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第6章 風雲志太家編

39.柳城潜入

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さらに数日後、宗重は柳城へと向かっていた。
祐藤によって急遽命じられた柳家に対しての工作活動を行う為であった。

やがて柳城に到着した宗重は、周りに建てられた広大な牢獄施設が目に飛び込んで来た。
この光景を目の当たりにした宗重は、非常に驚いた表情をしていた。
牢獄が存在しているという事は先日に家春から聞いているようであったが、宗重はここまで広大な牢獄であったとは思ってもいなかったからである。

宗重
「これほどまでに広い牢屋は見た事が無いわ。それにしても数多き人質で相手の弱みにつけ込むなど断じて許せぬ行為よ。それを平然と行う幸盛という男は真に卑劣な男。全くもって武士の風上にも置けぬな。」

宗重は幸盛を痛烈に批判する言葉を次から次へと思わず口にしていた。
事実、柳家は秋庭家の領民たちを人質に取る事で弱みにつけ込み、大勢の民たちを苦しませている。
例え戦国の世であろうとも人の道を外れてまで国の奪い合いを行うという事がいかに愚かであるかを幸盛は感じているのであろうか。
宗重は、幸盛に対して憎悪の念が沸々とたぎり出していた。

そうしてしばらく経った後に宗重は自身に与えられた任務を思い出し、我に返った様子であった。

宗重
「いかいかん、拙者とした事が。まずは天守に忍び込む事が先であるな。人質の民たちを助ける為にも急がねばならぬ。」

そう言うと宗重は、城の周りをじっくりと観察し始めた。
どうやら城内へ忍び込む為の準備を行っているようである。

やがて数分が経った後、宗重は余裕の表情で城の石垣から石垣へと身軽に飛び跳ねていった。
目にも留まらぬ早さで石垣を次から次へと登り、天守まで残すところあと少しであった。
しかし、宗重は何かに気付いた様子で一旦足を止めていた。

宗重
「幸盛は拙者が思っておる以上に用心深き男のようじゃな。危うく気付かぬところじゃったわい。」

宗重は冷や汗をかいていた。
どうやら天守近くの石垣に罠らしき物が仕掛けられているようであった。
その罠は一見すると普通の石垣の様であったが、宗重の目には少なからずの違和感を覚えていたのだ。
しかし、忍びとしての実力豊富な宗重であったとしても非常に気付きにくい仕掛けであったようであり、後に宗重は気付かずに罠にかかって命を落としていたかも知れないと語っている。

宗重
「じゃが、かような事で拙者は諦めはせぬ。何が何でも天守に忍び込んで見せようぞ。」

そう言うと宗重は、石垣を足場にして空高く跳躍した。
何と、仕掛けのあろうとする石垣を一気に飛び越えて天守の入口にしがみついたのである。
忍びたる者、与えられた任務は必ず成し遂げると言う宗重の執念がそうさせたかも知れない。

宗重
「さてと、それでは幸盛殿の顔でも拝みに参るとするかの。」

そう言って宗重は柳城の天守の中へと足を踏み入れた。
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