197 / 549
第6章 風雲志太家編
49.柳会議
しおりを挟む
宗重による人質救出作戦は成功し、人質たちは全員無事に海原の地への帰還を果たした。
そして一夜が明けた柳城下では、大名である柳幸盛が死亡した事を受け、家臣一同が集まっていた。
一同が集まった中、家臣の一人が口を開いた。
家臣
「皆も知っておるとは思うが、昨夜に幸盛様が何者かの手によって討たれた。ついては、幸盛様の跡を継がれる者をこの会議で決めたいと思う。」
こうして会議が始まり、家臣たち皆が思い思いの意見を述べた。
ある家臣が、一人の家臣の実績を評価したうえで後継者に相応しいのでないか、といった他の者を推薦するような内容が多かった。
しかし、他の家臣たちからの推薦を受けた者は皆としてこれを拒否していた。
一家臣から国を治める大名の身となるのであれば大出世とも言え、万々歳ではないだろうか。
だが、昨夜の宗重による工作により人質は一人残らず流出。
これにより、柳家は秋庭家に脅しをかけるといった外交カードが無くなってしまった。
それ故、今の柳家の状況は決して良いものとは言い難いのである。
そのような危機に直面した大名家の当主に誰がなりたいであろうか。
家臣たちは皆、重過ぎる責任を取りたくは無いと考えていた。
やがて周りは沈黙状態となり、非常に気まずい空気が辺りを漂い始めていた。
すると一人の家臣立ち上がり、その沈黙を破った。
その家臣の名は、平岡実幸であった。
・平岡 実幸(ひらおか さねゆき)
柳家家臣。
元は商人の身であったが、生活苦を解消する為に武士として柳家へ士官。
何事にも貪欲であり、特に他の家臣たちが嫌がるような内容の任務であっても率先して取り組んでいたという。
後にその功績を幸盛に認められた証として「幸」の字を賜り、本名であった実元(さねもと)から実幸へと改名した。
実幸
「ふむ、このままでは埒が明きませぬな。そこでですが、拙者に考えがございます。」
家臣
「何じゃ、実幸殿。その考えとは一体どのような物か申してみよ。」
そう言うと家臣たちは皆が一斉に実幸の顔を見つめていた。
実幸
「はっ、思うに柳家の御家は、柳家の縁戚の者が継ぐべきかと存じます。そこで、柊晴清殿に今一度柳家に戻って頂いて柳家を継がれてはいかがかと。」
ーー柊晴清
先の失態によって幸盛から参謀役の解任と無期限の蟄居を言い渡された家臣である。
失脚前の晴清は柳家において数多くの功績を残していた。
そして生涯を通して実子がいなかった幸盛は、晴清に自身の弟の娘、すなわち姪である彩姫と婚姻を結ばさせていた。
この事からも、いかに晴清が柳家において重要な人物であったかという事がうかがえる。
・柳 幸秀(やなぎ ゆきひで)
幸盛の弟にあたる。
幸秀もまた兄である幸盛と並ぶほどの極悪非道な人物であり、共に恐怖で領民たちを支配していた。
知略に長けており、柳家を影で支える存在であったという。
しかし、家臣である柊晴清が参謀の役職を賜った数年後、流行りの病によって急死する。
一説によると、悪政に耐えかねた領民らが何らかの方法によって幸秀を死に至る病にかからせて暗殺したとも言われている。
・柳 彩(やなぎ あや)
幸秀の娘として生まれる。
父である幸秀や伯父の幸盛とは正反対の性格であり、領民たちからは非常に慕われていたと言われている。
後に幸盛の命によって柊晴清と婚姻を結び、嫡子を授かる。
なお、晴清の失脚直前に離縁していた為に連座を間逃れたという。
しかし実際には離縁はされておらず、婚姻関係は存続していたということが後に分かっている。
これは、離縁したという事で近親者への累が及ぶ事を回避する為に幸盛が仕組んだとされている。
柊家と柳家との縁戚関係を完全に消滅させる事をしなかったという点から見ると幸盛は、いずれは晴清に帰参を許して家督を譲ろうと考えていたのではないかと思われる。
実幸
「さらに晴清殿にはご嫡男の大三郎殿がおります故、今後の柳家の為にもここは晴清殿が一旦は家督を継いで頂くのが良いかと。」
・柊 大三郎(ひいらぎ おおざぶろう)
晴清の嫡子として生まれる。
母は柳幸盛の姪である彩姫。
父である晴清が失脚すると、自身も連座として蟄居を余儀なくされる。
元服を控え、柳家の家臣として仕える間近の事であったという。
家臣
「なるほど、あくまでも柳家としての血筋を守れと申されておるのですな。言われてみれば至極真っ当な事でございますな 。」
家臣たちは皆が納得したような表情であった。
同時に、自身が後継者として選ばれて厄介事に巻き込まれずに済んだという事に安堵している様子でもあった。
実幸
「皆の者、異論はありますかな。」
実幸に対して異を唱える家臣は最早一人もいなかった。
実幸
「では、この件に関しては拙者が晴清殿に話をして参ります。今後は晴清殿の元、我々が一丸となり柳家を支える事となりましょうぞ。」
こうして柳家で開かれていた会議は実幸の意見を取り入れる方向で確定したのであった。
そして一夜が明けた柳城下では、大名である柳幸盛が死亡した事を受け、家臣一同が集まっていた。
一同が集まった中、家臣の一人が口を開いた。
家臣
「皆も知っておるとは思うが、昨夜に幸盛様が何者かの手によって討たれた。ついては、幸盛様の跡を継がれる者をこの会議で決めたいと思う。」
こうして会議が始まり、家臣たち皆が思い思いの意見を述べた。
ある家臣が、一人の家臣の実績を評価したうえで後継者に相応しいのでないか、といった他の者を推薦するような内容が多かった。
しかし、他の家臣たちからの推薦を受けた者は皆としてこれを拒否していた。
一家臣から国を治める大名の身となるのであれば大出世とも言え、万々歳ではないだろうか。
だが、昨夜の宗重による工作により人質は一人残らず流出。
これにより、柳家は秋庭家に脅しをかけるといった外交カードが無くなってしまった。
それ故、今の柳家の状況は決して良いものとは言い難いのである。
そのような危機に直面した大名家の当主に誰がなりたいであろうか。
家臣たちは皆、重過ぎる責任を取りたくは無いと考えていた。
やがて周りは沈黙状態となり、非常に気まずい空気が辺りを漂い始めていた。
すると一人の家臣立ち上がり、その沈黙を破った。
その家臣の名は、平岡実幸であった。
・平岡 実幸(ひらおか さねゆき)
柳家家臣。
元は商人の身であったが、生活苦を解消する為に武士として柳家へ士官。
何事にも貪欲であり、特に他の家臣たちが嫌がるような内容の任務であっても率先して取り組んでいたという。
後にその功績を幸盛に認められた証として「幸」の字を賜り、本名であった実元(さねもと)から実幸へと改名した。
実幸
「ふむ、このままでは埒が明きませぬな。そこでですが、拙者に考えがございます。」
家臣
「何じゃ、実幸殿。その考えとは一体どのような物か申してみよ。」
そう言うと家臣たちは皆が一斉に実幸の顔を見つめていた。
実幸
「はっ、思うに柳家の御家は、柳家の縁戚の者が継ぐべきかと存じます。そこで、柊晴清殿に今一度柳家に戻って頂いて柳家を継がれてはいかがかと。」
ーー柊晴清
先の失態によって幸盛から参謀役の解任と無期限の蟄居を言い渡された家臣である。
失脚前の晴清は柳家において数多くの功績を残していた。
そして生涯を通して実子がいなかった幸盛は、晴清に自身の弟の娘、すなわち姪である彩姫と婚姻を結ばさせていた。
この事からも、いかに晴清が柳家において重要な人物であったかという事がうかがえる。
・柳 幸秀(やなぎ ゆきひで)
幸盛の弟にあたる。
幸秀もまた兄である幸盛と並ぶほどの極悪非道な人物であり、共に恐怖で領民たちを支配していた。
知略に長けており、柳家を影で支える存在であったという。
しかし、家臣である柊晴清が参謀の役職を賜った数年後、流行りの病によって急死する。
一説によると、悪政に耐えかねた領民らが何らかの方法によって幸秀を死に至る病にかからせて暗殺したとも言われている。
・柳 彩(やなぎ あや)
幸秀の娘として生まれる。
父である幸秀や伯父の幸盛とは正反対の性格であり、領民たちからは非常に慕われていたと言われている。
後に幸盛の命によって柊晴清と婚姻を結び、嫡子を授かる。
なお、晴清の失脚直前に離縁していた為に連座を間逃れたという。
しかし実際には離縁はされておらず、婚姻関係は存続していたということが後に分かっている。
これは、離縁したという事で近親者への累が及ぶ事を回避する為に幸盛が仕組んだとされている。
柊家と柳家との縁戚関係を完全に消滅させる事をしなかったという点から見ると幸盛は、いずれは晴清に帰参を許して家督を譲ろうと考えていたのではないかと思われる。
実幸
「さらに晴清殿にはご嫡男の大三郎殿がおります故、今後の柳家の為にもここは晴清殿が一旦は家督を継いで頂くのが良いかと。」
・柊 大三郎(ひいらぎ おおざぶろう)
晴清の嫡子として生まれる。
母は柳幸盛の姪である彩姫。
父である晴清が失脚すると、自身も連座として蟄居を余儀なくされる。
元服を控え、柳家の家臣として仕える間近の事であったという。
家臣
「なるほど、あくまでも柳家としての血筋を守れと申されておるのですな。言われてみれば至極真っ当な事でございますな 。」
家臣たちは皆が納得したような表情であった。
同時に、自身が後継者として選ばれて厄介事に巻き込まれずに済んだという事に安堵している様子でもあった。
実幸
「皆の者、異論はありますかな。」
実幸に対して異を唱える家臣は最早一人もいなかった。
実幸
「では、この件に関しては拙者が晴清殿に話をして参ります。今後は晴清殿の元、我々が一丸となり柳家を支える事となりましょうぞ。」
こうして柳家で開かれていた会議は実幸の意見を取り入れる方向で確定したのであった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~
髙橋朔也
ファンタジー
高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!
戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。
持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。
推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。
※毎日投稿。
※歴史上に存在しない人物も登場しています。
小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる