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第6章 風雲志太家編

70.柳城攻め(17)

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祐宗と祐永の援軍もあってか、柳城の籠城戦は終盤を迎えていた。
志太軍の猛攻によって士気が低下した柊軍を目の当たりにした晴清は、これに応戦する形で天守より討って出る作戦を決行。

晴清
「者ども、行くぞ!我らの意地というものを志太軍に見せつけてやるのじゃ!」

勇ましい表情で晴清は大声を上げていた。

やがて晴清らは志太軍の軍勢と遭遇。
三人は共に刀を抜き、次々と兵たちを斬り捨てていった。

祐藤
「どうやら晴清らが我らの前にお出ましになったようじゃな。」

祐藤は、総大将自らが前線に出るという切羽詰まった状況を見て、この戦いは終わりが近い事を感じているようであった。

崇数
「柊軍の兵たちは疲弊しきっておる故、最早落城は時間の問題ではございましょうな。」

そうして崇数が口にした言葉を耳にした祐藤は、何かを思い出したかのような表情をした。

祐藤
「そうじゃ玄名殿よ、柊軍の兵たちにもう一度説得をしてはもらえぬか。説得するならば今が好機ぞ。」

祐藤は、玄名に対して柊軍への説得を再度命じたのである。
玄名は先程の説得は失敗し、返り討ちを食らうなど散々な目に遭っている。
だが、心を侵された者たちを救う事が使命と感じている彼は、再度の説得をする機会をうかがっていたようである。

玄名
「承知致しました。私の出番のようでございますな。柊軍の兵たちの御心を、何としてでもお救い致しましょう。」

玄名は、少し体をよろけながら立ち上がってそう言った。
先程の柊軍による攻撃を受けた傷口から包帯越しには血が滲み出ており、痛々しい様子であった。

玄名
「柊軍の者たちよ、今一度手を止められよ。ご覧の通り、柳家は間もなく終わります。もう幸盛殿の幻影に怯えなくても良いのですよ。」

玄名は柊軍の兵たちの前に再び立ち、大声を上げた。
その声を聞いた兵たちは手を止めていた。
何やら考え込んでいるのであろう。
そういった様子の兵たちの姿が、あちこちで見られていた。
そうしてしばらく沈黙の時間が続いた。

やがて、一人の兵が玄名に近付いて来た。
その兵は手にした刀を鞘に収め、さらには刀を地面へと投げ捨てた。


「どうやら拙者たちの目は、今の今まで曇っておったようにございますな。柳家の時代はとっくに終わっておった。そのことに気付いた今、最早争う意味はどこにもござらぬ。拙者、志太軍に投降いたしますぞ。」

玄名の説得が通じた。
この籠城戦における長時間の緊迫した状況下に置かれた兵たちは、疲弊と共に洗脳が徐々に解けつつあったようだ。

先程の兵が志太軍への投降した事をきっかけに、柊軍は抵抗を止める者が次から次へと出て来た。

玄名
「有難うございます。お分かり頂けたようで何よりにございます。」

玄名は兵たちが納得し、武力の解除を行った事に対して感謝の気持ちで一杯であった。

やがて、晴清らが死闘を繰り広げている陣中にも柊軍の兵たちが志太軍に投降したという情報が入って来た。

実幸
「晴清様、我が柊軍の軍勢が次々と志太軍に投降している模様にございます。我らも最早これまでかと…」

実幸は全てを諦めたような表情をしていた。

晴清
「何じゃと?くそっ、あやつらめ!幸盛様の恩を仇で返すつもりか。許せぬ!許せぬぞ!」

晴清は一瞬にして鬼のような形相となり、暴れ始めていた。
その暴れぶりは激しく、志太軍の兵たちが束となっても鎮まらずに次々と斬り捨てられていったという。

しかし、数千人はいるであろう志太軍の軍勢を前に数名の兵たちでの応戦には限界があるのは明白。
始めの頃は威勢の良かった晴清ではあったが、何人もの志太軍の兵と戦ううちに徐々に疲労が蓄積されているのか、激しく息を切らしている様子であった。

やがてほとんどの柊軍の軍勢が志太軍に投降。
孤立した状態となった晴清らは兵たちによって捕らえられ、祐藤の構える本陣に送られていった。
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