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第6章 風雲志太家編
50.柊晴清の復帰
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柳会議の翌日、実幸は早々に柊晴清の屋敷を訪れた。
屋敷に入るとすぐに晴清が迎えに現れた。
晴清
「これはこれは、実幸殿ではござらぬか。拙者に何か御用ですかな?」
久しぶりの家臣の来訪に晴清は心なしか嬉しそうな様子であった。
同時に、蟄居を受けている身である自身を訪ねに来るなど余程の事情があるのではないかと晴清は考えていた。
床の間に通された実幸は、一息ついた後に口を開いた。
実幸
「先日、幸盛様が何者かの手によって討たれました。」
晴清
「何じゃと、幸盛様が討たれたとな?」
晴清は非常に驚いた表情であった。
実幸
「はい。ですので家中は今現在混乱しております。そこで、この混乱を収めるべく晴清殿が幸盛様の跡を継いでいただきたく存じます故、参らせて頂きました。」
晴清
「ふむ、幸盛様の跡をこの拙者に継げと申すか。」
晴清は冷静な口調でそう言った。
実幸
「晴清殿は幸盛様の御姪である彩姫様と婚姻を結んでおられ、さらにご嫡男である大三郎殿もいらっしゃいます。しかし大三郎殿は元服前にございます故、ここはひとまず晴清殿が当主として国をお治め頂くのが良いかと存じます。」
実幸は、昨日の柳会議において晴清が幸盛亡き後の後継者として選ばれたという旨を晴清に説明した 。
すると、晴清は少し考えた後に口を開いた。
晴清
「なるほど、お主の申す事はよう分かったわい。しかし、理由はそれだけでは無さそうじゃな。おおかた人質らにでも逃げられたのではござらんか。そうであらば、かような状態の当家は誰も統べたがらぬわな。都合の悪き事を拙者に押し付ける為にわざわざ訪ねに参ったという次第じゃろう?違うか?」
晴清は顔をしかめて実幸にそう言った。
晴清による意地悪な質問を受けた実幸は言葉に詰まっていた。
晴清は柳家と縁戚関係があり、家を継がせるという口実にはちょうど良かった。
そして柳家として責任を取るべき時は、スケープゴートとしてその役目を果たしてもらおう。
実幸ら家臣たちのそういった思惑が晴清によって全て見透かされていたからである。
しばらく間を置いた後に実幸は、切羽詰まった表情で幸盛に向かって口を開いた。
実幸
「流石は晴清殿、実に鋭いですな。確かに、我ら家臣がおりながらも人質を逃してしまったという事は事実。この失態は我ら痛恨の極みにございます。ですが、この危機を乗り越えられるお方は晴清殿、そなたしかおりませぬ。どうか分かってくだされ。」
実幸は地に頭を擦りつけて晴清に縋り付くように訴えかけていた。
その様子に見かねた晴清は、実幸に対して言った。
晴清
「分かり申した。実幸殿、顔を上げられよ。ちょうど拙者も蟄居の生活に飽きておったところじゃ。お主らの望み通りこの柊晴清、大名となってやろうではないか。」
晴清は思い切った表情をして実幸を見つめていた。
これに対して実幸は、安堵の表情を浮かべて晴清に対して感謝の意を表した。
実幸
「ははっ、良き返事を頂けて何よりでございます。それでは晴清殿、いや晴清様、今後は我らにご命令をくださいませ。」
こうして晴清は、柳家の正式な後継者として国を治める事となった。
屋敷に入るとすぐに晴清が迎えに現れた。
晴清
「これはこれは、実幸殿ではござらぬか。拙者に何か御用ですかな?」
久しぶりの家臣の来訪に晴清は心なしか嬉しそうな様子であった。
同時に、蟄居を受けている身である自身を訪ねに来るなど余程の事情があるのではないかと晴清は考えていた。
床の間に通された実幸は、一息ついた後に口を開いた。
実幸
「先日、幸盛様が何者かの手によって討たれました。」
晴清
「何じゃと、幸盛様が討たれたとな?」
晴清は非常に驚いた表情であった。
実幸
「はい。ですので家中は今現在混乱しております。そこで、この混乱を収めるべく晴清殿が幸盛様の跡を継いでいただきたく存じます故、参らせて頂きました。」
晴清
「ふむ、幸盛様の跡をこの拙者に継げと申すか。」
晴清は冷静な口調でそう言った。
実幸
「晴清殿は幸盛様の御姪である彩姫様と婚姻を結んでおられ、さらにご嫡男である大三郎殿もいらっしゃいます。しかし大三郎殿は元服前にございます故、ここはひとまず晴清殿が当主として国をお治め頂くのが良いかと存じます。」
実幸は、昨日の柳会議において晴清が幸盛亡き後の後継者として選ばれたという旨を晴清に説明した 。
すると、晴清は少し考えた後に口を開いた。
晴清
「なるほど、お主の申す事はよう分かったわい。しかし、理由はそれだけでは無さそうじゃな。おおかた人質らにでも逃げられたのではござらんか。そうであらば、かような状態の当家は誰も統べたがらぬわな。都合の悪き事を拙者に押し付ける為にわざわざ訪ねに参ったという次第じゃろう?違うか?」
晴清は顔をしかめて実幸にそう言った。
晴清による意地悪な質問を受けた実幸は言葉に詰まっていた。
晴清は柳家と縁戚関係があり、家を継がせるという口実にはちょうど良かった。
そして柳家として責任を取るべき時は、スケープゴートとしてその役目を果たしてもらおう。
実幸ら家臣たちのそういった思惑が晴清によって全て見透かされていたからである。
しばらく間を置いた後に実幸は、切羽詰まった表情で幸盛に向かって口を開いた。
実幸
「流石は晴清殿、実に鋭いですな。確かに、我ら家臣がおりながらも人質を逃してしまったという事は事実。この失態は我ら痛恨の極みにございます。ですが、この危機を乗り越えられるお方は晴清殿、そなたしかおりませぬ。どうか分かってくだされ。」
実幸は地に頭を擦りつけて晴清に縋り付くように訴えかけていた。
その様子に見かねた晴清は、実幸に対して言った。
晴清
「分かり申した。実幸殿、顔を上げられよ。ちょうど拙者も蟄居の生活に飽きておったところじゃ。お主らの望み通りこの柊晴清、大名となってやろうではないか。」
晴清は思い切った表情をして実幸を見つめていた。
これに対して実幸は、安堵の表情を浮かべて晴清に対して感謝の意を表した。
実幸
「ははっ、良き返事を頂けて何よりでございます。それでは晴清殿、いや晴清様、今後は我らにご命令をくださいませ。」
こうして晴清は、柳家の正式な後継者として国を治める事となった。
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