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第6章 風雲志太家編

31.人質奪還計画(2)

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祐藤は、柳家との戦を行う為の前準備を着々と進めていた。
その中でまず各国の大名家にお触れを出す事が確定。
残すは柳城の人質をどのようにして救出するかという内容が残っていたが、貞勝の意見によって祐藤は救出案が浮かんだようであった。

貞勝
「祐藤様、一体どのようにして人質を救出されるのですか。」

貞勝は少し首を傾げて祐藤に問いかけた。

祐藤
「人質の救出を行うには忍びの者が必要となる。それ故、まずは徳葉城の宗重を呼んで参れ。」

ーー宗重
先の細野城との戦いにおいて志太軍の本陣に単身で潜入し、寝返り交渉に来た宮本宗重の事だ。
宗重は村上家の家臣であった平塚元阿弥に仕える忍者であり、現在は志太家の家臣となっていた。

そして祐藤は続けて口を開いた。

祐藤
「宗重が束ねる忍びの者たちは、竹呉島の忍衆にも劣らぬ実力を持っておると聞く。此度の工作はあやつに任せてみようと思ってな。」

宗重は幼少期を竹呉島で過ごして育った事もあり、忍者としての技術はこの頃に既に磨かれていたと言われている。
事実、細野城の戦いの時には大軍を率いていた志太軍の本陣に単身で潜入する事に成功しているという実績から見ても宗重の忍者としての実力は相当なものであろう。

だが、祐藤のこの意向に反発するように貞勝は言った。

貞勝
「しかし、何故に竹呉島の忍びをお使いにならぬのですか。実重殿が束ねる忍衆は我が志太家の勢力拡大に何度も尽力されております故、相応しいと拙者は考えておりますが。」

確かに竹呉島の忍者たちは、これまでの志太家の勢力拡大に大きく貢献した工作が数え切れない程あったと言われており、最早志太家には必要不可欠な勢力と言っても過言では無い。
そのような実績があるにも関わらず、今回の工作活動を行うにあたって宗重に白羽の矢を立てた祐藤の決断が貞勝には理解できずにいた。

祐藤
「実は、此度の工作内容に関しては竹呉島の忍びよりも宗重の忍びが秀でておると思う節が儂にはあってな。それ故に宗重に工作を命じるまでじゃ。」

祐藤は、竹呉島の忍者と宗重の忍者についてそれぞれの特性を分析していたようである。
この分析はあくまでも祐藤自身の主観によるものが多かったが、祐藤の巧みな話術に貞勝が納得するのにはそう時間はかからなかった。

それにしても相手に短い時間でも納得をさせるという祐藤の弁舌能力は天才的であった。
幼少期は神童と呼ばれ、青年期は底知れぬ実力を祐村に見出され、見る見るうちに出世の階段を駆け上って行った祐藤が為せる天性の才能であろうか。

貞勝
「承知致しました。直ちに伝令の者を送り、宗重殿を志栄城に呼び寄せましょう。」

貞勝は納得した表情で祐藤に深々と頭を下げてそう言った。
そしてすぐさまに立ち上がり、早々に志天城を後にした。
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