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第6章 風雲志太家編
29.立天野の会談(3)
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先刻の家春による秋庭家の内情告白を聞いた祐藤は、秋庭家に手を貸す事を決意した。
そして会談の内容は、共に柳家を攻め滅ぼさんとするが為のものへと変わっていった。
家春
「しかし、そう簡単に柳家を攻めると申されましても柳城には大勢の我が領民たちの家族が人質として捕らえられております。柳家を刺激するような事があればこの者たちの命の保証はございませぬ故、弱っております。」
家春は焦燥した表情であった。
柳城に残された人質がいる以上、下手な動きは出来ないのである。
家春の言葉からも分かるように、秋庭家にとってはまさに万事休すといった事態に晒されていた。
祐藤
「人質、にございますか。実に卑劣な手を使うのですな、幸盛という男は。」
祐藤は静かな表情をしていたが、心では幸盛の卑劣な手段にはらわたが煮えくり返っていた。
家春
「はい。当家が柳家の傘下に加えられた際、忠誠を見せる為にと人質を差し出されたのでございます。今思えばこの時に何か手を打っておけばかような事にはならなかった。拙者の不覚が招いた結果にござる。」
家春は悔しい気持ちを声にして出していた。
祐藤
「うむぅ、人質がいる以上は柳家を叩けぬな。どうしたものか。」
家春の話にもあるように、幸盛は勝つ為には手段をも選ばない冷酷な男だ。
今、柳城へ攻め込めば幸盛は間違い無く人質たちに手をかけるであろう。
柳家を容易に攻め滅ぼせない現状に立たされているのである。
祐藤は頭を抱えて悩んでいた。
やがて二人の間に沈黙が流れ、会談は長引くかのように思われていた。
しかし、家春がその沈黙を破るようにして言った。
家春
「人質さえいなければ我々も何の迷いも無く柳家を攻められます。何とかして人質を逃がす事が出来れば良いのですが、かような虫が良すぎる話はございませぬ。かくなる上は残された民たちの為にも多少の犠牲を払うしか無いのか…」
自暴自棄とも言える家春の言動を耳にした祐藤は思わず口を開いた。
祐藤
「待たれよ。この件は拙者、いや我が志太家に任せてもらえぬであろうか。」
家春
「祐藤殿、何か策がございますのですか。」
家春は食い入るように祐藤を見つめて言った。
祐藤
「無い事は無いのですが。しかし、やらぬよりもやって見せぬとこの状況を打破できませぬ故、我らがその道を切り開いて見せよう。全ては民の為に、ですぞ。」
祐藤の言葉からは一抹の不安こそ感じられたが、前向きな姿勢で敵に立ち向かおうとする勇ましい表情であった。
家春
「何とも頼もしいお言葉...。祐藤殿、重ね重ね感謝致します。」
家春は祐藤に向かって深々と頭を下げた。
祐藤
「家春殿、感謝の言葉はこの作戦が成功されてからにして頂きたい。そなたの処断もその時に下す故、まずは待たれよ。」
祐藤は舞い上がろうとしていた家春に釘を刺すようにそう言った。
家春は祐藤の言葉を前にただただ黙り込むしか無かったのである。
そして会談の内容は、共に柳家を攻め滅ぼさんとするが為のものへと変わっていった。
家春
「しかし、そう簡単に柳家を攻めると申されましても柳城には大勢の我が領民たちの家族が人質として捕らえられております。柳家を刺激するような事があればこの者たちの命の保証はございませぬ故、弱っております。」
家春は焦燥した表情であった。
柳城に残された人質がいる以上、下手な動きは出来ないのである。
家春の言葉からも分かるように、秋庭家にとってはまさに万事休すといった事態に晒されていた。
祐藤
「人質、にございますか。実に卑劣な手を使うのですな、幸盛という男は。」
祐藤は静かな表情をしていたが、心では幸盛の卑劣な手段にはらわたが煮えくり返っていた。
家春
「はい。当家が柳家の傘下に加えられた際、忠誠を見せる為にと人質を差し出されたのでございます。今思えばこの時に何か手を打っておけばかような事にはならなかった。拙者の不覚が招いた結果にござる。」
家春は悔しい気持ちを声にして出していた。
祐藤
「うむぅ、人質がいる以上は柳家を叩けぬな。どうしたものか。」
家春の話にもあるように、幸盛は勝つ為には手段をも選ばない冷酷な男だ。
今、柳城へ攻め込めば幸盛は間違い無く人質たちに手をかけるであろう。
柳家を容易に攻め滅ぼせない現状に立たされているのである。
祐藤は頭を抱えて悩んでいた。
やがて二人の間に沈黙が流れ、会談は長引くかのように思われていた。
しかし、家春がその沈黙を破るようにして言った。
家春
「人質さえいなければ我々も何の迷いも無く柳家を攻められます。何とかして人質を逃がす事が出来れば良いのですが、かような虫が良すぎる話はございませぬ。かくなる上は残された民たちの為にも多少の犠牲を払うしか無いのか…」
自暴自棄とも言える家春の言動を耳にした祐藤は思わず口を開いた。
祐藤
「待たれよ。この件は拙者、いや我が志太家に任せてもらえぬであろうか。」
家春
「祐藤殿、何か策がございますのですか。」
家春は食い入るように祐藤を見つめて言った。
祐藤
「無い事は無いのですが。しかし、やらぬよりもやって見せぬとこの状況を打破できませぬ故、我らがその道を切り開いて見せよう。全ては民の為に、ですぞ。」
祐藤の言葉からは一抹の不安こそ感じられたが、前向きな姿勢で敵に立ち向かおうとする勇ましい表情であった。
家春
「何とも頼もしいお言葉...。祐藤殿、重ね重ね感謝致します。」
家春は祐藤に向かって深々と頭を下げた。
祐藤
「家春殿、感謝の言葉はこの作戦が成功されてからにして頂きたい。そなたの処断もその時に下す故、まずは待たれよ。」
祐藤は舞い上がろうとしていた家春に釘を刺すようにそう言った。
家春は祐藤の言葉を前にただただ黙り込むしか無かったのである。
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