上 下
173 / 549
第6章 風雲志太家編

25.方針決定の評定

しおりを挟む
立天野の夜襲戦の翌日、祐藤は志天城に家臣たちを集めて緊急で評定が開かれた。
議題は今後の秋庭家に対する振る舞いをどのようにするかというものであった。

評定が開始してすぐさまに直胤が口を開いた。

直胤
「祐藤様、拙者は昨日の失態を取り戻したくございます。どうか拙者に秋庭家攻略の命を下してはいただけませぬでしょうか。」

直胤は食い気味に祐藤に言った。

祐藤
「と、まあ直胤殿は申してはおるがお主らはどのように考えておるかの。」

祐藤は家臣たちに問いかけていた。
すると、崇数と義道がこれに対して述べ始めた。

崇数
「直胤殿が必死になられるのは分かるが、今は感情が昂ぶられておる故に逆に秋庭家に足元をすくわれる恐れが十分にありまする。直胤殿よ、ここは我らにお任せ下され。」

義道
「俺も同じ崇数殿と同じ意見じゃな。ここは兄者や我らで秋庭家を攻略いたす故に直胤殿は一線を退いてもらわぬと危険じゃぞ。」

直胤は、ばつが悪そうな表情をしていた。
今回の件は、自身の不注意と怠慢さが引き起こした結果である。
まさに身から出た錆と言うべき事象に家臣たちが気を遣っている姿を見て直胤は申し訳ない気持ちで一杯であった。

そんな中、祐藤が家臣たちの前で口を開いた。

祐藤
「いかにも、今回の件の責任は郷田家にあろう。じゃが、それは同盟に限りなく近き関係を築いていた秋庭家の裏切りとも言える行為によって引き起こされた事でもあり、郷田家を一方的に責めるのも違うと儂は思っておる。そこで、秋庭家は何故我らを攻めるに至ったかの原因を知りたいのじゃがな。」

直胤
「それは…そうせざるを得られぬ理由があったと拙者たちが捕らえられた際に家春殿は確かに申されてはおりましたが、今思うに秋庭家が存続するうえで我らが邪魔になった故の方便では無いかと存じます。」

今回の戦は秋庭家が一方的に攻めて来た事に対して思い当たる事は無かったが、家臣たちが打倒秋庭家の色に染まっている様子を見てそう言わざるを得られなかったようだ。

祐藤
「うむ、それが真かどうかは我らが調べてみれば良い事よ。そこで儂が一度、家春殿と合って話を聞こうと思っておる。秋庭家を攻めるのはその時の返答次第で決めるのも遅くは無かろう。」

なんと、大胆にも祐藤は敵である秋庭家と直々に対談すると言った。
これには家臣たちも驚きの表情を隠せずにいた。

貞勝
「祐藤様、本気で申されておるのですか。もし、祐藤様の身に何か起これば志太家は今後どうされるおつもりですか。」

貞勝は祐藤に対して強い口調で言った。
あまりにも軽率とも思える祐藤の意見に誰もが反対している様子であった。

しかし祐藤はその意見を聞き入れる事無く、続いて家臣たちに次のように語りかけた。

祐藤
「そうなれば儂はそこまでの運命であったという事じゃ。かような事は遅かれ早かれ今後も必ず起こるであろう。危険を冒さずして天下は取れぬぞ。心配を致すでない。良いな。」

終始真剣な眼差しで強引に答える祐藤を見て、家臣たちは首を縦に振らざるを得なかった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

隻眼の覇者・伊達政宗転生~殺された歴史教師は伊達政宗に転生し、天下統一を志す~

髙橋朔也
ファンタジー
 高校で歴史の教師をしていた俺は、同じ職場の教師によって殺されて死後に女神と出会う。転生の権利を与えられ、伊達政宗に逆行転生。伊達政宗による天下統一を実現させるため、父・輝宗からの信頼度を上げてまずは伊達家の家督を継ぐ!  戦国時代の医療にも目を向けて、身につけた薬学知識で生存率向上も目指し、果ては独眼竜と渾名される。  持ち前の歴史知識を使い、人を救い、信頼度を上げ、時には戦を勝利に導く。  推理と歴史が混ざっています。基本的な内容は史実に忠実です。一話が2000文字程度なので片手間に読めて、読みやすいと思います。これさえ読めば伊達政宗については大体理解出来ると思います。  ※毎日投稿。  ※歴史上に存在しない人物も登場しています。  小説家になろう、カクヨムでも本作を投稿しております。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

日は沈まず

ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。 また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。

16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。 12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。 ※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

墨山事件

佐村孫千(サムラ マゴセン)
ミステリー
舞台は架空世界の現代。 とある地方で謎の集団失踪事件が発生。 それから四十数年の時が過ぎたが未だ真相解明には至っていない。 この未解決事件を解決すべく一人の若き探偵が立ち上がった...。 ※ この物語は、ネットの都市伝説である「鮫島事件」をモチーフに作者が独自のオリジナル要素を加えて執筆した作品です。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...