上 下
214 / 549
第6章 風雲志太家編

66.柳城攻め(13)

しおりを挟む
柊軍の木内政豊が崇冬との戦いに敗北。
その直後に政豊の部隊は解散し、戦線を離脱していた。

家春
「崇冬殿のご援軍が無ければ我が軍は壊滅し、滅亡していたやも知れませぬ。心より感謝いたしますぞ。」

家春は、援軍によって九死に一生を得た事について感謝の言葉を崇冬に伝えていた。

崇冬
「礼には及びませぬ。味方軍同士、危機があらば互いに救い合うが当然にございます故。」

崇冬は謙遜したような態度でそう言った。

家春
「では、人質たちの救出に引き続き当たりましょう」

家春は、祐藤より与えられた主命を全うすべく再び立ち上がった。
すると崇冬は、そんな家春を制止するように口を開いた。

崇冬
「待たれよ、家春殿らはお怪我をなされております故に、ここは拙者が先陣を切らせていただきますぞ。」

家春と晴正は、政豊の猛攻を受けて共に負傷していた。
致命傷では無かったものの、少なからず軍勢の指揮にも影響が出ると考えた崇冬は、彼らに先陣切らせるのは得策では無いと考えていたようである。

家春
「かたじけのうございます。微力ながらも尽力いたします故、よろしくお願い申す。」

こうして監獄への進軍が再開された。

監獄内には柊軍も守備兵として構えており、籠城している状態である。
それ故、まだまだ油断はできない状況と言っても良いであろうか。
だが、崇冬は何かに勘付いた様子であった。

崇冬
「ふむ、どうやら監獄の守備が今は手薄にようにございますな。ここは一気に攻め掛けて柊軍を押し潰してしまいましょう。」

実は、政豊の率いる伏兵部隊が監獄の守備兵としての大半の役割を担っていたのである。
しかし、その政豊は先刻に敗北した為に兵たちは全軍撤退していた。
つまりは、今現在の監獄には柊軍がほとんど存在していない事になる。

崇冬は、監獄の守備兵がそんなに多くいない事を何やら感じ取っていたようである。

家春
「さぁさぁ、拙者たちも崇冬殿に続くのじゃ!」

晴正
「皆の者よ、もうすぐじゃ。もうすぐ人質たちを救えるぞ。」

三人は一斉に守備兵へ向けて攻撃を開始した。
監獄に残された守備兵たちはその様子に圧倒され、次々と倒されていった。

監獄の制圧は、実にあっけなく終わった。
どうやら晴清は政豊による伏兵を主として監獄の守備に当たらせたようである。
守備は政豊という豪将一人に任せておけば充分であろう。
その策が結果として大誤算を生み、この後の戦いに影響を及ぼす事となった。

柊軍の守備兵を一掃した崇冬らは牢を開け放ち、囚えられていた人質たちに向かって言った。

崇冬
「拙者は志太家 家臣 口羽崇冬。これより皆の者を解放いたす。」

すると人質たちは一斉に崇冬の方を見ていた。
やがて一人の人質が涙を流して嗚咽の声をあげていた。

人質
「ありがとうございます。私たちは家へ帰ることが出来るのですね。真に夢のようにございます。」

人質たちは皆が生きているうちに解放されるとは思ってもいなかった様子であった。

崇冬
「間もなくこの柳の地は我ら志太家が統治いたす。幸盛や晴清による愚かな政はもう終わりじゃ。」

崇冬は人質たちに向けて希望に満ちた言葉をかけていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

処理中です...