藤は考えていた。
大神という国の最高位の人物に認められれば、天下統一も一気に成し遂げられると言っても良いであろう。

しかし、それに対して水を差すように貞勝が口を開いた。

貞勝
「ですが、もし大神様が我らによる倒幕にご反対なされることがございましたら如何なされるおつもりにございますか…」

祐藤の策略は事が全て問題なく運べばの話であり、あくまでも机上の空論に過ぎない。
想定外の事態が起こる可能性も十分に有り得るのだ。
そのリスクが存在するという事を、祐藤に対して諭すように貞勝は説明していた。

祐藤
「その時は…是非もなし…」

祐藤は、苦い顔をしてただ一言だけ呟いていた。
そしてしばらく間を置いた後に祐藤は、重い声を出して言った。

祐藤
「皆の者よ、良いか。天下を治めたる者は、全てにおいての覚悟を決めねばならぬ。その覚悟が無き者に天下を治める資格はござらん故、そのことを肝に銘じておくが良い。」

祐藤は、全てを覚悟した表情であった。
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