170 / 549
第6章 風雲志太家編
22.立天野の夜襲戦(6)
しおりを挟む
先刻による秋庭軍の反撃により郷田軍は壊滅的打撃を受けていた。
それに伴い郷田軍は全軍本丸へと退却。
秋庭軍は本丸を取り囲み始めていた。
秀胤
「もうじき夜明けじゃ。皆の者よ、援軍が来るまでもうしばらくの辛抱じゃ。」
秀胤は気を引き締めて家臣たちに言った。
しかし、本丸を残して他は全て秋庭軍の手に落ちているこの状況下において郷田軍の士気は大幅に低下していた。
秀胤が檄を飛ばせば飛ばすほど士気は低下、かえって混乱を招くなど悪循環に陥っており、先程まで優勢に立っていた郷田軍とは打って変わって風前の灯火であった。
夜明けの刻まであと少しとなったが、依然として秋庭軍の優勢は揺るがなかった。
やがて、秋庭軍の攻撃によって最後の砦とも言うべき天守への城門がとうとう破壊された。
家春
「最早郷田殿は袋の鼠。お前たちよ、このまま全軍一気に突入いたすぞ。」
そう家春が言うと、軍勢は天守を目指して一気に突入を始めた。
その様子を見ていた直胤は覚悟を決めた表情であった。
直胤
「とうとうここも破られたか。郷田家は最早これまで。儂はここで潔く果てようぞ。皆の者はこの老いぼれの儂の首を持って秋庭殿に降るが良い。」
そう言うと直胤は天守の中央にどっしりと座り込んだ。
どうやら直胤は自身の命を引き換えに家臣たちの助命を懇願させるつもりである。
その様子を見た秀胤も覚悟を決めた表情で、直胤の横に座り込んで言った。
秀胤
「父上、拙者もお供させていただきとうございます。郷田家としての責任、拙者も果たしましょうぞ 。」
郷田親子は今回の戦いでの全責任を負う覚悟でいた。
家臣たちは皆、そんな直胤と秀胤に対して感謝の気持ちで胸が一杯になり、涙を流していた。
ほどなくして、天守に数名の兵が侵入してきた。
秋庭家の軍勢である。
その中には、家春と晴正の姿もあった。
家春は、天守のに座り込んでいた直胤と秀胤を見つけるやいなや大声を出して言った。
家春
「いたぞ。直胤殿、秀胤殿じゃ。お前たちよ、ただちに捕らえよ。」
晴正
「御意にございます。」
一瞬の出来事であった。
天守に侵入した晴正と数名の兵たちは一目散に直胤と秀胤を取り囲み、縄にかけたのである。
郷田家の兵たちも必死で抵抗しようとしたが、天守にぞろぞろを侵入して来る秋庭家の軍勢を前に戦意喪失してしまった様子である。
家春
「よし、これで立天野城はたった今我が軍が制圧した。皆の者よ、勝ち鬨をあげられよ。」
城内ではたちまち秋庭軍の勝ち鬨の声が鳴り響いた。
また、立天野山からは朝日が間もなく昇ろうとしていた。
それに伴い郷田軍は全軍本丸へと退却。
秋庭軍は本丸を取り囲み始めていた。
秀胤
「もうじき夜明けじゃ。皆の者よ、援軍が来るまでもうしばらくの辛抱じゃ。」
秀胤は気を引き締めて家臣たちに言った。
しかし、本丸を残して他は全て秋庭軍の手に落ちているこの状況下において郷田軍の士気は大幅に低下していた。
秀胤が檄を飛ばせば飛ばすほど士気は低下、かえって混乱を招くなど悪循環に陥っており、先程まで優勢に立っていた郷田軍とは打って変わって風前の灯火であった。
夜明けの刻まであと少しとなったが、依然として秋庭軍の優勢は揺るがなかった。
やがて、秋庭軍の攻撃によって最後の砦とも言うべき天守への城門がとうとう破壊された。
家春
「最早郷田殿は袋の鼠。お前たちよ、このまま全軍一気に突入いたすぞ。」
そう家春が言うと、軍勢は天守を目指して一気に突入を始めた。
その様子を見ていた直胤は覚悟を決めた表情であった。
直胤
「とうとうここも破られたか。郷田家は最早これまで。儂はここで潔く果てようぞ。皆の者はこの老いぼれの儂の首を持って秋庭殿に降るが良い。」
そう言うと直胤は天守の中央にどっしりと座り込んだ。
どうやら直胤は自身の命を引き換えに家臣たちの助命を懇願させるつもりである。
その様子を見た秀胤も覚悟を決めた表情で、直胤の横に座り込んで言った。
秀胤
「父上、拙者もお供させていただきとうございます。郷田家としての責任、拙者も果たしましょうぞ 。」
郷田親子は今回の戦いでの全責任を負う覚悟でいた。
家臣たちは皆、そんな直胤と秀胤に対して感謝の気持ちで胸が一杯になり、涙を流していた。
ほどなくして、天守に数名の兵が侵入してきた。
秋庭家の軍勢である。
その中には、家春と晴正の姿もあった。
家春は、天守のに座り込んでいた直胤と秀胤を見つけるやいなや大声を出して言った。
家春
「いたぞ。直胤殿、秀胤殿じゃ。お前たちよ、ただちに捕らえよ。」
晴正
「御意にございます。」
一瞬の出来事であった。
天守に侵入した晴正と数名の兵たちは一目散に直胤と秀胤を取り囲み、縄にかけたのである。
郷田家の兵たちも必死で抵抗しようとしたが、天守にぞろぞろを侵入して来る秋庭家の軍勢を前に戦意喪失してしまった様子である。
家春
「よし、これで立天野城はたった今我が軍が制圧した。皆の者よ、勝ち鬨をあげられよ。」
城内ではたちまち秋庭軍の勝ち鬨の声が鳴り響いた。
また、立天野山からは朝日が間もなく昇ろうとしていた。
0
佐村孫千Webサイト
https://samuramagosen.themedia.jp/
https://samuramagosen.themedia.jp/
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる