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第7章 天下分け目の大決戦編

02.将軍の苛立ち

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前将軍である三浦祐晴の逝去により、新たに継晴が将軍に就任。
就任すると同時に幕府よりお触れを出した。
その内容は、十年以内の大名家同士の争い事の禁止と幕府への上納を義務付けるといった内容のものであった。

このお触れは、各国の大名家の存在をも揺るがす事態にまで発展した。
大名家によっては重税とも言われる上納金が支払えなくなるなど、破綻を招く事も珍しく無かった。
そうした大名家は、幕府に国を差し出して直轄地となる事を選ばざるを得なかったのである。
これにより、幕府の直轄地は激増。
三浦将軍家は、名実ともに幕府の名に相応しい大勢力を誇るようになっていた。

そして時は流れて十年後。
三浦宮御所内では将軍 継晴の姿があった。

継晴
「間もなく余が出したお触れの期限が近付いてきたようじゃな。」

継晴は、思い出したようにそう言った。

就任時は青年であった継晴も、歳を重ねた事で貫禄のある壮年の容姿へと変化を遂げていた。
恐らく「将軍」という最高権力者の座に就いた事による自信から来る物が大きかったのであろう。

義政
「どうやらそのようにございますな。」

相槌を打つように義政が言った。

義政は、前々将軍の秀晴の時代より幕府に仕えている老将である。
継晴が将軍に就任した十年前の時点でも相当な高齢ではあるが、現在もなお幕府を支える存在として前線に立っている。
しかしここ数年で体調を崩し始めており、寿命が近い事を悟った義政は、自身の甥である義成を正式な後継者に命じていた。

・黒松 義成(くろまつ よしなり)
義政の甥にあたる。
当初は義政の養子である義兼が黒松家の後継者候補であったが、急死した事で白紙となる。
義兼と梓姫との間に子が居なかった為、義政の甥である義成が選ばれる事となった。
義政自らによる教育の手ほどきを受けている事もあり、それ相応の器量を持ち合わせていたと言われている。

継晴
「この十年間で幕府の直轄地は増えた。じゃが、志太家は未だに幕府の直轄地となることを拒み続けておる。どうしたものかの。」

継晴は満ち足りない表情をしていた。

義政
「まさか、志太家がかような手段に出るとは…拙者も思いもよりませんでした…」

幕府によるお触れが出てすぐに志太家は、主要家臣に対して独立する事を命じた。
志太家の大勢力を解体し、家臣たちを新たな大名家として各地に分散させる事で上納制度の税率を一気に軽減させる目論見である。

当然ながら幕府は、この想定外とも言える志太家の対応を良くは思っていなかった。
そこで、大名家を新たに立ち上げる事を禁止にしようと幕府が動こうとしていた。
しかし、国の頂点とも言える幕府が朝令暮改のごとく条件を都合良く変えてしまえば各大名家は不信感を抱くであろう。
不信感が募る事が原因で幕府に叛意を抱く者を生み出さない為にも、志太家の対応を幕府はただ黙って見届けるしか無かったのである。

継晴
「えぇい!志太家は意地でも幕府の臣下とならぬと申すのか。」

継晴は、苛立ちの表情を見せていた。

将軍に就任する以前の継晴は、志太家に対して非常に友好的な姿勢を見せていた。
しかし、将軍に就任直後による義政の忠告に耳を傾けた継晴は、次第に志太家に対する不信感を募らせていった。
そして志太家による上納税率の軽減対策を行った事がきっかけとなり、継晴は完全に志太家に対して敵意を抱くようになったという。

継晴
「姑息な手を使ってまでもして国を守ろうという志太家のことじゃ。必ず何か裏があるじゃろうな。」

すると、義政が継晴に対して口を開いた。

義政
「ここは一つ、揺さぶりをかけてみてはいかがかと存じます。」

継晴
「ほう、面白い。聞かせてみよ。」

継晴は義政を食い入るように見つめていた。
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