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第6章 風雲志太家編
46.監獄へと…
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宗重は柳城天守に無事に侵入し、幸盛の暗殺に見事成功した。
任務を果たした宗重はすぐさまに天守を抜け、部下たちの元へと進み出した。
一方その頃、部下たちは監獄において工作を行っていた。
しかし、こちらの工作は宗重が最終的な指示を出して動く事となっていた為、まずは前準備を行っていた。
内容としては、工作を進めていくうえで妨げとなりそうな見張り兵の始末を何名か行ったようである。
やがて宗重は監獄に到着し、無事に部下たちとの合流を果たした。
宗重
「幸盛は拙者が始末が致した。さぁ、ここからが本番ぞ。」
宗重がそう言うと部下たちは素早く動き出し、工作の準備に取り掛かった。
すると、一人の部下が先刻に始末したという見張り兵の服を剥ぎ取り、それらを身に纏った。
部下
「宗重様、いかがでしょうか。柳軍の兵に見えましょうか。」
宗重
「うむ、上出来じゃ。では、行って参れ。」
そう言うと部下は監獄へと向かって歩みを進めた。
やがて監獄の前に着くと、柳軍の見張り兵と顔を合わせた。
部下は軽く挨拶代わりに会釈をし、さらに見張り兵へと近付いた。
見張り兵
「むぅ、どうも見慣れぬ奴じゃな。おいお主、新入りであるか?」
見張り兵は、接近してきた部下を見て少し不審げな態度を見せた。
部下
「はっ、拙者は昨日に幸盛様に取り立てられた者にございます。今日より監獄の見張りを命ぜられました故、よろしくお願い申します。」
部下は堂々とした態度でそう言った。
見張り兵
「ほう、幸盛様が直接にそなたを取り立てたとな。お主、なかなかやりおるな。」
見張り兵は少し驚き、部下に対して関心の目を向けた。
先程の堂々たる態度も去ることながら、大名が直々に家臣として採用したという事から、相当な実力をこの男は持っているのではないか、と感じているようであった。
部下
「お褒めいただきありがとうございます。早速ではございますが、先程に幸盛様からの命が下された旨を見張り兵殿へお伝えに参りました。」
部下は淡々とした様子で見張り兵に言った。
見張り兵
「ほう、それはどのような内容にござるか。」
見張り兵は部下に対して耳を傾けていた。
部下
「では申し上げます。監獄の人質たちを別の監獄に全員移送させよとの事にございます。」
見張り兵
「何、人質の移送じゃと?と、なると人質を一旦ここから出せと申されておるのか?」
見張り兵は非常に驚いた様子であった。
今まで監獄に入れられた人質たちは、いかなる時も決して外に出す事を許さずに幽閉され続けていたからである。
人質を外に出すという幸盛の命令自体が予想外であると見張り兵は感じていた。
部下
「はい、幸盛様が直々にそのように申されておりました。何やら、我々が知らぬ間に今の監獄よりもさらに広き監獄の建設工事が進められていたようです。そして、その工事が昨日にちょうど完了したとの事にございます。」
部下は、驚いている見張り兵に対して間髪入れずにそう説明した。
今までの監獄よりもさらに広い監獄を用意した。
これからも人質を大量に取って秋庭家に対して威圧をかけていく。
幸盛本人ならばそう考えているであろうと言うもっともらしい理由だ。
これは今回の工作で見張り兵を納得させる為の口実であり、もちろん新しい監獄などは存在しない。
こういった工作は、いかに敵を騙し切れるかが試されるところであった。
見張り兵
「し、しかしだな、本当に幸盛様はかような事を申されておったのか?拙者はまだ理解できぬ…」
見張り兵は現在の状況がまだはっきりと飲み込めておらず、戸惑っていた。
部下による説明を聞いて多少は納得している様子ではあったが、未だ半信半疑の状態が残っているようであった。
そうしていると、一人の男がこちらに向かって歩いて来た。
男は見張り兵と部下の前に行き、力強い口調でこう言った。
「何をぐずぐずしておるのじゃ。早う人質どもを出さぬか。」
任務を果たした宗重はすぐさまに天守を抜け、部下たちの元へと進み出した。
一方その頃、部下たちは監獄において工作を行っていた。
しかし、こちらの工作は宗重が最終的な指示を出して動く事となっていた為、まずは前準備を行っていた。
内容としては、工作を進めていくうえで妨げとなりそうな見張り兵の始末を何名か行ったようである。
やがて宗重は監獄に到着し、無事に部下たちとの合流を果たした。
宗重
「幸盛は拙者が始末が致した。さぁ、ここからが本番ぞ。」
宗重がそう言うと部下たちは素早く動き出し、工作の準備に取り掛かった。
すると、一人の部下が先刻に始末したという見張り兵の服を剥ぎ取り、それらを身に纏った。
部下
「宗重様、いかがでしょうか。柳軍の兵に見えましょうか。」
宗重
「うむ、上出来じゃ。では、行って参れ。」
そう言うと部下は監獄へと向かって歩みを進めた。
やがて監獄の前に着くと、柳軍の見張り兵と顔を合わせた。
部下は軽く挨拶代わりに会釈をし、さらに見張り兵へと近付いた。
見張り兵
「むぅ、どうも見慣れぬ奴じゃな。おいお主、新入りであるか?」
見張り兵は、接近してきた部下を見て少し不審げな態度を見せた。
部下
「はっ、拙者は昨日に幸盛様に取り立てられた者にございます。今日より監獄の見張りを命ぜられました故、よろしくお願い申します。」
部下は堂々とした態度でそう言った。
見張り兵
「ほう、幸盛様が直接にそなたを取り立てたとな。お主、なかなかやりおるな。」
見張り兵は少し驚き、部下に対して関心の目を向けた。
先程の堂々たる態度も去ることながら、大名が直々に家臣として採用したという事から、相当な実力をこの男は持っているのではないか、と感じているようであった。
部下
「お褒めいただきありがとうございます。早速ではございますが、先程に幸盛様からの命が下された旨を見張り兵殿へお伝えに参りました。」
部下は淡々とした様子で見張り兵に言った。
見張り兵
「ほう、それはどのような内容にござるか。」
見張り兵は部下に対して耳を傾けていた。
部下
「では申し上げます。監獄の人質たちを別の監獄に全員移送させよとの事にございます。」
見張り兵
「何、人質の移送じゃと?と、なると人質を一旦ここから出せと申されておるのか?」
見張り兵は非常に驚いた様子であった。
今まで監獄に入れられた人質たちは、いかなる時も決して外に出す事を許さずに幽閉され続けていたからである。
人質を外に出すという幸盛の命令自体が予想外であると見張り兵は感じていた。
部下
「はい、幸盛様が直々にそのように申されておりました。何やら、我々が知らぬ間に今の監獄よりもさらに広き監獄の建設工事が進められていたようです。そして、その工事が昨日にちょうど完了したとの事にございます。」
部下は、驚いている見張り兵に対して間髪入れずにそう説明した。
今までの監獄よりもさらに広い監獄を用意した。
これからも人質を大量に取って秋庭家に対して威圧をかけていく。
幸盛本人ならばそう考えているであろうと言うもっともらしい理由だ。
これは今回の工作で見張り兵を納得させる為の口実であり、もちろん新しい監獄などは存在しない。
こういった工作は、いかに敵を騙し切れるかが試されるところであった。
見張り兵
「し、しかしだな、本当に幸盛様はかような事を申されておったのか?拙者はまだ理解できぬ…」
見張り兵は現在の状況がまだはっきりと飲み込めておらず、戸惑っていた。
部下による説明を聞いて多少は納得している様子ではあったが、未だ半信半疑の状態が残っているようであった。
そうしていると、一人の男がこちらに向かって歩いて来た。
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