架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
上 下
209 / 549
第6章 風雲志太家編

61.柳城攻め(8)

しおりを挟む
先刻に城下の監獄において秋庭軍による柊軍への攻撃が開始。
そして開戦と同時に多数の柊軍の伏兵によって秋庭軍にへの奇襲がかけられた。
これにより、戦況は秋庭軍が劣勢に陥るかのように思われた。

しかし、家春の的確な判断により軍勢は何とか持ちこたえ、奇襲による被害は最小限に留める事に成功した。

やがて柊軍の攻撃が止み、家春はその空きを突いて反撃に出ていた。

家春
「良いか、まずは軍勢の大将を狙うのじゃ。大将が討たれれば柊軍の士気は下がるであろう。そこをすかさず追討ちをかければ我らの勝利ぞ。」

晴正
「大将、にございますか。さすればあそこに陣を構えておる武将が見受けられますが、いかがでございますか。」

晴正は、柊軍の兵たちの中に陣を敷いて一際目立つ甲冑姿の武将が構えているのを見つけた。
どうやら監獄の守備を任せられている柊軍の武将のようであった。

家春
「うむ、どうやらあの者がこの軍の大将のようじゃな。そうと分かれば突撃をお見舞いするまでよ。皆の者よ、あの大将の首を取るのじゃ!」

狙うべき標的を見つけた家春は、声をあげて兵たちにそう言った。
これにより、秋庭軍の士気は上昇していた。

その頃、秋庭軍を取り囲んだ柊軍の陣では大将がどっしりと構えていた。
その男の名は、柊家 家臣の木内政豊であった。

・木内 政豊(きうち まさとよ)
柊家 家臣。
元は柳家の領内において狼藉を働く盗賊であったとされる。
後に幸盛の手によって捕縛されるが、今後は柳家に忠誠を誓うことで許されて家臣となる。
やがて幸盛が急死した事をきっかけに浪人となったが、後に家督を相続した晴清によって呼び戻されて再び家臣として登用される。
盗賊としての能力を活かしてか、戦においては奇襲戦法などに長けていたという。

政豊
「ふん、秋庭軍が反撃を開始したとな。我が軍に囲まれておるというのに真に勇ましき連中であるな。」

現状では秋庭軍が優勢のようには思えるが、依然として柊軍に囲まれており、いつ形勢が逆転してもおかしくは無い状態である。
そんな状況下でありながら果敢にも軍勢に立ち向かおうとする秋庭軍に、政豊は柊軍として称賛の声をあげていた。

政豊
「良かろう、秋庭軍の挑戦を受けて立とうではないか。全員、血祭りにあげてやろうぞ。」

政豊は不気味な表情でそう言った。

家春
「我が軍は柊軍に包囲されている故、少しの油断であっても命取りになる事を忘れるでないぞ。」

家春は、自身の軍勢がいかに危険な状態にあるかを良く理解している様子であった。
秋庭軍の士気は依然として上昇し続けていたが、今度はそれが仇となって足元を掬われる事を家春は心配していた。

ましてや全軍で突撃をかけようとしているところである。
突撃は、仕掛けた軍勢の興奮状態が長く続く戦法である故に、相手の挑発などの作戦にも乗りやすくなってしまうという危険も生じるのだ。

だが、先刻において崇数の挑発に乗った晴清が反撃を受けて混乱状態に陥った事を目の当たりにした秋庭軍は、皆が平常心を保とうとしていた。
どうやら晴清の一件が反面教師として働いているようである。

家春
「それにしてもあの男、一癖も二癖もありそうな奴じゃな…」

家春は眉間に皺を寄せながら陣を構えた政豊の姿を見てそう言った。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...