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第6章 風雲志太家編

51.大名柊家

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柳家の家臣たちの思惑通り、晴清は柳家の当主となった。

そして晴清が当主となり初めての評定が開かれた。
家臣たちは皆が畏まっており、さらに晴清自身も緊張している様子であった。

その中で、実幸が晴清の前に跪いて口を開いた。

実幸
「晴清様、よくぞお戻りになられました。ご覧くだされ、我ら家臣たちも殿の御就任を喜んでおりますぞ。」

喜んでいる?
馬鹿馬鹿しい。
お前達は今の柳家の厄介事の中心に立たされなくて喜んでいるだけではないのか?
どいつもこいつも我が身が可愛いだけの身勝手な思想を持っていて実に情けない。

晴清は、心ではそう思いながらも家臣たちの言葉を受けて表向きは謙虚な態度で返答した。

晴清
「うむ、蟄居の身でありながらもこうして当家に呼び戻してくれた事を感謝しておるぞよ。ただ、幸盛様のお許しを頂けなかった事が心残りではござるがな。」

晴清は以前に自身が犯した失態を幸盛に叱責され、厳しい処分を受けていた事を未だ気にかけている様子であった。
すると実幸はすぐさまに晴清の目に視線を向け、口を開いた。

実幸
「晴清様、それはもう過去の話にございます。晴清様が戻られたお陰で皆の者の士気もご覧の通り、見事に持ち直しました。もし、幸盛様がこの様子を見られていたとするならば、晴清様をお許しくださっているでありましょう。」

実幸は、迷いの表情を見せつつあった晴清に対して自信を付けさせるように語り掛けていた。

晴清
「うむ、そうであれば嬉しいがな。いずれにせよ柳家を栄えさせる事が幸盛様への罪滅ぼし故、皆も今後ともよろしく頼むぞ。」

実幸
「ははっ、我ら家臣一同も団結して殿をお支えする覚悟にございます。」

家臣たちは皆、晴清に対して頭を下げていた。

柳家は幸盛から晴清に当主が変わったが、領民たちの生活が変わる様子は特段無いように思われた。
しかし、今もなお捕らえられている自国の人質たちの風当たりは今まで以上に強いものへと変わりつつあった。

人質は何も秋庭家の人間に限った事では無い。
自国の領民たちの家族も人質として捕らえられているのだ。
これは、領民たちが他国への亡命を簡単にはさせない為の政策として幸盛が始めたものであった。

事実としてその事が亡命の抑止力となっていたが、領民たちの不満は年々募る一方である。
そんな中で、志太家の工作によって城下の監獄に収容されていた秋庭家の人質が流出した。
この出来事により、柳家としては再発を恐れてか領内の人質に対して今まで以上に支配の力が強くなったという。

「国を治めるには手段を選ぶな。」
「敵には情けをかけず容赦無く叩きのめすべし。」
「最終的には力だけが物を言う時代である。」

幸盛が残したとされる言葉である。
こういった内容からも、幸盛はいかに極悪非道の人物であったかが良く分かる。
そして晴清もまた幸盛と同じ思想を持っていたとされており、柳城下の領民たちの苦難は今後も続きそうな様子である。
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