架空戦国伝

佐村孫千(サムラ マゴセン)

文字の大きさ
上 下
201 / 549
第6章 風雲志太家編

53.柳城攻略の軍議

しおりを挟む
それから数日後、志太家では家臣たちを集めて軍議が開かれた。
内容は他でもない柳城の制圧に関してのものである。
なお、秋庭家もこの軍議に参加していた。

祐藤
「皆の者よ、準備が整った故に明日にいよいよ柳城を攻める。」

祐藤は開口一番に柳城の攻略について言及していた。
すると、家春が水を差すかのように祐藤に向かって言った。

家春
「先日も拙者が申しました通り、柊晴清は幸盛と同じく油断のできぬ男であります故に注意が必要にございます。それに…」

祐藤
「それに?何じゃ、申されてみよ。」

祐藤は食い入るように家春に向かってそう言った。

家春
「ほとんどの家臣たちは幸盛の思想を植え付けられて洗脳されております。それ故に彼らは降伏するという考えはござらんでしょう。中途半端な攻撃は、我らの身をも滅ぼす恐れもございます。」

幸盛の家臣たちは、初めに士官した際に柳家へ忠誠を誓う為の教育を徹底的に仕込まれるという。
その中で幸盛に対して忠誠心が高いと判定された者は、初めて家臣として認められた。
また、忠誠心が低いと判定された者に関しては「無礼者」という汚名を着せられて粛清されるなど非常に厳しい採用基準であったという。
どうやら幸盛による洗脳は根が深そうである。

すると祐藤は、目をきりりとさせて家春に対して言った。
何やら志太家側としての対策はばっちりだと言わんばかりの表情である。

祐藤
「つまり、戦況に応じて我らに降ることは無いと申すか。それならば、こちらにも考えがあるわい。」

家春
「ほう、何か策がおありと申されますか。」

家春は祐藤のこの切り返しの言葉が素早く出てきた事に驚いた様子であった。
自身が考えていた問題を解決させる案がいとも簡単に出てくるという祐藤との能力の差を感じずにはいられなかった。

祐藤
「うむ、良き策がな。明日の出陣に玄名殿の軍の参戦を命じる。玄名殿よ、柊軍に纏わり付いている幸盛の洗脳を何としてでも解いて見せるのじゃ。」

玄名は過去に元敵軍であった兵たちに向けて説法を行う事により、志太家の兵となった実績がある。
そして今回のキーワードとも言える「洗脳」に対して最も適した家臣。
そういった事もあってか今回、玄名に白羽の矢が立ったようである。

玄名
「ははっ、承知致しました。悪に心を侵された者たちをも救うのが我が僧侶の使命。彼らの心をお救いいたしましょう。」

玄名は祐藤による突然の命令に一瞬驚いた様子ではあったが、僧侶としての役目を果たす為とあらばと考えてそう答えた。

家春
「何とも頼もしいお方じゃ。志太殿の家中はかような立派な僧侶もおられるのでございますか。」

家春は人材豊富な志太家の現状を目の当たりにして非常に感心している様子でそう言った。

祐藤
「しかし、玄名殿の説法を以てしても成功せぬ場合はこちらとて覚悟をせねばならぬがな…」

祐藤は、幸盛による洗脳がどれほど根深いかという事を家春の話によってある程度把握していた。
それ故に、今回の玄名による説法が果たして通用するのであろうかという不安が頭をよぎっていた。

やがて祐藤の表情は神妙な顔つきへと変わり、一人呟き出した。

祐藤
「天下を治めるには多少の犠牲を払わねばならぬ時がいずれ来るであろう。それが明日になるやも知れぬ。全く、心が重いわい…」

どうやら祐藤は複雑な心境にあるようだ。
しおりを挟む
佐村孫千Webサイト
https://samuramagosen.themedia.jp/
感想 18

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

戦争はただ冷酷に

航空戦艦信濃
歴史・時代
 1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…  1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。

戦艦タナガーin太平洋

みにみ
歴史・時代
コンベース港でメビウス1率いる ISAF部隊に撃破され沈んだタナガー だがクルーたちが目を覚ますと そこは1942年の柱島泊地!?!?

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

帝国夜襲艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。 今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!

江戸時代改装計画 

華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。 「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」  頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。  ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。  (何故だ、どうしてこうなった……!!)  自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。  トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。  ・アメリカ合衆国は満州国を承認  ・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲  ・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認  ・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い  ・アメリカ合衆国の軍備縮小  ・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃  ・アメリカ合衆国の移民法の撤廃  ・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと  確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

処理中です...