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第7章 天下分け目の大決戦編

06.静寂の真相

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志太家が幕府討伐対象に指定されてから3ヶ月の時が過ぎようとしていた。
志太家はこの状態に疑問を感じ始めていた。

祐藤
「それにしても幕府からの討伐対象である当家に対して何の動きもござらんな。まぁ、攻撃を受けておらぬだけでも良きことではあるがな…」

貞勝
「確かに、良きことにはございます。しかし余りにも静寂過ぎます故に、逆に気味が悪うございますな。」

貞勝は、幕府が志太家に対して何らかの策を練っているのでは無いかと考えていた。
それに対し祐藤が続けて言う。

祐藤
「それは儂も思うておったところじゃ。じゃが、幕府には黒松義政という油断のならぬ男がおる。この男が何やら企んでおるやも知れぬ…」

祐藤は、継晴の家臣である義政を恐れていた。
十年前に幕府が出したお触れや今回の志太家に対する一件は、義政が指示したものであると見抜いていたからである。
祐藤は、各国に牽制をきかせて幕府を再興させようとしている義政の手腕を、敵でありながらも見事であると高く評価をしていた。
同時にその存在を志太家としての脅威とも感じており、厄介な存在であった事にも違いは無かった。

貞勝
「義政殿、確かに恐るべし男にございますな…」

貞勝もまた義政の底知れぬ実力に対して恐れている様子であった。

祐藤
「それに、こちらからも忍びを三月前より三浦宮御所に放って探りを入れさせてはおるのじゃが、一向に情報が入って来ぬ…」

祐藤は、討伐対象となった日から幕府に対して忍びを送り込んでいたと言う。
しかし、忍びはこれといった情報を持ち帰る事が出来ずに三ヶ月という時が過ぎていった。
こうした事もあり、祐藤の不安は積もりに積もっていた。

すると、一人の忍びが祐藤の元へ駆け付けてきた。
忍びは祐藤の前で跪き、こう言った。

忍び
「祐藤様、幕府の動きが今しがた掴めました!」

どうやら忍びが幕府の情報を持ち帰る事にようやく成功したようである。

祐藤
「おぉ、やっと情報掴めたのじゃな?でかしたぞ!して、幕府は今どのようになっておるのじゃ?」

祐藤は食い入るように忍びに対して言った。

忍び
「ははっ、申し上げます。どうやら幕府では三月ほど前に家臣の義政殿が亡くなったようにございます。」

三月前、ちょうど幕府が志太家を討伐対象に指定した時期である。

祐藤
「ほう、すると義政殿はあの時既に亡くなっておったと申すか?」

祐藤は驚いた表情をしていた。
さらに続けて忍びが言った。

忍び
「はい。そして黒松家の家督は、義政殿の甥である義成殿が相続されたとのこと。しかし、幕府では混乱した状態が続いている様子にございました。」

どうやら非常に優れた武将であった義政を亡くした事による幕府の損失は大きかったようである。
それ故に幕府は今も混乱した状態だという。

祐藤
「なるほどのう。幕府が我らに対して動きを見せぬ理由はそういうことであったのじゃな。」

祐藤は忍びの持ち帰った情報を聞き、それが正しい情報であるとすぐに確信した。
義政が亡くなった事を志太家に知られぬように幕府側も派手に動く事ができなかったのであろう。
それ故に、厳重な警備が敷かれていた事で忍びによる潜入もここまで遅れてしまったのでないか、と。

貞勝
「殿、これは好機にございますぞ!」

祐藤
「うむ、すぐに軍議を開こうぞ。大名たちを集めて参れ!」

祐藤と貞勝は共に引き締まった表情をしていた。
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