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第6章 風雲志太家編
55.柳城攻め(2)
しおりを挟む柳の地において先刻より志太・秋庭連合軍と柊軍による合戦が開始。
合戦の場では、口羽崇冬と平岡実幸が現在奮闘中である。
開戦時は実幸による先制攻撃を受けたことにより崇冬の軍勢の士気は若干の低下が見られたが、崇冬の鼓舞激励により軍勢を立て直していた。
崇冬
「実幸殿よ、口羽の力を思い知るが良い。」
そう言うと崇冬は自らも実幸の軍勢に馬を進めて攻撃を始めた。
武将自らが敵陣に斬り込むことにより、崇冬の軍勢の士気は更に上昇。
形勢は一点して逆転し、崇冬の軍が今度は優勢となった。
実幸
「うぐっ、流石は志太家の名軍師と呼ばれる口羽崇数の嫡男だけはあるな。だが、こちらも負けてはおられぬ。者ども、いくぞ!」
実幸も負けじと奮闘し、崇冬の軍勢に同じく何とか士気を立て直すことに成功。
これにより両者は一進一退の攻防を暫く繰り返すのであった。
しかし戦況は崇冬の軍勢が依然として優勢であり、実幸の軍勢は次第にその勢いに飲まれていった。
やがて実幸の軍勢が疲弊し始め、兵たちの表情にも疲れが見え始めていた。
すると崇冬が後方を向き、志太軍に対して大声を発した。
崇冬
「今じゃ玄名殿よ、この者たちの説得をお願い申す。」
玄名
「はっ、私の出番でございますな。では、実幸殿の軍勢の前へ参りましょう。」
どうやら疲弊した実幸の軍勢に対して玄名が説得を行い、実幸の軍勢を鎮めさせようという作戦である。
実幸
「何じゃ、何が始まるというのじゃ。」
実幸は、突如として現れた玄名の軍勢に対して首を傾げていた。
そうしているうちにやがて玄名は戦場に立ち、柊軍の兵たちに向けて叫び出した。
玄名
「柊殿の軍勢たちよ、静まりなさい。あなた方は死してもなお柳幸盛殿の幻影に騙され続けておられます。目を覚まされよ、武器を収めて無益な戦いは今すぐに止めるのです。」
実幸の軍勢は、玄名のその言葉を聞いて動きが止まった。
しかしそれはほんの一瞬であり、柊軍の兵は顔を真赤にして玄名を睨みつけた。
やがて、一人の兵が玄名を目掛けて突進して叫んだ。
兵
「ふん、余計なお世話じゃ!我らは幸盛様に命を捧げた誇り高き兵であるぞ。幸盛様も仰られたように刀を抜いた以上、いかなる者であっても完膚なきまでに相手を叩きのめすが我らの正義ぞ!」
そう言うと兵は玄名に対して刀を一太刀勢い良く振り下ろした。
振りかざされた刀は玄名の眉間を深く傷つけられた。
玄名
「ぐっ…」
これには玄名もよろめき、一気に膝をがくんと落としていた。
その様子を見た崇冬は玄名に対して声をかけた。
崇冬
「玄名殿、彼らは最早聞く耳の持たぬ柳家の操り人形。何を申されても意味は無い故、ここは一旦退かれよ。」
玄名
「私としたことが、不覚にございます…」
そう言うと玄名は急いで馬に跨り、戦場を離脱したのであった。
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